対共産圏輸出統制委員会Coordinating Committee for Export Control to Communist Areaの略称。第2次大戦後の冷戦期にアメリカの提唱で,北大西洋条約機構(NATO)諸国の対共産圏戦略物資輸出統制を目的に,アメリカ,イギリス,フランス,イタリア,オランダ,ベルギー,ルクセンブルクの7ヵ国を加盟国として,1949年11月設立され,50年1月から活動を開始した。のち西ドイツ,カナダ,デンマーク,ノルウェー,ポルトガルが加わり,52年8月には日本も参加するなどして,ソ連が崩壊した91年には17ヵ国で構成されていた。COCOMは当初,加盟国の閣僚クラスからなる協議グループConsultating Group(CG)と日常的政策執行にあたる調整委員会Coordinating Committee(COCOM)の二つから構成され,CGCOCOMと呼ばれたが,その後CGがほとんど開催されなくなったため,53年ころから単にCOCOMと呼ばれるようになった。本部はパリのアメリカ大使館別館にあり,そこで作成される禁輸リストはCOCOMリストないしパリ・リストと呼ばれる。その目的は,ソ連をはじめとする共産圏諸国の軍事能力強化に結びつく戦略物資と高度技術輸出を禁止ないし規制することにある。発足当時は,物資の輸出統制を主眼としていたが,70年代以降は技術移転の規制に重点が移ってきている。しかし,東西経済交流に関してはアメリカと西欧諸国間の利害が食い違うため,両者間の摩擦が絶えない。COCOMの政策決定はいっさい非公開だが,リストの決定や改訂,特例認可は全加盟国の一致で行われ,特例認可が得られない場合,申請国は〈国益上の例外措置〉として輸出を強行することも可能なため,かなりの高度技術がこの方法で流出したと伝えられる。アメリカはレーガン政権の成立(1981)以来,汎用高度技術の対ソ移転規制に本格的に乗り出し,COCOMの機能・機構の強化を加盟国に求めてきたが,意見調整が難航している。なお,中国などアジアの共産圏諸国向け貿易統制を行う,COCOMの分科会ともいうべきCHINCOM(チンコム)(China Committeeの略称)が1952年に発足したが,57年に廃止され,COCOMに一本化された。
ソ連崩壊後,冷戦が終結したことで役割を終えたとして94年解散した。代わって95年12月,オランダのワッセナーで欧米諸国,日本,ロシアなど28ヵ国が会合を開き,通常兵器の輸出を監視するための新たな国際輸出管理機構の設立で合意。96年7月ウィーンで設立総会が開かれ,〈ワッセナー取決めWassenaar Arrangement〉(通称・新ココム)が発効した。加盟はロシアなど旧社会主義諸国を含む33ヵ国,事務局ウィーン。
執筆者:佐藤 経明
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戦略物資・技術の対共産圏輸出統制に関する西側諸国の調整委員会の略称。1950年に正式に発足。アイスランドを除いた北大西洋条約機構(NATO)加盟国と日本,オーストラリアが参加。パリに本部。冷戦時代に共産諸国に対する経済的な封じ込め政策の一翼を担った。厳しい輸出統制を求めるアメリカと,それに反対する西ヨーロッパの間でしばしば対立が起きた。冷戦の終結とソヴィエト圏の崩壊に伴い,94年に解散。96年に新たな国際的な輸出統制機構(ワッセナー協約)が発足した。
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