随身庭騎絵巻(読み)ズイジンテイキエマキ

デジタル大辞泉 「随身庭騎絵巻」の意味・読み・例文・類語

ずいじんていきえまき〔ズイジンテイキヱまき〕【随身庭騎絵巻】

鎌倉時代絵巻。1巻。平安末期および鎌倉中期の随身騎馬または徒歩の姿を描いたもの。彩色をほとんど施さない白描画形式で似絵にせえ手法を用いている。一部藤原信実の手になるとされる。

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精選版 日本国語大辞典 「随身庭騎絵巻」の意味・読み・例文・類語

ずいじんていきえまき‥テイキヱまき【随身庭騎絵巻】

  1. 肖像図巻。一巻。紙本淡彩。鎌倉時代の作。藤原信実筆と伝え、図中に宝治元年(一二四七)の日付がある。随身九人の騎馬姿などを描いたもので、彩色はわずかで白描に近い。人物の顔や馬の姿態生気に満ちた筆使いで表わされている。似絵(にせえ)一種。大倉集古館蔵。国宝

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「随身庭騎絵巻」の意味・わかりやすい解説

随身庭騎絵巻
ずいしんていきえまき

鎌倉時代の絵巻。1巻。国宝。東京・大倉文化財団蔵。平安末期の仁平(にんぺい)~永暦(えいりゃく)(1151~61)ごろの随身3人(秦兼清(はたのかねきよ)、兼任(かねとう)、中臣末近(なかとみのすえちか))と、宝治(ほうじ)元年(1247)当時の6人(秦久則(ひさのり)、兼利(かねとし)、兼躬(かねみ)、頼方(よりかた)、久頼(ひさより)、弘方(ひろかた))の像を描き収める。騎馬または徒歩の姿で描かれ、前三者は烏帽子(えぼし)、水干(すいかん)姿、後六者は冠、褐衣(かちえ)、狩袴(かりばかま)姿につくられる。絵はいずれも細い墨の線を主体にし、一部に朱を施す程度の白描画(はくびょうが)の形式になる。人物の顔は精緻(せいち)な筆線を引き重ねて各人の特徴を描き分けている。後の6像の前に「宝治元年十月院御随身」の墨書があるように、6人はこの年の随身を記録したもので、絵巻の制作も同じころと考えられる。初めの3像は既存の画によったものとされ、これらは当時の似絵(にせえ)(肖像画)の名手、藤原信実(のぶざね)の筆に擬する説が強い。平安末、鎌倉時代の風俗資料として貴重であり、また似絵の優れた作例として価値が高い。

[村重 寧]

『小松茂美編『続日本絵巻大成18 随身庭騎絵巻他』(1983・中央公論社)』

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百科事典マイペディア 「随身庭騎絵巻」の意味・わかりやすい解説

随身庭騎絵巻【ずいじんていきえまき】

9人の随身たちの騎馬姿を描いた鎌倉時代の絵巻。1巻。鋭く軽快な線でスケッチ風に描き,表情は個性的。〈宝治元年十月院御随身〉の書込みがあり,各人の姓名も記されており,記録的性格がある。藤原信実の筆とされるが,他筆が入るという説もある。
→関連項目似絵白描

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「随身庭騎絵巻」の意味・わかりやすい解説

随身庭騎絵巻
ずいしんていきえまき

院を警護する9人の随身の姿を描いた似絵の絵巻。鎌倉時代,13世紀中頃の作。紙本白描,1巻。大倉文化財団蔵。暢達な線で人物や馬の動態をいきいきと表現,作者は似絵の名手藤原信実と推定される。また最後の2随身は線描が異なるところから信実の後継者による追加ともいわれる。巻頭の3人 (秦兼清,兼任,中臣末近) は仁平,治承期頃の随身で「宝治元年十月院御随身」と書かれた残りの6人 (秦久則,兼利,兼躬,頼方,久頼,弘方) とは時代を異にし,この3随身は古い記録画をもとに描いたと考えられている。

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