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似絵 にせえ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

似絵
にせえ

鎌倉時代初期,藤原信実 (のぶざね) によって完成され,その家系の為信,豪信などに引継がれた写生的,記録的な肖像画の技法。特に面貌の描写において細い淡墨線を引重ねて目鼻を精密に表現し,対象の個性に迫ろうとする。『後鳥羽天皇像』『花園天皇像』『親鸞像 (鏡御影〈かがみのみえい〉) 』のような単独像のほか,『随身庭騎絵巻』『天皇摂関像』などの集団像や『中殿御会 (ちゅうでんぎょかい) 絵巻』のような儀式の記録画など範囲が広く,さらに名牛や名馬の姿を写し集めた似絵もある。またその様式は同時代に流行した歌仙絵にも及んでいる。

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デジタル大辞泉の解説

にせ‐え〔‐ヱ〕【似絵】

平安末期から鎌倉時代に流行した大和絵様式の肖像画。特に面貌(めんぼう)を写実的に描く。藤原隆信に始まり、その子信実によって大成された。代表作に信実の「後鳥羽上皇像」がある。

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百科事典マイペディアの解説

似絵【にせえ】

鎌倉初期藤原隆信,信実(のぶざね)父子らが始めた大和絵肖像画。個性をつかんだ記録画的な描写で実在人物を描いた。信実筆と伝える《後鳥羽天皇像》,豪信の《花園天皇像》など,武人,天皇,僧侶等の肖像が多い。
→関連項目歌仙絵豪信肖像画藤原信実

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世界大百科事典 第2版の解説

にせえ【似絵】

鎌倉時代から南北朝時代にかけて流行した肖像画の一種。13世紀から15世紀にかけて確認される〈似絵〉の用語例をみると,尊崇や礼拝のための理想化の加えられた肖像画とは異なる写生画的・記録画的肖像画で,主眼はもっぱら対象とする人物に似せることにあったと思われる。したがって神護寺の《源頼朝像》《平重盛像》などは似絵と呼ばれない。作例としては単独像をはじめ,多数の人物を連ねた列座像や,特定の儀式行事のもとに参列する人々を描いた群像などがあげられるが,特定の牛馬などを表した絵画(《駿牛図巻》)についても用いた例があり,14世紀初頭には牛馬似絵を得意とした画家法眼任禅の存在が知られ,流行の広がりを物語っている。

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大辞林 第三版の解説

にせえ【似絵】

平安末期から鎌倉時代にかけて描かれた、大和絵系の肖像画の総称。面貌が重視され細い線を重ねて目鼻立ちを表し、前代に比べ、より写実的になっている。藤原隆信の家系により、天皇・公家・武家・歌人などが描かれた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

似絵
にせえ

大和(やまと)絵様式による肖像画。鎌倉初期ごろから盛んとなり、写実的・記録的傾向が強い。架空の人物図や、尊崇・礼拝の対象に描かれた画像は似絵とはいわない。とくに公家(くげ)、武家の世界で用いられ、単独像はもとより、群像として描かれたものもあり、いずれも面貌(めんぼう)の個性的表現に重点が置かれている。用語としては13世紀中ごろより文献に現れ、15世紀中ごろまで使われている。また人物ばかりでなく、牛馬や具足などの図に用いられた例もみられる。この種の新しい形式の肖像画は、平安末から鎌倉初期の藤原隆信(たかのぶ)に始まり、子の信実(のぶざね)によって発展を遂げた。『後鳥羽(ごとば)上皇像』(大阪・水無瀬(みなせ)神宮)、『随身庭騎(ずいしんていき)絵巻』(東京・大倉集古館)などが信実の作と伝称され、模本として残る『中殿御会図巻(ちゅうでんぎょかいずかん)』の原本を描いたことでも知られる。信実の家系は似絵の画系として受け継がれ、『花園(はなぞの)天皇像』(1338、京都・長福寺)を描いた鎌倉末期の豪信(ごうしん)に至る。なお牛馬の絵では『駿牛(しゅんぎゅう)図巻』『馬医(ばい)草紙』などが有名である。[村重 寧]

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世界大百科事典内の似絵の言及

【鎌倉時代美術】より

…絵巻には伝統的な大和絵の筆法に新しい要素が加わって,この時代に多岐多様な発展を見せるが,遺品の上でその特色を明らかにするのは次の13世紀である。この時期の絵画では,肖像画における似絵(にせえ)の形成が注目される。人物の面貌を素描風にとらえる似絵の特色は,この時代の写実主義の傾向をもっともよく示すもので,それまでの肖像画とは一線を画している。…

【肖像】より

…ここでは,像主の地位や階級などは類型的表現が行われる一方,面貌の描写にのみ写実が求められた。〈似絵(にせえ)〉とは実物を目の前にして描く態度を示す言葉であり,〈似せて描く〉という姿勢は,鎌倉時代の現実主義的風潮を反映して興隆した。似絵に対し,精神性を主眼とした肖像画の典型が頂相であり,これには〈伝神写貌〉が要求された。…

※「似絵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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