食の医学館 「食中毒を予防するには」の解説
しょくちゅうどくをよぼうするには【食中毒を予防するには】
タマネギ、ニンニク、ショウガ、ワサビなどの「薬味」や、ハーブ&スパイスには抗菌作用があります。ビフィズス菌、ヨーグルト、オリゴ糖は腸内環境をととのえて、病気に対する抵抗力を高めます。これらの食材をじょうずに活用して、食中毒から、体をまもりましょう。
食中毒の原因には、細菌とその毒素、ウイルス、自然毒、化学物質などがありますが、最近では、ウイルスによる冬場の食中毒がふえてきています。
〈夏場に多い細菌性食中毒〉
このうち、夏場に多くみられるのがO(オー)―157をはじめとする病原性大腸菌(だいちょうきん)、サルモネラ菌、腸炎(ちょうえん)ビブリオ、カンピロバクターで、冬場には、ノロウイルスというカキなどの魚介類にいるウイルスによる食中毒が多く発生します。
O―157は、感染力が非常に強く、10数個の菌が体に入っただけで感染します。はげしい腹痛と水様性の下痢(げり)が起こり、重症になると血便(けつべん)がでて、腎臓(じんぞう)や脳に障害を引き起こし、死にいたることもあります。
サルモネラ菌による食中毒は、ニワトリがもっている菌が産卵のときにたまごを汚染し、そのたまごを食べることで感染する経路が主流です。症状は発熱、嘔吐(おうと)、腹痛、下痢などで、1週間ぐらいで治りますが、乳幼児では重症になることが多く、まれに死にいたることもあって、あなどれません。
腸炎ビブリオは、海水中の菌が魚介類を汚染し、それを生で食べることで感染します。子どもに発生することが少ないのが特徴で、ふつうは5~6日で治りますが、高齢者は重症になることもあります。症状は腹痛、下痢、嘔吐、軽い発熱などです。
カンピロバクターは、鶏肉から検出されるほか、家畜やペットも保菌しています。子どもに多く発生し、感染すると発熱、はげしい腹痛、下痢を起こします。
〈冬の食中毒は大半がウイルス性〉
冬場に発生する食中毒の大半は、小型球形ウイルスによるウイルス性食中毒であるノロウイルスが原因です。
海水中にごく微量含まれるウイルスが貝や魚に蓄積され、それを未加熱のまま食べることにより感染します。食べてから2~4日後に、嘔吐や下痢のほか、かぜと似たような症状がでます。
〈タマネギ、ニンニク、ショウガ、ハーブなどの抗菌作用が有効〉
食中毒を予防するためには、鮮度の落ちた食材はしっかりと過熱することはもちろんですが、タマネギやニンニク、ショウガ、ワサビ、シソ、ミョウガ、ハーブやスパイスなど抗菌作用のあるにおい成分を含む食品が有効です。
日本では、昔から料理に「薬味(やくみ)」をとり入れてきましたが、これは風味がよくなるだけではなく、食中毒予防の点からも理にかなったことだったのです。
また、最近では、ハーブやスパイスを使った西洋料理も好まれるようになりましたが、ドレッシングにハーブビネガーやハーブスパイスなどを使うことによって、家庭でも、簡単にハーブをとりいれることができます。
抗菌作用のある食品を食べること以外にもう1つたいせつなのは、腸内環境をととのえ、菌に対する抵抗力をつけておくことです。腸内にすむ善玉菌であるビフィズス菌をふやすヨーグルトなどの食品を積極的にとるようにしましょう。
ヨーグルトに、抗菌作用のあるカテキンを含んでいる抹茶(まっちゃ)を混ぜたり、オリゴ糖を含んでいるバナナを加えたりするのも、かしこい食べ方といえましょう。
〈脱水症状を防ぐため、水分補給を欠かさずに〉
食中毒にかかってしまったら、まず全身をあたたかくして安静にし、体力の消耗を防ぎます。
体から毒物を早く排出させる必要があるので、かってに薬を飲み、嘔吐や下痢を止めることは逆効果となります。なるべく早く医師の診察を受けましょう。
脱水症状を起こしやすいので、少しずつ何回も白湯(さゆ)やお茶を飲み、水分を補いましょう。
ただし、刺激の強い果汁や炭酸飲料は避けます。
症状がはげしいときは絶食し、よくなってきたらおもゆから徐々にふつう食にもどします。