阿含経(読み)アゴンキョウ

デジタル大辞泉 「阿含経」の意味・読み・例文・類語

あごん‐きょう〔‐キヤウ〕【×含経】

小乗仏教の根本経典阿含部経典の総称漢訳経典ではじょう・中・雑・増一の四阿含、または小阿含を加えた五阿含とする。

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精選版 日本国語大辞典 「阿含経」の意味・読み・例文・類語

あごん‐きょう‥キャウ【阿含経】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「あごんぎょう」とも ) =あごん(阿含)
    1. [初出の実例]「花開れば必ず菓を結ぶ、罪を作れば定て果を感ずる也。此の故に阿含経には自業自得果と説き給へり」(出典:今昔物語集(1120頃か)三)
    2. 「あごむ経の鹿の声、鹿野苑(ろくやをん)にぞ聞こゆなる」(出典梁塵秘抄(1179頃)二)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「阿含経」の意味・わかりやすい解説

阿含経
あごんきょう

仏教の全資料のうち最古の初期仏教経典の総称。原語(サンスクリット語もパーリ語も同じ)のアーガマĀgamaの音写。アーガマは「伝来」を意味し、代々伝承されてきた経をいう。ゴータマ・ブッダ釈迦(しゃか))の言行を収め、仏弟子たちのも混じる。原型はブッダ入滅後まもなくまとめられ、伝承の間に多くのものを付加した。現存の経の成立はかなり遅い。漢訳された全体は、長阿含(じょうあごん)、中阿含(ちゅうあごん)、雑阿含(ぞうあごん)、増一阿含(ぞういちあごん)の四阿含と称し、各々が長短多数の経を含む。ほかにそれらの異訳や一部の独立経典もあり、それらすべては『大正新脩大蔵経(たいしょうしんしゅうだいぞうきょう)』阿含部2巻に収められている。南方仏教にはパーリ語テキストが伝わり、同類のものをニカーヤ(部)とよぶ。そのうち、長部、中部、相応部、増支部は、前記の四阿含に対応しあい、共通の箇所も多いが、また相違点もある。ニカーヤにはほかに小部の15経があり、古い重要な経を含む。ゴータマ・ブッダおよび初期仏教の思想その他は、以上の四阿含と五ニカーヤとを資料としてのみ、学び知ることができる。なおシルク・ロード(とくにトゥルファン)出土本に、阿含経の一部のサンスクリット本があり、整備、校訂されて、第二次世界大戦後ドイツから出版されている。

[三枝充悳]

『友松圓諦著『阿含経入門』(1981・講談社学術文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「阿含経」の意味・わかりやすい解説

阿含経
あごんきょう

初期仏教の経典。釈尊の言行を伝え,それを集成したもの。釈尊の滅後,その教説は次第にまとめられて経蔵 sutta-piṭakaを形成し,一方,修行僧の守るべき規則は律蔵 vinaya-piṭakaとしてまとめられた。経蔵は,4または5に分類され,それぞれ阿含または部 nikāyaの名をもって表示された。現在まとまったものとしては,スリランカ,ビルマ (現ミャンマー) ,タイ,カンボジア,ラオス,ベトナムに伝えられているパーリ語の聖典とその相当漢訳である。それによると次のものがある。 (1) 長編の経典を集めた長部 Dīgha-nikāya。漢訳では『長阿含経 (じょうあごんぎょう) 』。 (2) 中編の経の集成である中部 Majjhima-nikāya。漢訳では『中阿含経』。 (3) 短編の経典集の相応部 Saṃyutta-nikāya。漢訳では『雑阿含経 (ぞうあごんぎょう) 』。 (4) 同じく短編の経典を集めた増一部 Aṅguttara-nikāya。漢訳では『増壱阿含経 (ぞういちあごんぎょう) 』。 (5) 『法句経 (ほっくぎょう) 』や『本生経 (ほんじょうぎょう) 』などの種々のものを集めた小部 Khuddaka-nikāya。漢訳では相当文が散在している。一般に,前4世紀から前1世紀にかけて,徐々に作成されたものであろう。

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世界大百科事典(旧版)内の阿含経の言及

【阿含】より

…その後教団の確立にしたがい,教法は《経蔵Sutta‐piṭaka》に,規律は《律蔵Vinaya‐piṭaka》に,それぞれ集大成された。このうち経蔵は,長,中,相応,増支の阿含あるいはニカーヤnikāya(部)に分けられていて,全体を総称して阿含,阿含経という。スリランカ,ミャンマー,タイなどの南方仏教圏で根本聖典として伝承され,上座分別説部という一派が伝えた,パーリ語で書かれた5ニカーヤ(長部,中部,相応部,増支部,小部)が今日まで保存されている。…

※「阿含経」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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