改訂新版 世界大百科事典 「電解分析」の意味・わかりやすい解説
電解分析 (でんかいぶんせき)
electrolytic analysis
電気分解(電解)にともなって起こる化学変化を測定する化学分析の総称。定性および定量分析や分離分析などに有効な手段として古くから用いられている。大別すると,電解重量分析や電量分析のように表面積の大きな電極を使って,十分かくはん(攪拌)した溶液中で,電解を定量的に完結させる方法と,ポーラログラフィーやクロノポテンシオメトリーのように微小電極を用いて静止溶液中で,電極表面近傍だけで起こる電解現象を観察する方法とがある。
電解重量分析electrogravimetry
電解により溶液中の金属イオンを還元して陰極上に定量的に析出させ,その析出金属の質量を測定して分析する方法。2種以上の金属が共存する場合には,陰極電位を目的金属のみが析出するような電位に限定して電解する定電位電解法が用いられる。
電量分析coulometry
電解におけるファラデーの法則に基づいて,目的とする物質を定量的に電解するのに要した電気量を測定して分析を行う方法。目的とする電解反応が実質的に100%の電流効率で起こるときには非常に精度の高い分析が可能である。電解の方法により,定電位電量分析法と定電流電量分析法とに分けられる。後者は電量滴定法とも呼ばれ,容量分析における滴定試薬をビュレットから滴下させる代りに,滴定槽中に入れた電極間で定電流電解を行って,反応試薬を電解発生させながら滴定反応を進行させる方法である。このとき反応の終点を適当な方法で検知して,当量点までに要した時間を計ると,反応に消費した電気量は定電流の値と電解時間の積から簡単に算出できる。きわめて微量の滴定試薬を発生させることができること,および装置の自動化が容易であることが特色である。
クロノポテンシオメトリーchronopotentiometry
静止電解液中で,適当な指示電極と対極との間に一定の微小電流を急に流したときに,指示電極が示す電位の時間変化を追跡する方法。得られる電位-時間曲線はクロノポテンシオグラムと呼ばれ,図はその典型的な形である。電流が流れはじめると,電極表面で被電解物質が消費されるため,それにつれて電位も初め急激に,次いで徐々に移行する。さらに電流が流れつづけると,ついには電極表面でのその濃度が0になり,電位は次の電解が起こるまで急激に移行する。電解開始から電位が最後に急激に移行するまでの時間τは遷移時間と呼ばれ,その平方根が被電解物質の濃度に比例することを利用して定量分析を行う。また,τ/4の時間における電位Eτ/4は,四分波電位quarter-wave potentialと呼ばれ,ポーラログラフ法の半波電位に一致するので,定性分析に利用できる。この方法はまた,電極反応機構の研究などにも有用である。
執筆者:岡崎 敏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報