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赤外線天文学 せきがいせんてんもんがくinfrared astronomy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

赤外線天文学
せきがいせんてんもんがく
infrared astronomy

赤外線観測によって天体を研究する天文学の一部門。赤外線可視光と電波の間の波長をもつ放射線で,波長範囲は約1~200 μm 。これらは星の形成の研究には特に適した波長域である。赤外線領域は地球大気による吸収が大きいため,観測には気球,飛行機などを用いる。 1983年には赤外線天文衛星 IRASによる測光掃天観測が行われ,多くの成果をあげた。

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デジタル大辞泉の解説

せきがいせん‐てんもんがく〔セキグワイセン‐〕【赤外線天文学】

天体が放射する赤外線を観測して、恒星星雲銀河などを研究する天文学の一分野。

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百科事典マイペディアの解説

赤外線天文学【せきがいせんてんもんがく】

天体からの赤外線を観測して宇宙の研究を行う天文学の一分野。高感度の赤外線検出器が登場した1960年代から急速に発展し,暗黒星雲中の原始星の発見,極低温度(20〜100K)の天体の観測などに成果を上げている。

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世界大百科事典 第2版の解説

せきがいせんてんもんがく【赤外線天文学 infrared astronomy】

天体が放射する赤外線を観測し,宇宙を研究する天文学の一分野。1960年代に入り,半導体を使った高感度の赤外線検出器の出現とともに,赤外線による天体観測は急速に進歩した。初期の観測は,主として地上望遠鏡によって,近,中間赤外域(1~20μm)での観測を中心に行われている。赤外線は光(可視光)に比べて散乱,吸収が少ないため,暗黒星雲にうもれた原始星や銀河中心核の研究に力を発揮している。赤外線放射には,塵粒子の熱放射が関与していることが多く,宇宙におけるさまざまな階層,局面での塵粒子の存在を明らかにするとともに,その性質や生成過程に関して豊富な知識が得られるようになった。

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大辞林 第三版の解説

せきがいせんてんもんがく【赤外線天文学】

天体の発する赤外線を観測することにより、天体の研究を行う学問。比較的低温の天体が主な研究対象となる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

