リノール酸(読み)リノールサン(英語表記)linoleic acid

翻訳|linoleic acid

デジタル大辞泉 「リノール酸」の意味・読み・例文・類語

リノール‐さん【リノール酸】

linoleic acid不飽和脂肪酸の一。必須脂肪酸の一。亜麻仁あまに油・綿実油大豆油・とうもろこし油・ひまわり油・胡麻油など植物油グリセリンエステルとして存在。血中コレステロール値を下げる働きがある。分子式C18H32O2

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「リノール酸」の意味・読み・例文・類語

リノール‐さん【リノール酸】

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] linoleic acid の訳語 ) 多くの植物油、特に半乾性油を鹸化して得られる脂肪酸の一つ。化学式 C18H32O2 無色。常温で液体。血液中のコレステロール値を下げる働きがある。マーガリン・軟せっけんの原料。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リノール酸」の意味・わかりやすい解説

リノール酸
りのーるさん
linoleic acid

9、12位にシス型の二重結合をもつ代表的なn-6(ω6)系多価不飽和脂肪酸である。植物油、とくにサフラワー油ベニバナ油)、ヒマワリ油、大豆油、コーン油などに多く含まれる。動物体内では合成されない必須脂肪酸(ひっすしぼうさん)であり、エネルギー比で2%程度の摂取が必要である。通常の食生活で不足することはないが、欠乏すると成長抑制、皮膚炎などをおこす。二重結合の位置と立体配置が変わると必須脂肪酸活性を失うが、共役リノール酸には特徴的な生理機能がある。優れた血液コレステロール低下作用を示すが、とりすぎると善玉コレステロールをも低下させる。酸化されやすく、動脈硬化を含め種々の生活習慣病の引き金となるので抗酸化対策が必要である。動物体内ではアラキドン酸に変えられ、生体膜の機能を維持し、また、代謝調節に貴重な役割を果たす種々のエイコサノイドプロスタグランジンロイコトリエンなど)の基質となる。

[菅野道廣]

『拓殖治人・高瀬幸子・武藤泰敏編『成人病予防からみた脂肪の選択』(1996・光生館)』『五十嵐脩・菅野道廣編『脂肪酸栄養の現代的視点』(1998・光生館)』『坂倉弘重編『脂質の科学』(1999・朝倉書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「リノール酸」の意味・わかりやすい解説

リノール酸 (リノールさん)
linoleic acid

化学式CH3-(CH24-CH=CHCH2CH=CH(CH27COOH。シス-9,シス-12-オクタデカジエン酸で,二重結合が二つある不飽和脂肪酸。オレイン酸とともに植物油全般,また動物体中でも肝臓の油,リン脂質などの脂肪酸としてグリセリドの形で存在する。純度を高めるには,サフラワー油などリノール酸高含有の油脂の脂肪酸の,アセトンなど有機溶剤中からの分別結晶法,分留の方法などによる。融点-5.2~-5.0℃,沸点202℃(1.4mmHg),比重d148=0.9038,屈折率n2D0=1.4696。水に不溶,エチルアルコールなど有機溶剤に可溶である。空気中で酸化されやすく過酸化物を生ずる。リノール酸に水素添加をすればオレイン酸またはイソオレイン酸を経てステアリン酸となる。リノール酸の多い食用油を食すると血管中のコレステロールの沈着を防止して好ましいとされる。そのほかリノール酸は特異な栄養効果をもち,動物体の健康維持に必要欠くべからざるものであるが,体内で生合成できないので,その意味で不可欠脂肪酸の一つに数えられている。リノレン酸とともにビタミンFと呼ばれることもある。おもな植物油中のリノール酸含有率はサフラワー油75%,ダイズ油51%,トウモロコシ油58%,ヒマワリ油64%,ラッカセイ油21%などである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「リノール酸」の解説

リノール酸
リノールサン
linoleic acid, linolic acid

(Z,Z)-9,12-octadecadienoic acid.C18H32O2(280.45).CH3(CH2)4CH=CHCH2CH=CH(CH2)7COOH.2個の二重結合がともにシス形をとっている炭素数18の直鎖不飽和脂肪酸.グリセリドとしてサフラワー油(75%),ヒマワリ種子油(60%),トウモロコシ油(40%)などの多くの植物油中に含まれている.植物油中の混合脂肪酸から固体脂肪酸を除いたのち,精製を繰り返すと得られる.無色の油状液体.融点-12 ℃,沸点230 ℃(2.13 kPa).0.9038.1.4699.水に不溶,多くの有機溶媒に可溶.ある種の微生物や動物組織にもみられ,動物にとっては食物から摂取しなければならない必須脂肪酸である.空気中で酸化されやすく硬化するので,乾性酸ともいわれる.還元するとステアリン酸になる.軟せっけんの原料,ペイント溶剤に用いられる.[CAS 60-33-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「リノール酸」の意味・わかりやすい解説

リノール酸【リノールさん】

化学式はCH3(CH24CH=CHCH2CH=CH(CH27COOH。無色無臭の液体。融点−5.2〜−5.0℃,沸点210℃(5mmHg)。植物油,特に乾性油,半乾性油中にグリセリンエステルとして広く存在し,サフラワー油(べに花油),綿実油,トウモロコシ油などから単離精製する。塗料,軟セッケンなどに利用。
→関連項目硬化油ゴマ油米ぬか(糠)油大豆油ナタネ(菜種)油紅花油綿実油

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典 「リノール酸」の解説

リノールさん【リノール酸】

不飽和脂肪酸の一種で、多価不飽和脂肪酸。体内で生成できない必須脂肪酸。植物油に多く含まれる。血中コレステロール値や中性脂肪値を下げる作用があるため、動脈硬化や心筋梗塞などの生活習慣病予防に役立つほか、血圧低下作用、コレステロール系胆石症の予防などの作用があるとされる。また、酸化されやすい性質をもち、酸化すると体内で発がんの可能性がある過酸化脂肪酸を生じる。

出典 講談社漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リノール酸」の意味・わかりやすい解説

リノール酸
リノールさん
linoleic acid

2個の不飽和結合をもつ不可欠脂肪酸。次の化学式をもつ。

CH3(CH2)3(CH2CH=CH)2(CH2)7COOH

油脂中に多く含まれる無色液体。融点-12℃,沸点 230℃ (16mmHg) 。水に不溶,エーテル,アルコールに可溶。軟石鹸の原料として用いられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「リノール酸」の解説

リノール酸

 C18H32O2 (mw280.45).

 9,12-オクタデカジエン酸.必須脂肪酸の一つ.一般に植物油にトリアシルグリセロールの形で多く含まれている多価不飽和脂肪酸.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

毛髪用語集 「リノール酸」の解説

リノール酸

不飽和脂肪酸の1つでコレステロールを下げる効果がある成分。血管を拡げる作用もあるため、血流がスムーズになり、より毛根に栄養分が行き渡る。大豆油やコーン油、ひまわり油など植物性の油に多く含まれている。

出典 抜け毛・薄毛対策サイト「ふさふさネット」毛髪用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内のリノール酸の言及

【必須脂肪酸】より

…動物が生体内で合成できず,食物によって摂取する必要のある脂肪酸をいう。バーG.O.BurrらおよびエバンズH.M.Evansは,動物の栄養にリノール酸リノレン酸などが必要であることを明らかにし,これらをまとめてビタミンFと命名した(1934)。その後,それ以外にアラキドン酸も必要であることもわかった。…

※「リノール酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android