債券発行者の自国内で募集される内債に対して、債券発行者の自国外で募集される債券をいう。外債の発行は、(1)国際的長期金利格差、(2)貸付国・借入国の資金需給状態、(3)為替(かわせ)相場変動の長期的見通し、(4)借入国や借入企業の政治・経済的安定状態、(5)外債に対する税制、などによって左右される。外債の分類を、日本の事例で示すと、外国の政府・企業など(非居住者)が日本国内で円貨建てで発行するもの(円建て外債、またはサムライ債)と、外国の政府・企業などが日本の債券市場で、外貨建てで発行するもの(ショーグン債)とになる。払込み、利払い、償還のすべてが円貨建てで行われる円建て外債は、1970年(昭和45)に発行されたアジア開発銀行債が最初である。円建てなので為替リスクはない。その後、国際金融機関、外国の政府、地方公共団体、海外民間企業の発行を中心に急速な発行規模の拡大がみられつつある。その理由としては、(1)担保が不必要であること、(2)利回りが市場実勢で決まること、(3)償還期間の多様化、などがあげられる。
円以外の通貨で元本を払い込み、外貨で償還金や利息を払うことを約束している外貨債は、第二次世界大戦後では1959年にアメリカで発行された国債が最初であり、民間債は1961年に同じくアメリカで発行されたのが初めてである。その後、1970年代後半から1980年代にかけてスイス・フラン債、ドイツ・マルク債を中心に発行規模が飛躍的に増大した。とくに民間債の比重が高くなってきており、その理由としては、(1)企業が内外市場を問わず低コスト資金を追求している、(2)無担保の起債が可能、(3)経済取引の国際化に伴い為替リスクのヘッジ(自分が投資のために外債を保有している相手国において外債を発行して、為替変動の危険を回避すること)が重要になってきた、などがあげられている。従来、企業の外債による資金調達には、普通社債、転換社債、新株引受権付社債(ワラント付社債)の3種類があったが、2002年(平成14)4月1日施行の改正商法により、転換社債および新株引受権付社債(非分離型)は、新株予約権付社債に一本化された。なお、新株予約権付社債のうち、新株予約権が行使された場合には、当該行使に係る払込みにかえて当該社債の金額が償還されるもの(2002年4月の商法改正前の転換社債に相当するもの)は、転換社債型新株予約権付社債とよばれている。
歴史的には、19世紀の前半から外債の発行がみられ、その大部分は、当時イギリスが唯一の工業国であった関係上、ロンドン金融市場でなされた。19世紀後半からは各先進国の資本輸出が外債の引受けの形で行われ、第一次世界大戦後はニューヨークが外債発行市場として大きな地位を占めるようになった。第二次世界大戦後も引き続きニューヨークが外債発行の中心にあったが、1960年代後半から徐々にヨーロッパ資本市場が外債発行に大きな比重を占めつつある。とくに、1999年のヨーロッパ通貨統合により、新しい通貨計算単位として「ユーロ」が導入され、2002年より、ユーロを単位とする紙幣・硬貨が発行された。そのため、ユーロ市場の発展に対応して、ユーロ債の発行残高が急速に増加している。
[原 司郎・北井 修]
外債の通称には、その国を象徴する事物や代表的な動物、食べ物などが用いられることが多い。
アリラン債 韓国市場において起債される韓国ウォン建て債券。アリランが朝鮮半島を代表する民謡であることから、名づけられている。
カンガルー債 オーストラリアの非居住者である海外企業がオーストラリア市場に向けてオーストラリア・ドル建てで発行する債券。
キムチ債 韓国市場において発行される非韓国ウォン建て債券。
点心債 香港(ホンコン)市場において発行される人民元建て債券。
ドラゴン債 香港、台湾、シンガポールといった東アジアおよび東南アジア諸国の投資家を対象に、香港やシンガポールで発行される債券。アメリカ・ドル建てが多い。
パンダ債 中国市場において起債される人民元建て債券。
ブルドッグ債 イギリス市場において起債されるポンド建て債券。ブルドッグはイギリスで牛(ブル)と格闘させるため交配によってつくられた犬種であると同時に、第二次世界大戦中のイギリス首相であるチャーチルのあだ名がブルドッグだったことにちなむ。
