仏教の全資料のうち最古の初期仏教経典の総称。原語(サンスクリット語もパーリ語も同じ)のアーガマĀgamaの音写。アーガマは「伝来」を意味し、代々伝承されてきた経をいう。ゴータマ・ブッダ(釈迦(しゃか))の言行を収め、仏弟子たちのも混じる。原型はブッダ入滅後まもなくまとめられ、伝承の間に多くのものを付加した。現存の経の成立はかなり遅い。漢訳された全体は、長阿含(じょうあごん)、中阿含(ちゅうあごん)、雑阿含(ぞうあごん)、増一阿含(ぞういちあごん)の四阿含と称し、各々が長短多数の経を含む。ほかにそれらの異訳や一部の独立経典もあり、それらすべては『大正新脩大蔵経(たいしょうしんしゅうだいぞうきょう)』阿含部2巻に収められている。南方仏教にはパーリ語テキストが伝わり、同類のものをニカーヤ(部)とよぶ。そのうち、長部、中部、相応部、増支部は、前記の四阿含に対応しあい、共通の箇所も多いが、また相違点もある。ニカーヤにはほかに小部の15経があり、古い重要な経を含む。ゴータマ・ブッダおよび初期仏教の思想その他は、以上の四阿含と五ニカーヤとを資料としてのみ、学び知ることができる。なおシルク・ロード(とくにトゥルファン)出土本に、阿含経の一部のサンスクリット本があり、整備、校訂されて、第二次世界大戦後ドイツから出版されている。
[三枝充悳]
『友松圓諦著『阿含経入門』(1981・講談社学術文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…その後教団の確立にしたがい,教法は《経蔵Sutta‐piṭaka》に,規律は《律蔵Vinaya‐piṭaka》に,それぞれ集大成された。このうち経蔵は,長,中,相応,増支の阿含あるいはニカーヤnikāya(部)に分けられていて,全体を総称して阿含,阿含経という。スリランカ,ミャンマー,タイなどの南方仏教圏で根本聖典として伝承され,上座分別説部という一派が伝えた,パーリ語で書かれた5ニカーヤ(長部,中部,相応部,増支部,小部)が今日まで保存されている。…
※「阿含経」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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