サケ・マス類,アユ,ウナギなど河川を上り下りする習性をもつ魚の通行が,ダムなどの障害物によって妨げられる場合に,これらの魚が往来できるように設けられる通路。
魚道は魚の種類や地形に応じて,いろいろの構造のものが造られている。(1)水路式 傾斜の緩い水路を付設するもので,水路の所々を広げてプールを造ったり,途中に柱を立てて流れをさらに緩やかにする工夫のされたものもある。(2)導壁式 水路の片側あるいは両側から導壁を張り出して流れを緩やかにするもので,導壁の形,間隔,突出角度などによってさらにいろいろの形式に分けられる。(3)階段式 水路を一定間隔で仕切っていくつものプールを造り,流水は仕切りを越えて下のプールに落ちることによって勢いがそがれる。すなわち,階段状のプールを水が流れ落ちてゆくもので,魚梯fish ladder(広義には(1),(2)も含む)とも呼ばれる。日本で最も多く見られる形式である。仕切りの上縁の一部を低くして水量の少ないときにも使えるようにしたり,下縁に潜孔を設けてウナギなどが上りやすいようにする工夫もなされている。(4)エレベーター式 水路を設ける余地のない場合に,金網籠,水槽などに魚群を誘導し,機械的に引き上げて上流に(あるいは引き下げて下流に)魚群を放流する。(5)閘門(こうもん)式 水路の入口と出口に水門を設け,入口を開いて水路の中に魚群を誘導したあと入口を閉め,代りに出口を開いて水位を等しくして魚を上流(または下流)へ誘導する。この形式の魚道は落差の少ない河口ぜきによく使われているが,水門の数を増すことによって落差の大きい所にも応用できる。
魚道がその機能を十分に発揮するためには,魚道そのものの構造のほかに川を上ってきた魚が魚道の入口を見つけやすく,また魚道に入った魚が安全・確実にこれを通過できるような配置や誘導法の工夫も重要である。なお,魚群が常に通る道すじも魚道ということがある。
執筆者:若林 久嗣
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河川の中途にダムをつくるとき、ダムの一端に主として魚類が遡上(そじょう)したり降下できるように設けた水路。魚道の形式は水路式が一般的で、これには導壁のある階段式と斜面式とがあり、両方とも梯子(はしご)のようにみえるので魚梯(ぎょてい)ともいう。導壁のない水路式もあり、これは舟や筏(いかだ)を下らせることを主目的とするもので、舟通し、筏通しなどとよばれている。アメリカやヨーロッパには、水路式のほかにエレベーター式の魚道もある。この形式は、魚溜(うおだま)りの容器を設置し、それを動力で上下させて、それぞれの水位に魚群を導く仕組みであり、産卵期に移動する魚類に有効である。なお、漁場で魚群がもっともよく通過する道筋をも魚道という。海の場合、魚道は海底地形のほか、季節や海況とも深いかかわりがある。回遊魚のブリ、イワシ、マグロなどを漁獲対象とする定置網漁業は魚道を利用するものであるが、ほかの漁業においても、漁獲性能をあげるには魚道を的確に把握することが重要である。
[出口吉昭]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…貯水池の深い位置では水温が低いので,灌漑用水の場合は表面取水ゲートを設置して表面から取水し,洪水時の多量の流木,塵埃をあらかじめ止めて除去するため,ドラム缶,発泡スチロール製フロートなどをワイヤロープで連結した網場(あば)と呼ばれる流木除を設ける。
[その他]
ダムには主設備のほか,管理設備や土砂吐門,魚道などの付帯施設が必要である。土砂吐門は堆砂を洪水時に放出するための設備で,低いダムでは土砂を越流させて流下させるが,高いダムの底に設けたものはあまり効果がない。…
※「魚道」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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