T細胞(読み)ティーサイボウ

デジタル大辞泉 「T細胞」の意味・読み・例文・類語

ティー‐さいぼう〔‐サイバウ〕【T細胞】

《Tはthymusで、胸腺の意》骨髄で生成されたリンパ球胸腺に移送されて成熟したもの。B細胞とともに免疫反応に重要な働きをする。Tリンパ球

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精選版 日本国語大辞典 「T細胞」の意味・読み・例文・類語

ティー‐さいぼう‥サイバウ【T細胞】

  1. 〘 名詞 〙 ( Tは[英語] thymus で、胸腺の意 ) 骨髄で生成されたリンパ球が胸腺に移送されて成熟したもの。B細胞とともに免疫反応に重要な働きをする。Tリンパ球。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「T細胞」の意味・わかりやすい解説

T細胞
てぃーさいぼう

免疫機序(メカニズム)に関与するリンパ球の一種であるが、T細胞とB細胞という形で説明するほうが適当である。なぜなら、免疫機構において重要な役割を担うリンパ球には、その起源機能とが異なる二つのグループが存在するという考え方が現在のところ支配的なためである。骨髄の幹細胞は、胸腺(きょうせん)の上皮細胞という場で、特殊な内部環境と胸腺の液性因子によってリンパ球に分化する場合と、胸腺とは無関係に骨髄でのみリンパ球に分化する場合とがあり、この両者は種種の点において異質であるため、前者を胸腺Thymus由来のリンパ球、すなわちT細胞とよび、後者を骨髄Bone marrow由来のリンパ球、すなわちB細胞と呼称している。走査型電子顕微鏡によって両者を形態学的にみると、T細胞の表面が比較的平滑であるのに反して、B細胞の表面には多数の突起があることがわかる。また、透過型電子顕微鏡による観察では、T細胞には集合性の濃密体dense bodyがあり、B細胞には散在性の濃密体のあることが注目されている。

 機能的な面からみると、B細胞は抗体グロブリンの産生に関与し、T細胞は免疫における記憶の能力を有し、B細胞に情報を与えて抗体産生を助けるとともに、細胞性免疫という舞台で主役的役割を演ずると理解されている。T細胞は、リンパ節の旁(ぼう)皮質部、および脾臓(ひぞう)の中心動脈周囲に分布しており、これらの部は胸腺依存領域とよばれている。一方、B細胞は、リンパ節の皮質、リンパ濾胞(ろほう)に局在している。さらに、T細胞は物理化学的性状、および抗原受容体の組合せによって、次のような表現型を異にした亜集団に分類される。すなわち、補助helper、増幅amplifier、障害killer、抑制suppressorなどのごとくである。これらの亜集団は、免疫細胞相互間の共同作業において、それぞれ機能の分担を行っているとの説明がなされている。

渡辺 裕]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「T細胞」の意味・わかりやすい解説

T細胞
ティーさいぼう
T cell

リンパ球の一種で,骨髄の幹細胞に由来し,胸腺で分化する免疫担当細胞。同じ骨髄幹細胞由来のB細胞と形態的に酷似する。機能をもとに4種類に分類でき,B細胞の抗体産生細胞への分化を助けるヘルパーT細胞,抑制するサプレッサーT細胞,アレルギー反応を誘発するエフェクターT細胞,標的細胞を破壊するキラーT細胞が存在する。T細胞はB細胞と違い抗体をつくらないが,抗体産生を間接的に調節する役割を担い,また,細胞性免疫の主役となっている。

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化学辞典 第2版 「T細胞」の解説

T細胞
ティーサイボウ
T cell

胸腺由来の免疫担当細胞.抗体産生の調節や不都合細胞(がん細胞やウイルス感染細胞など)の消去を行うリンパ球で,胸腺を除去すると免疫系のはたらきが弱まることから同定され,胸腺(thymus)にちなんでT細胞と命名された.ヌードマウスには胸腺がない.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「T細胞」の解説

T細胞

 Tリンパ球ともいう.胸腺由来の細胞で,Bリンパ球の抗体産生の調節,抗原となる細胞の溶解などの機能を有する.細胞表面に抗原レセプターを有する.機能によってキラーT細胞,サプレッサーT細胞,ヘルパーT細胞などと区別される.

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改訂新版 世界大百科事典 「T細胞」の意味・わかりやすい解説

T細胞 (ティーさいぼう)

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世界大百科事典(旧版)内のT細胞の言及

【胸腺】より

…魚類以上のすべての脊椎動物に存在する免疫器官。鰓囊(さいのう)に由来し,T細胞の分化の場として役だっている。どの鰓囊から生じるかは,動物進化の程度によって異なっているが,組織構造は,ヒトの胸腺と類似点が多い。…

【抗原認識】より

…それに合致する抗原が受容体に結合した場合にのみ,そのリンパ球が増殖し,分化して免疫機能を発揮するのである。リンパ球には,抗体産生細胞の前駆細胞であるB細胞群と,免疫の調節や細胞性免疫にあずかるT細胞群がある。B細胞とT細胞では抗原受容体が同じではなく,抗原認識の仕組みも異なることが知られている。…

【抗体】より

…このタンパク質が抗体である。
【抗体産生細胞】
 抗原の侵入に対する生体免疫系の反応,すなわち免疫応答の主体をなす細胞はリンパ球系の細胞であって,これは胸腺由来リンパ球(T細胞)と骨髄由来リンパ球(B細胞)に大別される。B細胞が抗体産生細胞の前駆細胞であって,抗原で刺激されると,通常T細胞の補助効果を受けながら増殖,分化して抗体を合成,分泌するようになる。…

【免疫】より

…いずれも骨髄の造血幹細胞と呼ばれる祖先細胞から分化したリンパ球と総称される細胞であるが,機能的にはまったく異なっている。一つはT細胞T cellと呼ばれる細胞で,胸腔内に位置する胸腺thymus(T細胞のTはthymusに由来する)に入って,胸腺上皮の影響下で分化した小型のリンパ球で,胸腺を経由したのちはリンパ節,脾臓などの末梢のリンパ臓器の特定の部位(胸腺依存域)に分布する。もう一つの細胞は骨髄bone marrowに由来するという意味からB細胞と呼ばれ,造血幹細胞に直接由来するもので(ただし鳥類では,総排出腔の近くにあるファブリキウス囊の影響下で分化する),末梢リンパ組織に集まった,同じく小型のリンパ球である。…

【免疫細胞系】より

…マクロファージのほとんどすべてとリンパ球は,後期胎児以後では骨髄に定着する造血幹細胞に由来する。幼若リンパ球のあるものは胸腺に移ってT細胞に分化し,またあるものは,鳥類では総排出腔近くのファブリキウス囊で,他の脊椎動物では未知のどこかで(骨髄内という説もある)B細胞に分化する。T細胞はさらに数亜群に分化しており,免疫応答一般のヘルパーT細胞あるいはサプレッサーT細胞,細胞性免疫の効果細胞などの前駆細胞になる。…

【リンパ球】より

…ガラスやプラスチック面を遊走するとき,細胞小器官のなかで核を先頭にして移動するという運動形態学的共通性を備えた血液中の細胞群の総称で,免疫過程において重要な役割をはたす。脊椎動物では,胸腺由来のT細胞thymus derived cell(Tリンパ球),および鳥類のファブリキウス囊bursa fabriciiないし骨髄bone marrow由来のB細胞(Bリンパ球)に大別される。また大きさから,小リンパ球(直径6~8μm,成熟リンパ球)と大リンパ球(直径8~16μm,小リンパ球の幼若型あるいは若返り型)に分類される。…

※「T細胞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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