日本大百科全書(ニッポニカ) 「拝月亭」の意味・わかりやすい解説
拝月亭
はいげつてい
(1)中国、元代の雑劇。関漢卿(かんかんけい)作。金とモンゴルの戦乱を背景に、貴族の娘、王瑞蘭(おうずいらん)と書生蒋世隆(しょうせいりゅう)は、家柄の違いを理由に仲を裂かれるが、瑞蘭は父の反対を押し切り、ついに状元(じょうげん)に合格した世隆と結ばれる。封建的な環境に置かれた瑞蘭が自由な結婚を目ざす情熱と純粋な心情をうたう劇である。題名は、劇中、瑞蘭と王家に保護されている娘(実は世隆の妹)が庭で香を焚(た)き、新月に対し世隆との再会を祈る場面に由来する。劇の正式名は『閨怨佳人(けいえんかじん)拝月亭』。(2)関漢卿の『拝月亭』の構成を踏襲し40齣(せき)(場)の長編に改めた南曲。作者不明。一説に元の施恵(しけい)の作といわれる。『琵琶(びわ)記』と並ぶ南曲の傑作。原本はすでに失われ、現存テキストは明(みん)人の手が加えられ、題名も『幽閨(ゆうけい)記』と改称されている。
[平松圭子]
『浜一衛訳『拝月亭』(『中国古典文学大系52』所収・1970・平凡社)』▽『『青木正児全集3 支那近世戯曲史』(1962・春秋社)』