SDR(読み)エスディーアール

デジタル大辞泉 「SDR」の意味・読み・例文・類語

エス‐ディー‐アール【SDR】[special drawing rights]

special drawing rightsIMF国際通貨基金)加盟国がもつ、加盟国相互間で資金を融通できる制度。国際収支の悪化などに際し、自国に配分されているSDRを他の加盟国に引き渡すことにより、必要とする外貨を入手することができる。1969年に創設され、1970年から配分が始められた。特別引出ひきだし権。
[補説]SDRの価値は国際的に自由に取引できる複数の通貨の加重平均によって決定される。SDRの通貨バスケットは米ドル・ユーロ・円・英ポンドによって構成され、2016年10月から中国の人民元が加えられた。

エス‐ディー‐アール【SDR】[standard dynamic range]

standard dynamic rangeテレビ放送・映像機器・動画配信サービスなどで採用される2K相当の標準画質の規格の総称。→エッチ‐ディー‐アール(HDR)2

エス‐ディー‐アール【SDR】[software defined radio]

software defined radio》⇒ソフトウエア無線

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改訂新版 世界大百科事典 「SDR」の意味・わかりやすい解説

SDR (エスディーアール)

特別引出権special drawing rightsの略称。IMF(国際通貨基金)加盟国は,必要な為替資金をIMFからの借入れによって手当てすることができるが,1970年以降IMFを経由して他の加盟国からも必要資金を調達できるようになった。その場合,加盟国はIMFによって創出され配分されたSDRを用いて,必要な通貨を引き出すことができるのである。つまり,加盟国はIMFに対し引出権(IMF引出権)をもつと同時に,外貨準備の豊富な特定の加盟国に対しSDRをもつことになった。配分されたSDRが通貨か信用かについては議論が分かれる。しかし,金,米ドル,英ポンドなどと並んでSDRが外貨準備に加えられるのは,このSDRを使用して必要資金を調達できるからである。SDRは1968年IMF総務会の決議によりその創設が決定され,翌年発効し,70年から3ヵ年にわたり合計95億ドルが創出された。SDRの創設は1960年代初めに生じた国際通貨危機,具体的にはドルの危機と密接に関連する。ここで注意すべきは,ドル危機の認識についてアメリカと欧州諸国とで大きく異なっていたことである。アメリカはドルに対する信認の低下を認めず,むしろ国際通貨問題の中心は国際流動性の供給方法の改善にあると主張した。これに対し欧州諸国は,ドルの危機の原因をドルに対する信認の低下に求めた。ところが国際流動性と信認をドルによってともに満足のいくように両立させることは難しい。国際流動性の増加はアメリカの国際収支の赤字によってのみ可能であり,それではドルの危機が発生する。逆にドルの信認を高めるためアメリカの国際収支を黒字にすると国際流動性が不足するからである。このジレンマから脱出する方法がSDRの創出であった。しかし,ドルが危機の時期に新たに国際流動性を創出すること,またそれが部分的には返済義務を伴わない形で創出されることについて,欧州諸国は強い疑念をもった。SDR創設をめぐる交渉が長びいたのも,また1970年から3年間配分されただけで創出が停止されているのも,SDRの機能と役割について完全なコンセンサスが得られていないためである。加えて慢性的外貨不足に悩む発展途上国がSDRと開発金融とのリンクを主張したことも,SDRの創出をめぐる議論を複雑にした。SDRの使用は通貨当局および国際機関に限られる。SDRの歴史は浅く,その規模も小さいが,SDRの魅力を増すためにこれまで工夫が重ねられた。創設当時1SDRの価値は70年当時の米ドルと同じ0.888671gの純金に等しいものと定められたが,71年のドルの金交換性停止,73年の変動相場制導入以降は〈標準バスケット方式〉と呼ばれる評価方法で決められている。この方法は,主要16ヵ国通貨(世界貿易のなかで1%以上のシェアをもつ通貨)のバスケットによってSDR価値を示すため,個々の通貨に比較して安定性に優るという利点がある。またSDR利子率の決定方法も78年改正され,世界金融市場の金利変動に応じて変更されることになった。81年以降,5年間の財およびサービス輸出量が上位5位以内の加盟国通貨(米ドル,独マルク,日本円,仏フラン,英ポンド)を加重平均して決定することとされ,その後5年ごとに見直しが行われることとなった。1996年2月現在,1SDR=1.46ドル。SDRをめぐる議論は多い。しかし,これによってIMFにおける国際金融協力に新しい道が開けたことは確かである。
国際通貨制度
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「SDR」の意味・わかりやすい解説

SDR
えすでぃーあーる

国際通貨基金(IMF)の特別引出権special drawing rightsの略称。IMF加盟国が外貨不足に陥った際、アメリカ・ドルなどの国際通貨を引き出せる権利のことで、国際準備資産と位置づけられる。IMF加盟国にはIMFへの出資比率に応じて特別引出権が割り当てられ、金融・経済危機で外貨が不足した場合、特別引出権を他の加盟国に売って、アメリカ・ドル、ユーロ、日本円などにかえてもらうことが可能である。このため特別引出権は準備通貨ともよばれ、通貨単位にはSDRが用いられる。現在、特別引出権の価値はアメリカ・ドル、イギリス・ポンド、日本円、ユーロ、中国人民元の主要5通貨の貿易量に応じた加重平均(標準バスケット方式)で決められる。またバスケットのなかの各通貨の額は5年ごとに見直される。このためSDRは実在する通貨ではなく、合成通貨や暗号資産の一種でもある。特別引出権は2019年3月時点で2042億SDRが発行・配分され、その価値は2020年12月時点で1SDR=1.47638ドルである。特別引出権は政府のみが保有し、企業や個人は入手できない。

