鬼押出し(読み)おにおしだし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鬼押出し」の意味・わかりやすい解説

鬼押出し
おにおしだし

長野群馬県境にそびえる浅間山(あさまやま)の北斜面、群馬県吾妻(あがつま)郡嬬恋村(つまごいむら)の標高1200~2100メートル内外に分布する溶岩の名称。1783年(天明3)7月8日の浅間山の大爆発で噴出した溶岩流が凝固したもの。南北の長さ約5キロメートル、東西の幅約1~2キロメートルで、山頂から斜面に沿って当時の3条の溶岩流の跡がみえ、末端部は入り組んでいる。岩質は複輝石(ふくきせき)安山岩で、巨岩怪石が重なり、わずかに矮小(わいしょう)な植物が点在するだけで、すこぶる奇勝である。付近には特別天然記念物の浅間山溶岩樹型や、同時に噴出したパン殻(がら)状火山弾もみえ、上信越高原国立公園に属し、中心部に溶岩流群を展望できる町営の浅間園や火山博物館がある。JR北陸新幹線軽井沢駅、吾妻線万座(まんざ)・鹿沢口(かざわぐち)駅、しなの鉄道中軽井沢駅からバスが通じる。

[村木定雄]


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百科事典マイペディア 「鬼押出し」の意味・わかりやすい解説

鬼押出し【おにおしだし】

群馬・長野県境の浅間山北斜面に広がる溶岩流。1783年の大噴火で流出,千余の死者を出した。長さ5km,幅1〜2km,厚さ約30m。輝石安山岩からなり,奇岩岩窟など奇観を呈する。付近に溶岩樹型(特別天然記念物),末端にツツジの名所六里ヶ原がある。
→関連項目塊状溶岩嬬恋[村]

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世界大百科事典(旧版)内の鬼押出しの言及

【浅間山】より

…鎌原火砕流はとくに高速で破壊力が大きく,その通路に当たった鎌原村は全村数mの厚さの砂礫質堆積物に埋められ,周辺一帯も多大な被害をうけた。鎌原火砕流噴出直後に山頂から鬼押出し溶岩流が北斜面を流下した。溶岩流の厚さは30m以上,幅最大1.3km,長さ5.5kmあり,表面は大小の岩塊が積み重なりすさまじい景観を呈する。…

【嬬恋[村]】より

…群馬県北西端,吾妻(あがつま)郡の村。人口1万1135(1995)。吾妻川最上流域を占め,長野県境沿いに白根山,四阿(あずまや)山,浅間山など標高2000m級の山々が連なる。村域の大部分は林野で,おもな集落は吾妻川沿いにある。六里ヶ原と呼ばれた浅間山北麓の原野では第2次大戦後,大規模な開拓が行われ,1960年代にキャベツ,ハクサイなどの高冷地栽培が急増し,現在は全国有数のキャベツ産地となっている。農林水産省嬬恋馬鈴薯原々種農場では種ジャガイモを生産している。…

※「鬼押出し」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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