本来は映画用フィルムで製作されたテレビのCM(commercial message)のことであったが,現在ではビデオテープにより製作されたものも含めてテレビCMそのものをさすようになった。CFはcommercial filmの略で,日本での造語であり,日本では単にコマーシャルといわれることが多い。テレビCMはアメリカで生まれ,初期には,スタジオや中継現場からテレビカメラを通して放送された。世界初のテレビCMは,1941年7月1日,NBCのWNBT局の野球中継で放送された。広告主はブローバ(時計会社)で,時計の画面にアナウンサーが時刻を告げた。CFの登場は49年以降のことで,初期の作品としてはアニメーションで作られたラッキーストライク(タバコ)のCFが有名である。日本でのCF第1号は53年8月28日の民間放送開始の日,日本テレビで放送された精工舎(現,服部セイコー)の正午の時報で,35ミリ判フィルムが使われたが,映写機に裏返しにセットされたため,画面が左右逆になり,音も出ず,事故第1号ともなった。56年アメリカでビデオテープが開発され,2年後テープによるCF製作が始まった。生放送に伴いがちな事故防止が当初の目的だったが,のちに,製作の速さ,画面の鮮明さといったビデオ放送の特徴が活用されるようになった。カラーフィルムによるCF製作もほぼ同時期に始まったが,本格化したのは,アメリカで64年,日本では66年以降であった。こうした技術の進歩とともにCFの製作技術も進歩し,実景を撮影するだけでなく,漫画や特殊撮影がくふうされ,CMソングやタレント起用も多くなった。また表現も,ドラマティックなもの,ユーモラスなものなどが開発された。
多彩な表現手法を開発したCFは,テレビ媒体のもつ娯楽性とも合致し,テレビCMの主流となり,さらにはテレビCMそのものを指す言葉にもなった。テレビは映像と音声で人間の視覚と聴覚の両方に訴える機能をもち,短時間のうちに送る情報量も多く,人々は容易にその内容を受け入れるので,CFもその機能を最大限に生かすような作りかたがなされる。日本のテレビCMの長さは,15秒,30秒,60秒が普通で,特別番組などで61秒以上のものも製作されるが,15秒のものが全体の60%以上を占める。ちなみにアメリカでは10秒,20秒,30秒,60秒,それ以上となっており,30秒が最も多い。日本で1961年から5秒CFが作られ,小予算で大量放送をねらった時期があったが,その繁雑さが批判をあび,65年に中止された。CFはその娯楽性と反復使用により,視聴者に強い印象を与え,商品の販売促進に寄与するとともに,短期的には話題や流行語を提供し,長期的にはファッションをはじめ,すべての生活様式を変化させる大きな力をもっている。それだけに誇大表現や子どもへの影響が大きい表現,良俗を乱す表現には批判が大きく,日本民間放送連盟がテレビ放送基準(64条からの11条がCMに関する条項)を作り,各放送局でCM考査を行うなど,業界内部の自主規制もきびしい。またCFの品質向上のために,優秀作品の表彰活動も行われており,日本では全日本CM協議会のCMコンクールが1961年以来,毎年開催されている。
執筆者:内藤 俊夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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「コマーシャルフィルム」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…貿易取引の当事者が貨物の輸送に係る運賃,保険料などの付帯費用をいずれが負担するかによって異なってくる取引価格の条件を示す用語。 FOBはfree on boardの略語で,〈本船渡し〉と訳される。FOB価格(〈本船渡し値段〉もしくは〈甲板渡し値段〉ともいう)条件とは,売主は,買主側が手配した指定船積港に停泊している船舶に貨物を積み込むが,この本船積込みを含め,それまでに生じたいっさいの経費は売主が負担する取引条件をいう。…
※「C&F」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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