メープル債 カナダ市場において起債されるカナダ・ドル建て債券。カナダを象徴し、国旗にも使用されているメープル・リーフ(カエデ)から名づけられている。
ヤンキー債 アメリカ市場において起債されるアメリカ・ドル建て債券。
[編集部]
外国債券の略で,外国債ともいう。発行者が居住者であるか非居住者であるかを問わず,自国以外で外貨(自国通貨以外の通貨)建てで発行された債券のことである。これに対し,発行者の自国内で発行された債券のことを内債(内国債とも)といい,自国通貨建て(内貨建て)が原則であるが,まれに外貨建てのものも含めることがある。外国の発行者が日本(東京市場)で発行した円貨建債券も,〈円貨建外債〉と呼ばれるように,外債の範疇(はんちゆう)にはいる。外債は日本の場合,通常つぎの3種に大別される。
(1)外貨建外国債 外国の発行者が日本円以外の通貨建てで,日本以外で発行した債券。アメリカの国債や事業債,ユーロ市場で発行されるユーロ債をはじめ,諸外国で発行される債券すべてを含む。さまざまな通貨の債券が発行されており,期限についても1ヵ月,3ヵ月といった短期のものから,30年,40年の長期のもの,はてはイギリスのコンソル公債といった償還期限のないものまである。外債というと,通常,この外貨建外国債をさすことが多い。外国の発行者が日本国内で外貨建てで債券を発行する場合がある。これも外貨建外国債であるが,国内で発行されるということで,〈外貨建外国債の国内公募〉と呼んで区別している。(2)外貨建内国債 日本の発行者(つまり居住者)が国外で外貨建てで起債する債券。ただし,発行者の国籍が日本であることに着目して,内国債に分類することもある。政府,政府関係機関,地方公共団体,民間企業が発行しており,米ドル建て,英ポンド建て,ドイツ・マルク建て,スイス・フラン建てなどがある。日本における外貨建内(国)債の初めは,1870年(明治3)ロンドンで発行された9分利付きポンド貨債であった。第2次大戦後も発行が続けられ,とくに1975年以降は,オイルマネーの還流や民間企業の資金調達多様化などを背景に,拡大傾向をみせている。(3)円貨建外国債 外国国籍の発行者が円貨建てで起債する債券。日本で発行された第1号は1970年12月発行のアジア開発銀行債である。その後,発行者も,先進諸国や開発途上国の政府,政府関係機関,国際金融機関と多様化している。民間企業では,79年3月アメリカのシアーズ・ローバック社の円貨建外債が初めてで,無担保で発行された。円貨建外債は,国内債に比べて償還期限が5~15年と多様化しており,その発行条件は発行者の信用度や流通利回りをより反映して設定されている。東京市場以外で円貨建外債が発行されたのは,1977年5月のユーロ市場での欧州投資銀行債が第1号である。このユーロ市場における円貨建債(ユーロ円債)は,円の国際化を推進することを目的とするもので,旧外為法34条に関する大蔵省令が改正されたことにより可能となったものである。
執筆者:坂本 勝三
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…狭義では,株式会社が社債について発行する社債券をいうが,広義では,発行主体のいかんを問わず用いられ,国債,地方債,金庫債,公社債,公団債などを含む。発行主体による分類のほか,担保の有無により,担保付社債と無担保社債,債券上の権利者の表示の有無により,記名債券と無記名債券(日本では,実際上すべて無記名債券である),募集地域の内外により,内債と外債(外貨表示の外債を外貨債という。ただし,円建外債は,外国,国際機関,外国企業が日本で発行する円建債をいう),利札の有無により,利付債と割引債(割引債・利付債),現実に債券が発行されているか否かにより,現物債(本券ともいう)と登録債,発行主体の性質により,金融債(金融機関が発行)と事業債(一般事業公社が発行),発行方法により,公募債(公募)と私募債(縁故債),償還期限の長短により,長期債,中期債,短期債,などに分類される。…
※「外債」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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