推進エネルギーとして電磁気的なエネルギーを利用するロケットの総称。種類としては電熱ロケット,静電加速型ロケット,電磁加速型ロケットに大別される。
電熱ロケットには推進材を電熱ヒーターで加熱するレジストジェットと,推進材を直接アーク放電で加熱するアークジェット(いわゆるアークロケット)があるが,いずれも加熱後の気体はノズルから噴射される。加熱温度に限度があるので静電加速型,電磁加速型と異なり比推力型ロケットに分類される。近年,ヒドラジンを推進材とするレジストジェットの実用例がみられるようになった。
静電加速型ロケットは荷電粒子を静電場で加速するもので,荷電粒子としてイオンを用いるものをイオンロケットion rocket,荷電コロイド粒子を用いるものをコロイドロケットcolloid rocketという。イオンロケットにはイオンの生成方法として電子衝撃型と接触電離型がある。推進材としては電離電圧の低い物質が適しており,セシウム,水銀,アルゴンなどが用いられている。イオンロケットは電気ロケット中もっとも技術的に洗練されており,試験的実用例も少なくない。ただし,推力密度が小さいのでこの点を改善する方法の一つとしてコロイドロケットが開発された。
電磁加速型ロケットの代表はプラズマロケットplasma rocketで,プラズマを,帯電粒子を巨視的に分離することなしに電磁場で加速する。すなわち導電体が電流と磁場に直角な方向に力を受けるという性質を利用するものである。気体の導電性は比較的低い電離度でも十分に大きくなるので低圧アーク放電が利用され,アーク放電は電流値が大きいのでそれ自体の作る磁場で加速がなされる。推進材の選択範囲が広く,構造が単純であり推力密度もイオンロケットに比べて大きくなるのが長所であるが,エネルギー損失が大きく電極の耐久性にも問題が残っていて試験実用例にも乏しい。
電気ロケットの多くは比出力型推進系に分類され,電源能力から単位時間当りに使用できるエネルギー量に限界がある。このため推進材使用率を時間の許す限り少なく抑えることで単位推進材当りに多くのエネルギーを与え,比推力を大きくするようにしている。したがって,推進加速度も小さく(10⁻4~10⁻5m/s2),宇宙空間の軌道上で効果的に用いられ,地表からの打上げには適さない。
→ロケット
執筆者:秋葉 鐐二郎
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