5度圏(読み)ごどけん

改訂新版 世界大百科事典 「5度圏」の意味・わかりやすい解説

5度圏 (ごどけん)

ある音を起点に,円周上を5度ずつの音程で12等分した図のこと。右回りに5度ずつ上行し,左回りに5度ずつ下行する。ハ音を起点とすると,右回りは嬰調(♯系),左回りは変調(♭系)となり,直径線上で嬰ヘと変トの異名同音(エンハーモニック)となる。七つ以上の調号は実際にはあまり使用されないので,直径線上が二つの系列の境となる。右回り左回りとも1周して起点に戻る。音階の12音すべてが表示されるので,各音を主音とする調の相互関係が一目で把握できる。各音の一つ右は属調,左は不属調,直径線上はオクターブのちょうど半分すなわち3全音(増4度)の関係になり,またこの中の各音を正三角形にとると長3度,正方形にとると短3度の関係を表す。ただし以上は平均律を前提とした場合である。純正5度(2:3,平均律5度は2:2.9966)を重ねてゆくピタゴラス音律では,異名同音はあり得ず,永遠に同じ音には回帰しないので圏をなさず〈5度螺旋〉と呼ばれる螺旋状の図になる。なお,5度圏理論は西洋ばかりでなく,中国日本にも古くから存在し,17世紀の朱載堉,および中根元圭の十二平均律理論の以前から実践的には5度圏によるエンハーモニックの解釈が行われていたと考えられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「5度圏」の意味・わかりやすい解説

5度圏
ごどけん
circle of fifths

音楽用語。ある音を出発点として,5度ずつ順次,音をとっていく過程を図に表わしたもの。 12音平均律の場合は,ある音から始めて完全5度ずつ上行,あるいは下行して音を順次拾っていくと,12回で出発の音に戻り,オクターブ内のすべての音が出現する。これを二重の円で表わすと,右回りで嬰記号系 (♯) の調性が,左回りで変記号系 (♭) の調性が示され,外円は長調を,内円にはおのおのの長調の平行短調が表わされる。また直角に交わる4つの音を拾うと減7の和音が得られる。

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