競争市場においては、財の市場価格と取引数量がともに需要と供給によって決定されるという法則。一つの財に対する需要量は、その財の価格が高くなれば減少する。すなわち、需要関数D=f(p)は価格の減少関数である。 の縦軸に価格、横軸に数量をとると、需要曲線はDD曲線のように右下がりの曲線となる。供給量は、価格が高くなれば増大するので、供給関数S=g(p)は価格の増加関数であり、供給曲線はSS曲線のように右上がりの曲線となる。
いまかりに、価格がp1の水準であると、需要量はd1で供給量はs1となり、供給が需要を超過する。このときの超過分d1s1を超過供給という。超過供給が存在すると、供給側の競争によって価格が低下し、その結果供給量は減少する。価格がp2まで下がったとすると、供給量はs2で需要量はd2となり、こんどは需要が供給を超過する。この超過分s2d2を超過需要という。超過需要が存在すると、需要側の競争によって価格が上昇し、その結果需要量は減少する。このような試行錯誤の過程を経て、価格は需要量と供給量を均等させるpeに到達する。このように需要量と供給量とが均等となる価格peを均衡価格、そのときの取引数量qeを均衡需給量という。この試行錯誤の過程の本質は、「超過需要は価格を上昇させ、超過供給は価格を低下させる」ということであるが、逆に、価格が需要や供給を変化させ、両者を均等に導くとみることもできる。価格のこの作用を「価格の需給調節作用」あるいは「価格のパラメーター機能」とよぶ。このような価格の働きは、政府の市場への干渉や、独占・寡占などが存在するところでは阻害されることになる。
[佐々木秀太]
商品の相対価格は需要と供給を等しくするように決まるという考え方。学説史的には,価値は生産費としての投下労働量によって決定されるというD.リカードを中心とする古典派の労働価値説に対して,J.S.ミルは需要側も価値に影響を与えるとして需要供給原理的生産費説を唱えた。さらに,1870年代の限界革命によって主観的価値論に基づく需要理論は飛躍的に進歩した。そして今日では,A.マーシャルの部分均衡分析とL.ワルラスの一般均衡理論を包摂して発展してきた新古典派経済学において,需要・供給の法則は市場機構の基本原理を表現するものと考えられている。
いま,単一の商品の市場についてこの法則の意味するところを説明すれば,価格が上昇すれば買手の購入希望量が減少するという関係を反映して需要曲線は図のDD′のように右下がりに描かれる。他方,価格の上昇は売手の販売希望量を増加させるであろうから,供給曲線はSS′のように右上がりとなる。このような市場において価格p′が成立すれば,需要が供給を超過することになる。満たされない需要をもつ買手は,互いに競り合って価格をつり上げるであろう。逆に,p″のように高すぎる価格がつけられれば超過供給が発生し,売れ残りをかかえた売手は買手を求めて価格を切り下げると考えられる。したがって,いずれの場合にも価格は変動を続けるが,もしも価格がpに定められるときには,自発的に意図された市場への供給量が過不足なく買手に引き取られることになるため,市場は均衡し,それ以上の価格変動は起こらない。このようにして商品の価格は需要と供給の均衡に決定される。したがって,また,もしも需要曲線が右へシフトする変化が起これば,価格は供給曲線に沿って上昇し,供給曲線が上へシフトするときには,価格は需要曲線に沿って上昇することもわかる。
執筆者:林 敏彦
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