河川などから農業用水を用水路へ引き入れるための施設の総称。用水路の頭首に設置される工作物であることからこの名称が用いられる。通常,取水ぜきと取入口から構成されている。灌漑地区へ送水するのに必要な水量と水位を取入口で安定して確保できるよう取水ぜきを設ける。その位置としては,河川のみお筋が安定していて取入口を設ける岸の近くを流れ,洪水による河床の洗掘や土砂堆積を生じない地点が選ばれる。またせき上げ取水による上下流への影響が少ないことも要件となる。取水ぜきは構造上から固定ぜきと可動ぜきとに分けられる。固定ぜきは河床に固定して築造され,河川水はその上を越流して流下するが,可動ぜきはゲートを有し,開度の調整によって水位を調節できる。取水ぜきを設置した場合でも河川の洪水流下を妨げないことが必要であるから,最近は可動ぜきだけのものが多くなっているが,河川管理上許される範囲内で固定ぜき部分を多くするほうが経済的である。可動ぜきはまた,土砂吐きと洪水吐きの部分に分けられ,隣接しているのが一般的である。土砂吐きは取入口前面に堆積する土砂を河川の下流へ流去し,みお筋を維持することを主目的にしているが,洪水時には洪水吐きの一部としても機能する。洪水吐きは河川の洪水量が安全に通過する断面を与えるために設けられる。可動ぜきに設置されるゲートのタイプとしては,上下方向に開閉するもの,ある軸を中心に上下に回転して開閉するもの,水底に起伏して開閉するものの3種があり,適宜用いられている。取水ぜきの付帯構造物として,魚道,舟通し,流木路などが必要に応じて設置される。取入口は,取水ぜきの直上流部に土砂吐きに隣接して設けられ,調節水門を有しているのが普通である。土砂の流入を防ぐため取入口の敷高は河床より高くし,若干の土砂流入が避けられない場合には取入口下流に沈砂池を設け,また排砂装置を導入することもある。
執筆者:豊田 勝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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