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X線天文学 エックスせんてんもんがくX-ray astronomy

翻訳|X-ray astronomy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

X線天文学
エックスせんてんもんがく
X-ray astronomy

ロケットや人工衛星など飛翔体を用いて宇宙からくる X線を研究する天文学の分野。X線は地球大気を通過せず,これを観測するには大気圏外に出る必要がある。X線を放出する天体は,太陽中性子星ブラックホールなどの超高密度星,超新星残骸,電波銀河,クエーサー銀河銀河団など多岐にわたる。太陽のコロナから出る X線は 1946年に V-2号ロケットを使って検出された。太陽以外の天体から X線が検出されたのは 1962年で,今日さそり座X-1と呼ばれる超高温の天体である。それ以後,X線観測衛星が打ち上げられ定常観測が可能になり,多数の X線源が見つかった。X線観測によって,数秒周期でパルス状 X線を出す X線パルサー,数ヵ月強い X線を出して消えてしまう X線新星,不規則に数秒間強い X線を出す X線バースターなどの天体が見つかった。これらの観測は,中性子星やブラックホールの研究に飛躍的進歩をもたらした。また,近接連星系の多くが X線源であることから,連星の進化の過程が明らかにされつつある。銀河の中心核からの X線によってブラックホールやスターバーストの研究が進んだ。巨大な銀河や銀河団を取り巻いて広がる X線放射成分から,高温プラズマの分布とダークハローや銀河団の質量の研究が進められた。エネルギーが 1~数キロ電子ボルト(keV)程度の X線は,銀河系円盤やハローあるいは太陽近傍の星間ガスから放出されていることがわかり,これを使って銀河系内の温度が高く密度の低いガスの性質を調べることが可能になった。X線天文学は,電波天文学赤外線天文学と並んで宇宙の構造と進化をとらえる大きな柱となっている。

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デジタル大辞泉の解説

エックスせん‐てんもんがく【X線天文学】

太陽系外の天体から来るX線を観測し、その天体を研究する天文学の一分野。X線は大気に吸収されて地上まで届かないので、観測は人工衛星を利用して大気圏外で行われる。

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百科事典マイペディアの解説

X線天文学【エックスせんてんもんがく】

宇宙からやってくるX線を利用して天体の研究を行う天文学の一分野。1960年代初めに,米国のR.ロッシらが太陽系外の天体からやってくるX線をロケット観測によって検出したことに始まる。

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世界大百科事典 第2版の解説

エックスせんてんもんがく【X線天文学 X‐ray astronomy】

X線天文学は1962‐63年,アメリカのロッシB.Rossi,ジャコーニR.Giacconi,ガースキーH.Gursky,パオリーニF.Paoliniが観測ロケットに小さなガイガーカウンターをのせて大気圏外から太陽系外の遠い天体からくるX線をとらえたことに始まる。その後の20年間に急速な進展を見せて,光,電波の天文学に続いて天文学の大きな流れに成長した。 今日では次に述べる,あらゆる天体の階層にX線源があることが知られ,X線放射は天体のさまざまなスケールに共通した激しい活動の表現かと考えられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

X線天文学
えっくすせんてんもんがく

宇宙からくるX線を観測し、天体を研究する天文学の一分野。宇宙からくるX線は大気に吸収されて地上まで到達できない。したがって、X線を観測するためには、観測装置を大気圏外域にあげなければならない。1962年、アメリカのジャコーニたちは、ロケットにX線検出器を載せて天空を走査したところ、太陽以外の強いX線源を発見した。その後、ロケット、気球、人工衛星によって、宇宙にある種々の天体からのX線が観測された。こうして、太陽だけでなく(太陽X線は1948年に発見)、あらゆる種類の天体がX線で観測され、X線天文学という新分野が開けた。
 X線天文学によって、変動の激しい高エネルギー現象や、光では見えない部分の構造が見られるようになり、光や電波ではわからなかった宇宙像が展開された。また中性子星やブラック・ホールを伴った近接連星などの天体はX線天文学によって登場し、活動銀河や銀河団もそれらの高エネルギー領域から出るX線の観測結果によって進展し、従来の天文学は大きく書き換えられてきた。
 X線天文学の対象は、まずX線を強く出す特異な天体であった。これらは中性子星やブラック・ホールを伴った天体で、われわれの銀河系には300個ほどが知られている。これらの天体からは波長が数オングストロームのX線がもっとも強く放射されており、その観測には、これまで普通、薄膜の窓をもつガス封入式X線検出器が用いられてきた。また、個々のX線源を区別して観測するために、X線検出器の前に、視野を制限する各種のコリメーターが置かれる。
 一方、普通の星や、たとえば活動銀河のように本来強いX線を放射していても距離が遠いためにX線が弱く、雑音に埋もれて検出が困難な天体の場合は、反射方式のX線ミラー望遠鏡がX線検出器の前に置かれる。これによって雑音を少なくして弱いX線源までを観測するだけでなく、広がったX線源の像やスペクトル分析も可能になった。また、焦点面検出器は面積の小さい薄膜をもつ二次元撮像ガス比例計数管、固体撮像素子(CCDなど)、入射窓をもたないチャネルプレートなどが用いられ、X線ミラーの反射効率をあわせ0.1~10キロ電子ボルト(keV)のX線が観測の対象とされる。なお、X線ミラーでは波長が短いX線(1オングストローム以下)になると反射の効率が悪くなるため、多層膜のX線ミラーなどの開発がなされている。
 X線天文学は今日あらゆる種類の天体を対象としている。このため探索と発見の時代から発展し、X線による精密な観測に基づく星の進化と終末のシナリオや、光や電波では見えない遠い宇宙の構造の解明などが、今日のX線天文学では期待されている。なお近年では、2000年(平成12)に日本人研究者グループが、NASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)のX線天文衛星「チャンドラ」を用いた観測で「中質量ブラックホール」を発見したことや、2007年に京都大学、愛媛大学、NASAの国際共同チームが、日本のX線天文衛星「すざく」を用いた観測で、大量の物資に埋もれて見逃されていた新しいタイプのブラック・ホールを発見したなどの成果がある。[松岡 勝]
『小山勝二著『X線で探る宇宙』(1992・培風館) ▽北本俊二著『ポピュラー・サイエンス X線でさぐるブラックホール――X線天文学入門』(1998・裳華房) ▽家正則監修『21世紀の宇宙観測』(2002・誠文堂新光社)』

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