日本大百科全書(ニッポニカ) 「集中度」の意味・わかりやすい解説
集中度
しゅうちゅうど
degree of concentration
一国あるいは一産業の経済活動における独占・競争の度合いを示す指標の一つ。
資本主義経済の発展につれて企業の大規模化ないし寡占化が進むと、経済力が集中してくる。この場合、経済の諸側面全般にかかわる集中を経済集中といい、それを示す指標として、付加価値、所得、生産量、雇用量、資本量あるいは支配企業数等々が考えられ、これらの大企業・中小企業別あるいは企業集団別などで経済集中度を表すことができる。これに対して産業面にのみかかわる集中を産業集中といい、多くの場合、売上高ないし生産量で集中度を計る。
産業集中には、一般集中と市場集中(特定産業集中)とがある。前者は一国経済全体または主要産業(たとえば製造業、商業)の集中のことで、それは所有と支配の構造を示すものである。後者は一産業、一業種あるいは一商品に関する集中のことで、競争の状態を示すものであり、市場占有率ともいう。高い産業集中度は、その「市場構造」が独占ないし寡占化されていることを示し、企業の「市場支配力」が大きく、したがって高利潤・高価格・高間接費などの「市場構造」に導きやすい。
産業集中度としてよく用いられるのは、たとえば3社集中度、5社集中度のように、当該産業の生産量ないし売上高に占める上位数社の占有率(マーケット・シェア)の累積である。この指標は容易に算定できる反面、下位企業の有無や分布状況を表しえないし、また上位企業間の規模格差も反映されない。こうした欠点を考慮して、ハーフィンダール指数など各種の指標がくふうされている。
集中度を決定する要因は多々あるが、生産における技術的要因としての規模の経済性、流通面における販売網・アフターサービス網の最適規模および分布、大企業が他企業とのかかわりでもつ協調性、保有する特許、産業における参入障壁の度合いなどがあげられる。また集中阻止要因としては、独占禁止法の制約および市場自体の需要成長率などがあげられる。
[一杉哲也]
『J・S・ベイン著、中村秀一郎・正村公宏訳『産業構造の国際比較』(1967・新評論)』▽『植草益著『産業組織論』(1980・筑摩書房)』▽『公正取引委員会事務局編『日本の産業集中――昭和38~41年』(1969・東洋経済新報社)』▽『妹尾明編『現代日本の産業集中――1971~1980』(1983・日本経済新聞社)』