馬蹄銀(読み)バテイギン

デジタル大辞泉 「馬蹄銀」の意味・読み・例文・類語

ばてい‐ぎん【馬×蹄銀】

中国で、巨額の取引の際に使用された馬蹄形の銀塊代から用いられ、1個の重さは普通50両(約1800グラム)。元宝銀

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精選版 日本国語大辞典 「馬蹄銀」の意味・読み・例文・類語

ばてい‐ぎん【馬蹄銀】

  1. 〘 名詞 〙 中国の明・清代、秤量貨幣としてつくられた馬蹄形の銀塊。一四世紀頃から用いられ、巨額の取引に使用された。普通一個の重さは五〇両(約一八〇〇グラム)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「馬蹄銀」の意味・わかりやすい解説

馬蹄銀
ばていぎん

中国、清(しん)代に通用した銀地金秤量(ひょうりょう)貨幣。形状によって馬蹄銀と俗称されるが、正しくは元宝(げんぽう)銀。その重量単位によって銀両とも通称される。中国で金銀が貨幣とされたのは漢代にさかのぼるが、鋳貨としては安定せず、地金で賜与や贈答に用いられ、形はからすみ形、長方形、角棒形などあり、現物は宋(そう)代のものが残されている。やがて饅頭(まんじゅう)形、分銅形が多くなり、明(みん)の万暦帝陵から多数発見されている。明・清の間、銀の流通が盛行しても、貨幣としての発行に政府は関与せず、一般に銀錠(ぎんじょう)とよばれる銀塊は、形も純分も重量も民間慣行にゆだねられ、地方によって千差万別であったが、清代には分銅形の中がへこみ両側の耳とよばれる部分が高くなって馬蹄形が多くなった。これは、坩堝(るつぼ)の中で銀を溶かし攪拌(かくはん)して皺曲(しゅうきょく)をつくり、小孔の多いのは純分がよいものと喜ばれた。両という単位も地方によって異なるが、だいたい50両を標準として元宝銀、10両前後を小元宝または中錠、3両から5両前後を小錠、小(しょうか)、子といった。銀錠は銀炉で作製されたが、その両替のため全国に無数の銭荘銭舗などの金融業者ができた。清末、洋銀に倣って1円銀貨(銀元)がつくられるようになって姿を潜めた。

[増井経夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「馬蹄銀」の意味・わかりやすい解説

馬蹄銀 (ばていぎん)
mǎ tí yín

中国の清代に通行した銀錠の一種。両側の耳が高くなり,馬蹄形をしているので,この名がある。漢の武帝のときに蹏金(じようていきん)を作ったのが,その始まりとされるが,より直接には,元・明代の分銅形の元宝銀が変化してできたものである。馬蹄銀は,政府や銭荘などの依頼を受けて,民間の炉房,銀炉が各自の規格において鋳造したので,軽重,大小,品格などは一定しない。しかし,多くは,大は元宝銀と呼ばれる50両前後のもの,中は小元宝,中錠と呼ばれる10両前後のもの,小は小錠,子(かし)と呼ばれる3両前後のものである。内側に製造所の印が押され,官許の鑑定業者による評価が墨書されている。清末には,洋銀の多量の流入とその流通によって,しだいに銀貨に代わっていった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「馬蹄銀」の意味・わかりやすい解説

馬蹄銀
ばていぎん
ma-ti-yin; ma-t`i-yin

中国で使用された馬蹄形の銀塊のこと。銀錠 (両を単位として特定の鋳型でつくった秤量貨幣) の一種。銀錠には元宝銀,中錠,小錠の3種があり,このうち大きな取引に使用された重さ 50両内外の元宝銀の型が多く馬蹄形であったことから,その別称のようになった。前漢の武帝の頃にその原型があるといわれている。日本では銀錠一般を馬蹄銀と呼んでいたが,ヨーロッパではサイシー syceeと呼ばれていた。

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世界大百科事典(旧版)内の馬蹄銀の言及

【貨幣】より

…ただし銀は元代に通貨として定着したが,中国では清末まで秤量貨幣であった。明・清時代には一般に馬蹄銀が用いられたが,外国から鋳貨が流入しても,それは改めて秤量のうえ,使用されたのである。 清は銀と銅銭を併用した。…

※「馬蹄銀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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