陸機(読み)リクキ

デジタル大辞泉 「陸機」の意味・読み・例文・類語

りく‐き【陸機】

[261~303]中国西晋の文学者。呉郡呉県(江蘇省)の人。あざな士衡しこう。呉の滅亡後、洛陽に入ったが、政争に巻き込まれて殺された。対句多用と華麗な表現で、詩・賦に佳作を残した。「文賦ぶんのふ」は賦の様式による文学論として異色。

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精選版 日本国語大辞典 「陸機」の意味・読み・例文・類語

りく‐き【陸機】

  1. 中国晉の文人。字は士衡。呉郡華亭(江蘇省松江県)の人。弟の陸雲とともに二陸と称される。呉の滅亡後、弟とともに晉に仕えた。華麗な文章を書き、「弁亡論」や「文賦」は有名。詩文集に「陸士衡集」がある。(二六一‐三〇三

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「陸機」の意味・わかりやすい解説

陸機
りくき
(261―303)

中国、西晋(せいしん)の文人。字(あざな)は士衡(しこう)。呉郡華亭(ごぐんかてい)(江蘇(こうそ)省松江県)の出身。祖父は宰相、父は大司馬(だいしば)になった名門の生まれ。弟の陸雲(りくうん)(262―303)も文才があり、ともに「二陸」といわれた。その時代まで沈黙していた呉出身の詩人が台頭してきたことは注目すべきである。20歳のとき、祖国呉が滅びたので、故郷に隠栖(いんせい)することおよそ10年、のち弟とともに洛陽(らくよう)に出て、文壇の長老張華(ちょうか)に認められ、その推薦で官吏となり、累進して平原内史となった。「八王の乱」の世相のなかで、成都王司馬穎(しばえい)に仕え、大軍を統率して長沙(ちょうさ)王司馬乂(しばがい)と戦って大敗し、讒言(ざんげん)にあって弟とともに殺された。張華に、詩才がありすぎると評されるほどの天才的作家であり、経世の才もあって『弁亡(べんぼう)論』『五等諸侯論』にその見識を示している。「文賦(ぶんのふ)」は、作品の理想を述べた文学論で注目すべきもの。その詩は対句を用い修辞に富み、斉梁(せいりょう)文学の先駆けとなっている。『陸機集』10巻があった。『晋書』54に伝がある。

[小尾郊一 2016年1月19日]

『興膳宏著『中国詩文選10 潘岳・陸機』(1973・筑摩書房)』『後藤秋正著『陸機詩索引』(1976・松雲堂出版)』『佐藤利行著『西晋文学研究――陸機を中心として』(1995・白帝社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「陸機」の意味・わかりやすい解説

陸機
りくき
Lu Ji

[生]永安4(261)
[没]太安2(303)
中国,西晋の文学者。呉 (江蘇省呉県) の人。字,士衡。平原内史の官にあったことから陸平原とも呼ばれる。祖父遜は呉の宰相,父抗は大司馬となった名門の出身。 20歳のとき呉が滅びるとしばらく別荘に引きこもっていたが,太康の末に,弟の陸雲とともに晋に仕えた。宰相張華に認められ,また賈謐 (かひつ) のもとに集る文学集団にも加わり,北方文人とも交わった。やがて恵帝の代となって政局が不安定となり,八王の乱が起ったとき,そのなかに巻込まれ,陸雲とともに殺された。その詩は修辞に重きをおき,華麗な言葉や対句の技巧を用い,六朝の華美な詩風のさきがけとなった。また『文賦』は彼の文学批評の方法を述べたものとして有名。作品は『陸士衡集』 (10巻) にまとめられている。

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改訂新版 世界大百科事典 「陸機」の意味・わかりやすい解説

陸機 (りくき)
Lù Jī
生没年:261-303

中国,晋の詩人。字は士衡。呉郡呉(江蘇省)の人。呉の名門貴族の家に生まれたが,若いころ呉の滅亡に際会したため,かつての敵国晋の都洛陽に上り,周囲との異和感にたえつつ,当代随一の詩人として大成した。典故や対句などの技法を駆使した幅広い創作活動は,六朝修辞主義文学の先導者の役割を果たした。美文形式の文学論〈文賦(ぶんのふ)〉はことに名高い。八王の乱の渦中に巻きこまれ,殺された。
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世界大百科事典(旧版)内の陸機の言及

【楽府】より

… 3世紀後半に至り,西晋の宮廷では,先朝の魏の楽歌のうち,相和歌と清調曲・平調曲・瑟(しつ)調曲(清商三調という)をうけ継ぐとともに,別に漢・魏の古曲を拾い上げ,大曲と名づけて,宮廷音楽に編入した。それらの古曲が歌唱されるにつれて,宮廷詩人の傅玄(ふげん)・陸機は,それらを主題にした歌詞を作った。かくて,史上初めて,漢・魏の古曲および詩人の主題にした作詞が〈がふ〉と呼ばれるに至った。…

【中国文学】より

…三国以後も賦の制作はさかんで,文人たちはこのジャンルに全力を傾けた。題材はますます広くなり,陸機の〈文の賦〉のごとく文学の理論をこの形式で説いたものがあり,陶潜(淵明)でさえ,彼にはめずらしく美女を描く〈閑情の賦〉を作ったほどである。庾信(ゆしん)の〈哀江南の賦〉は多量の典故を用いて,南朝の滅亡をうたった壮大な叙事詩というべき大作であった。…

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