 第二次世界大戦後、世界貿易の拡大に伴って、ドルや金にかわる加盟国の準備資産を補完する目的で、1969年にIMFが特別引出権を創設した。金融・経済危機で外貨が不足した国を支援し、危機の他国への連鎖を防ぐ役割を担っている。当初、SDRの価値は金によって表示(1SDR=純金0.888671グラム)されたが、変動為替(かわせ)相場制への移行で金表示をやめ、貿易比重の大きい主要16か国の通貨価値のバスケットで決めることになった。さらに簡便化するため1981年にアメリカ、イギリス、西ドイツ、日本、フランスの通貨バスケットに改正された。1986年からは5年ごとに構成通貨を見直しており、2001年にユーロが、2016年には中国人民元が構成通貨に採用された。構成通貨になるには、(1)貿易量が多い、(2)自由に取引できる、の2条件を満たす必要がある。構成通貨に採用されれば、世界で広く使用されている国際通貨として信認されたことになる。

[矢野 武 2018年4月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「SDR」の意味・わかりやすい解説

SDR
エスディーアール
Special Drawing Rights; SDR

国際通貨基金 IMFからの特別引出権。国際流動性の不足を補填することを目的として 1970年1月に正式発効した。IMFへの出資額に応じて加盟国に割り当てられ,対価として他国から外貨または自国通貨を取得できる。当初 1SDRは 1米ドル,純金 0.888671gと等価値とされていたが,1974年7月以降,16ヵ国の通貨の為替レートを加重平均した標準バスケット方式で決定されるようになった。その後,1978年に一部通貨の入れ替えとウエイト(比率)修正を行なったのち,1981年1月からは,アメリカ合衆国のドル,日本の,ドイツ連邦共和国(西ドイツ)のマルク,イギリスのポンド,フランスのフラン(フランスフラン)の,5ヵ国の通貨による標準バスケット方式となった。各通貨のウエイトは 5年ごとに見直しが行なわれる。1999年1月,ヨーロッパ連合 EUの単一通貨ユーロの誕生により,フランとマルクに代わりユーロが構成通貨となった。また,2015年11月の見直しで中国の人民元が構成通貨に加わることが決定,2016年10月に正式に導入された。

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知恵蔵 「SDR」の解説

SDR

IMFによって創出・配分された準備資産。外貨準備不足を来した国は、IMFの指定する国にSDRを引き渡すことによって被指定国から交換可能通貨を引き出すことができる。国際流動性の不足に対応するため、金、ドルなどの準備資産を補完する目的で1969年のIMF協定改正により創出された。SDRは出資額に応じて加盟国に配分され、その価値は当初、金を基準としていたが、74年からは主要16カ国の通貨の加重平均によるバスケット方式に改められ、また81年からは、米ドル、旧西独マルク、円、仏フラン、英ポンドの5大通貨を内容とするバスケット方式に変更された(99年1月のユーロ誕生以降、独マルクと仏フランはユーロに収束)。SDRの構成通貨及び構成割合は5年ごとに見直されるが、2006年1月の見直し後のバスケットは「0.632ドル+0.410ユーロ+18.4円+0.0903ポンド」となっている。また、金利はバスケット構成通貨国の市場金利の加重平均によって決められている。

(絹川直良 国際通貨研究所経済調査部長 / 2007年)

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百科事典マイペディア 「SDR」の意味・わかりやすい解説

SDR【エスディーアール】

IMF特別引出権

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世界大百科事典(旧版)内のSDRの言及

【IMF】より

…本部ワシントン。加盟国数181ヵ国(1996年末現在),出資割当総額(IMF協定により5年ごとに見直される)は約1453億SDR(1996年末)。1944年7月アメリカのニューハンプシャー州ブレトン・ウッズでの連合国通貨会議において第2次大戦後の通貨体制(ブレトン・ウッズ体制)が合意された。…

【国際通貨制度】より

…1950年代末から始まったドル不安は,アメリカの金準備の減少とドル流出の増大の結果である。
[通貨混乱とSDR]
 各国にとって,その国際収支の赤字累積はその国の固定相場の維持を困難にする。ドル獲得のためその国の通貨を為替市場で売却するからである。…

【ドル】より


[国際通貨]
 市場経済体制あるいは資本主義体制をとる一つの経済内部において,その円滑な経済の発展にとって通貨は重要であるが,それと同様に国際経済社会においても,貿易や国際資本移動が円滑に行われるためには国際通貨が不可欠である。1995年末現在,国際通貨として世界的に用いられているものには米ドル,ユーロダラー,金,SDR(IMF特別引出権),ドイツ・マルク,円,フランス・フラン,イギリス・ポンド等があるが,ドルはこのなかで6~7割を占め,支配的地位を占める通貨である。ドルの国際通貨としての具体的役割は価値尺度のほか,決済通貨,介入通貨,準備通貨等である。…

※「SDR」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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