六訂版 家庭医学大全科 「髄膜炎・脳炎とは」の解説
髄膜炎・脳炎とは
ずいまくえん・のうえんとは
Meningitis, Encephalitis
(脳・神経・筋の病気)
どんな病気か
髄膜炎は持続する頭痛を主な症状とし、発熱、
類縁あるいは同一の疾患群としては、急性脳症、急性散在性脳脊髄炎(さんざいせいのうせきずいえん)、
原因は何か
病原にはさまざまなウイルス、細菌、寄生虫などがあげられ、他臓器での感染巣からウイルス血症、菌血症として、あるいは特発性に
急性脳炎では単純ヘルペスウイルスによる単純ヘルペス脳炎の頻度が高く、日本では年間で100万人に3.5人、約400例の発症とされます。日本脳炎の場合7~9月に数例の小流行がみられます。このほか、インフルエンザ、
症状の現れ方
発熱、頭痛、意識障害、けいれんなどが急性に現れたか、あるいは
進行すると、深い意識障害、けいれんの重積を示すことがあります。体温、脈拍、血圧、呼吸などのバイタルサイン(生命徴候)の監視も必要になります。
検査と診断
髄膜炎では、髄液検査による細胞数増加の確認が診断上重要です。髄液の外観、細胞の種類、蛋白、糖値、病原検査によって各種髄膜炎の診断の手がかりが得られ(表2)、糖値が低下している場合、細菌性、結核性、真菌性髄膜炎を見分ける必要があります。
脳炎においては、発熱、頭痛、意識障害、けいれん発作などは必ず起こる症状ですが、意識障害などのため、同居している方から病気の起こり方などを聞き出すことが大切です。
赤沈の亢進、C反応性蛋白上昇などの一般炎症所見、髄液所見で細胞数増加がみられ、CT、MRI、脳波などを調べます。ヘルペス脳炎は
病原の診断では、グラム染色、一般細菌、血液培養、酸菌染色、墨汁染色を行う必要があります。各種ウイルスに対する髄液からのPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応→コラム)を含む病原検索、血清、髄液の酵素抗体、
PCR法によるウイルスゲノム(遺伝子)の検出は、発症10日以内の急性期で陽性率が高く、この方法は細菌に対しても普及しています。
治療の方法
各種髄膜炎・脳炎には、それぞれの原因に対し特異的な治療があります。髄液所見から細菌性髄膜炎が疑われた場合には、起炎菌の同定(突き止めること)結果を待つことなく抗菌薬投与を開始する必要があります。
結核性・真菌性髄膜炎には、抗結核薬、抗真菌薬を使います。ヘルペス脳炎が疑われる場合、アシクロビルの点滴静脈注射が行われます。
病気に気づいたらどうする
発熱、頭痛、項部硬直などの髄膜刺激症状、あるいは発熱、意識障害、けいれん、髄膜刺激症状などが現れた場合、髄膜炎、脳炎が疑われます。診断に髄液検査、頭部CT・MRI・脳波検査、病原検査が必要であり、加えて意識障害、けいれん、呼吸管理などに迅速に対応できる高次医療機関の神経内科、感染症科などの内科、小児科の受診をすすめます。
庄司 紘史
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報