裁判は一事件につき1回かぎりとされるのは例外で,多くの場合,上訴による再審理が許されている。それに応じて各国とも上位・下位の関係で何種類かの裁判所を設けている。日本では,最上位が最高裁判所,その下に高等裁判所,その下に同格分担の関係で地方裁判所と家庭裁判所があり,地方裁判所の下に簡易裁判所がある。地方裁判所と簡易裁判所は一面また分担の関係にあるともいえる。下級裁判所とは,最高裁を除いた各裁判所を一括する概念である。憲法は最高裁についてはその構成の基本事項を直接に規定して(憲法改正をしないかぎり変えられないものにして)いるが,下級裁判所についてはその設置等を法律にまかせている(憲法76条)。現在は裁判所法(1947公布)が,最高裁に関して細則的規定を掲げるほか,上述の4種の下級裁判所の設置と権限分配などを定めている。これは国会による法律改正のみで変えることができるが,たとえば軍法会議のごとく,通常裁判所の系列外に設けられて特定の身分や特定の事件のみを裁判する特別裁判所の設置は憲法で禁じられている。下級裁判所と最高裁判所の間には,裁判について上告するという審級の下位・上位関係のほかに,最高裁の設定する裁判所規則が下級裁判所を規律する関係,さらに裁判所の物的・人的設備の運用管理などを意味する司法行政においても最高裁が最上位に立つという関係がある。しかし,個々の事件の裁判に際しては下級裁判所にあっても裁判官はすべて独立の地位と権限を保障されている。
執筆者:住吉 博
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最高裁判所の下位にある裁判所をいう。下位とは、審級関係(ある裁判所の裁判に対する不服申立てを、上級裁判所としてどの裁判所が審査するかという関係)および司法行政関係における下位をいう。最高裁判所は憲法により設置される裁判所であるが、下級裁判所は法律により設置するとされ(憲法76条1項)、現在は裁判所法により、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、および簡易裁判所の4種が認められている。
[本間義信]
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…民事訴訟事件については,その第一審および簡易裁判所を第一審とする事件の控訴審を,また,刑事訴訟事件については第一審を扱う裁判所で,下級裁判所のうち基本的な地位を占めている。家庭裁判所は地方裁判所と同格であるが,受け持つ事件が限定されている。…
※「下級裁判所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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