赤外線天文学
せきがいせんてんもんがく

波長にしておよそ1から1000マイクロメートル(1ミリメートル)の間の電磁波は赤外線とよばれるが、この赤外線を使った天体観測が1960年代から始まり、その後急速な発展を遂げている。初期の赤外線観測は主として地上から行われ、大気の吸収の少ない波長20マイクロメートル以下の近赤外、中間赤外の波長帯(大気の窓)に限られていた。厚い宇宙塵(じん)に取り囲まれているため、中心にある高温の星の光はすっかり吸収され、それを温度の低い赤外線として再放出している星(赤外線星)がこの観測によって発見され、また冷たい星間ガス(絶対温度50~60K)が収縮して温度が上がり、新しい星として生まれつつある過程(原始星の誕生)なども観測されるようになった。一方、星間塵による散乱、吸収によって見えなかった暗黒星雲の内部や、銀河系の中心領域が、透過性のよい赤外線によって見通すことができるようになり、暗黒星雲の中で若い星が群がって誕生している現場や、銀河中心には、太陽系近傍の数千万倍もの密度で星が分布している姿を明らかにした。また、銀河中心には太陽の質量の数百万倍もあるブラック・ホールがあるといわれている。
 赤外線観測は、その後、飛行機、気球などを使うことによって大気上層部で行われるようになり、大気吸収の影響の軽減が図られて、波長域が遠赤外域(100マイクロメートル付近)まで延びるようになった。その結果、さらに温度の低い天体の観測が可能になって、数十K以下という低い温度の星間塵自身からの赤外線放射も観測されるようになった。それによって、いままで、暗黒星雲(影)としてしか見えていなかった星間塵の雲が光り輝く赤外線星雲として直接観測できるようになり、銀河系の中での星間塵の組成、温度、分布などの理解が飛躍的に進むことになった。
 1983年に初めての赤外線衛星(IRAS(アイラズ))がアメリカ、イギリス、オランダ3国の共同で打ち上げられ、赤外線天文学の研究は新しい時代を迎えることになった。この衛星には観測器自身から出る赤外線を避けるため液体ヘリウムで2Kまで冷却された口径60センチメートルの望遠鏡が搭載されて、波長12、25、60、100マイクロメートルの四つの波長帯で全天のサーベイ(掃天)観測を行った。その結果、25万個を超える赤外線天体や、全天にわたる赤外線の強度マップをつくることに成功した。観測された天体のなかには、過去に惑星系の形成を行った痕跡(こんせき)を残した星や、遠赤外の異常に強い赤外線銀河などさまざまな新天体の発見が含まれている。一方、銀河系中の星間塵の詳細な分布図を描き出し、そのなかに筋状の微細な構造(シラス状構造)が存在することを明らかにするなど星間物質研究を飛躍的に発展させた。
 1989年には、アメリカ、ゴダード研究所のグループが、宇宙背景放射観測衛星(COBE)の打上げに成功し、電波観測によって発見されていたマイクロ波背景放射(いわゆる3K放射)を遠赤外、サブミリ波領域まで拡張して観測し、それが完全な黒体放射スペクトル(2.73K)を示すことを明らかにし、ビッグ・バン宇宙論に決定的な観測的証拠を与えた。また、同時に搭載されていたマイクロ波精密放射計によって背景放射に細かい(10万分の1程度)強度の不均質性があることを検出し、高温一様な初期宇宙から現在の星や銀河の群がる多様な宇宙へ分化する痕跡をみいだすなど大きな成果をあげた。
 1995年には、日本で初めての軌道赤外線望遠鏡(IRTS)が、回収型の宇宙プラットホーム(SFU)で打ち上げられた。近赤外線から遠赤外(1~800マイクロメートル)に至る広い波長域にわたって拡散状の赤外線放射の観測を行い、有機物質起源の星間塵が銀河系空間に広く分布していることを明らかにするなど貴重な成果をあげることに成功した。同年にはヨーロッパ宇宙機関(ESA)が、宇宙赤外線天文台(ISO(アイソ))とよばれる本格的な赤外線観測衛星を打ち上げ、世界中の研究者が観測に参加した。観測器には、赤外線カメラ、赤外線測光器、赤外線分光器などが搭載され、それらによってさまざまな観測が行われた。とくに、赤外線衛星としては始めて精密な分光器が使われ、水素分子をはじめ、多種、多様な原子、分子のスペクトル線の観測が行われ、宇宙空間における中性ガス雲、電離ガス雲の物理状態が詳しく調べられるようになった。大気中の水蒸気の影響をまったく受けない衛星観測であるため、宇宙空間に分布する水分子のスペクトル線の観測が初めて可能になり、星の大気、星間空間、銀河などさまざまな天体における水分子の存在形態の研究が飛躍的に進んだ。一方、固形化した水(いわゆる氷)をはじめ、二酸化炭素(CO2)の氷(ドライアイス)、その他、メタン(CH4)などの氷を含めて新種の固体物質が数多く発見されており、星間塵の組成として従来考えられていた鉱物質のもの(シリケイト、グラファイトなど)以外にも多様な固体物質が存在することが確認された。
 また、高感度の赤外線カメラ、赤外線測光器を駆使した宇宙深部のサーベイ観測が行われた結果、宇宙の始まりにおいて活発な星形成活動を行った、赤外線で明るく輝く銀河(赤外銀河)を大量に発見するなど、宇宙初期の銀河進化の研究にも新しい展望を開いた。
 一方、ハワイのマウナ・ケア山(標高4200メートル)などの高山に、アメリカのケック望遠鏡(口径10メートル)、日本の「すばる」望遠鏡(口径8.2メートル)などの大型望遠鏡が建設され、また、南半球にもヨーロッパ共同で口径8メートルクラスの大型望遠鏡が多数建設されており、地上からの赤外線観測も大きな飛躍を遂げつつある。また、21世紀初頭には、アメリカ、日本、ヨーロッパ連合(EU)が大型の赤外線衛星の打上げ準備を進めており、赤外線天文学は過去半世紀に築き上げた基盤の上に21世紀の幕開けを迎えようとしている。[奥田治之]

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