雲笈七籤(読み)うんきゅうしちせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「雲笈七籤」の意味・わかりやすい解説

雲笈七籤
うんきゅうしちせん

道教の概説書。中国北宋(ほくそう)の張君房(ちょうくんぼう)撰(せん)。122巻よりなる。仁宗(じんそう)の天聖末(1030ころ)の成立。真宗の命により王欽若(おうきんじゃく)の統領のもとに張君房が編纂(へんさん)した『大宋天官宝蔵』(1019、現存せず)という道蔵(どうぞう)の精要をとった書で、「小道蔵」と称される。洞真(どうしん)、洞玄(どうげん)、洞神(どうしん)、太玄(たいげん)、太平(たいへい)、太清(たいせい)、正一(しょういつ)の7部からなるので七籤という。1巻から28巻は道教宗旨の総論、29巻から86巻は服食(ふくしょく)、錬気(れんき)、内外丹(ないがいたん)、方薬(ほうやく)、符図(ふず)、守庚申(しゅこうしん)、尸解(しかい)の諸術を説き、87巻以下は詩歌、伝説などの道教に関するものを載せる。刊本は上海涵汾楼(シャンハイかんふんろう)刊の道蔵本、明(みん)の張萱(ちょうけん)の清真館本、清(しん)の道蔵輯要(しゅうよう)本の3種があり、『四庫全書』には浙江(せっこう)の孫仰曽(そんぎょうそう)家蔵本を収録。これらの刊本・鈔本(しょうほん)には語句多少異同がある。

[中村璋八]

『K. M. Shiper編『INDEX DU YUNJI QIQIAN』(1982・フランス極東学院)』

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改訂新版 世界大百科事典 「雲笈七籤」の意味・わかりやすい解説

雲笈七籤 (うんきゅうしちせん)
Yún jí qī qiān

中国の書名。宋の張君房編で,120巻。1013年(大中祥符6)宋の真宗の命により張君房が中心となって道教の一切経である道蔵の校定編纂が行われ,19年(天禧3)に《大宋天宮宝蔵》4565巻が完成したが,その際に主要な経典を抄録して編んだもので,一種の道教百科全書。総論,教史,教理に始まり,服気,錬丹などの道術,先人論著,詩歌,伝記などから構成され,当時の道教体系を知るうえでの重要資料である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雲笈七籤」の意味・わかりやすい解説

雲笈七籤
うんきゅうしちせん
Yun-ji qi-qian

道教経典。北宋の張君房編。北宋の真宗は道教経典の収集,編集を命じ,張君房が主任となって『大宋天宮宝蔵』という仏教大蔵経に相当する一大コレクションが成立した。これを要約したのが本書である。編纂当時は 120巻,現在 122巻。『大宋天宮宝蔵』が散逸してしまった今日では,11世紀までの道教を知るには不可欠の文献であり,また,小道蔵とも呼ばれるように道教の概論としても最良の文献である。現行の版本には,道蔵本と清真館本 (ともに明代) と道蔵輯要本 (清代) の3種があり,それぞれ異同があるが,特に道蔵輯要本には省略した章が多い。

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世界大百科事典(旧版)内の雲笈七籤の言及

【道教】より

… インド伝来の仏教に対して中国固有の宗教を意味する道教の語が,中国の思想史においてその用法を確定し定着させるのは,上述のように5世紀の半ばころ,南朝においては劉宋の時代,北朝においては北魏の時代であるが,その後の中国社会において仏教と競合する二大宗教としての道教が,その教理と儀礼,神学もしくは宗教哲学を一応完成させ,経典論書のたぐいを整備し,教団組織を拡充して,いわゆる唐代道教の黄金時代を迎え,皇帝貴戚以下,官僚政治家,学者知識人,一般民衆に及ぶ広範な層の信奉者,護持者を獲得するにいたることは,この時期の一般歴史書,思想,文学,芸術などの諸文献が具体的に記載しているとおりである。そして11世紀の初め,熱烈な道教の信奉者であった北宋の皇帝真宗の勅撰に成る《雲笈七籤(うんきゆうしちせん)》120巻(実際の編纂責任者は道士の張君房。なお現行の道蔵本《雲笈七籤》は122巻となっているが,これは内容に乱れを生じたための誤り)こそ,このようにして黄金時代を迎えた宗教としての道教のすべてを,その神学教理もしくは思想哲学を主軸として整理し体系化したものであった。…

【道蔵】より

… 宋代に入ると,真宗の命によってまず王欽若が《宝文統録》4359巻を編み,続いて1019年(天禧3)には張君房がその欠を補って《大宋天宮宝蔵》4565巻を完成させた。このとき,張君房がその精華を抄出して編んだ〈小道蔵〉ともいうべき《雲笈七籤(うんきゆうしちせん)》120巻は,宋以前の道教を知るうえで不可欠の書である。その後,政和年間(1111‐17)には《万寿道蔵》5481巻が刊行されて各地の道観に下賜されたが,これは印刷に付された最初の《道蔵》である。…

※「雲笈七籤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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