鰯の頭も信心から(読み)いわしのあたまもしんじんから

精選版 日本国語大辞典 「鰯の頭も信心から」の意味・読み・例文・類語

いわし【鰯】 の 頭(あたま・かしら)も信心(しんじん)から

鰯の頭のようにつまらないものも、それを信仰する人には大事であること。信仰心が不思議な力を持つたとえ。また、頑迷に信じこんだ人をからかっても用いる。〔俳諧・毛吹草(1638)〕
談義本・風流志道軒伝(1763)二「節分狗骨(ひひらぎ)、鰮(イワシ)の頭も信仰からとはいへども」
[補注]「信心から」は、信じ方しだいだの意の「信じから」の転で、「東海道名所記‐六」に「鰯(いはし)かしらも信じからなれども、無理非法の公事は神仏もちから及びがたし」とある。

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デジタル大辞泉 「鰯の頭も信心から」の意味・読み・例文・類語

いわしあたま信心しんじんから

イワシの頭のようなつまらないものでも信心する人には尊く思われる。物事をかたくなに信じる人を揶揄やゆするときなどにもいう。

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ことわざを知る辞典 「鰯の頭も信心から」の解説

鰯の頭も信心から

鰯の頭のようにつまらないものをあがめるのも信仰しているからである。つまらぬものを信じ込んで疑わない者を皮肉に批判することば。

[使用例] 戦争中私は〈略〉せめて偉い人たちに、人間らしさや教養をもってほしいと、ないものねだりをしていたようである。日本の偉いさんの教養は、ゼロに等しく、偉くない人たちは偉いさんの言葉に、鰯の頭を信心する信者なみに従っていた[古山高麗雄兵隊蟻が歩いた|1977]

[使用例] 東京化学会で私が(「オリザニン」は脚気に効くだろう)と述べたことを〈略〉某博士が伝え聞かれて「鈴木が脚気に糠が効くといったそうだが、馬鹿げた話だ、鰯の頭も信心からだ、糠で脚気が癒るなら、小便を飲んでも癒る…」と、ある新聞記者に話されたことがあった[鈴木梅太郎*ヴィタミン研究の回顧|1931]

[解説] 「鰯の頭」を例にあげ、まともに相手にしてもしかたがないものとして迷信を否定するのが基本的な用法です。ただし、古くは、一見つまらないものでも信心しだいでごやくがあると、逆に信心を肯定的に説く用法もありました(「浮世風呂」)。相反する用法ですが、両者が容認されたのは、一方で鰯の頭をあがめるのは迷信とされ、他方で信仰の問題は人それぞれで、奇妙にみえても他人が口をはさむことではないと社会的に認識されていたせいでしょう。背景には、節分の夜に鰯の頭をひいらぎの枝に刺して門口にかざし、魔よけとする古来風習がありましたが、江戸時代にはこれを迷信とみる人々がしだいに多くなっていたものと考えられます。
 なお、「頭」の読みは、古くは「かしら」で、江戸中期から「あたま」が散見されるようになり、今日では後者が主流となっています。

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