胸郭背面の上外側部にあり、体表からその外形にほぼ触れることができる三角形状の薄い扁平骨(へんぺいこつ)である。左右対称で、第2から第7肋骨(ろっこつ)間にわたって位置している。胸郭の他の骨格との直接の連絡はなく、主として筋肉によって胸郭背面に保持されている。前面は肋骨面とよび、全体として軽い凹面(くぼみ)を呈し、後面の背側面がそれに応じて後方に軽く凸面となっている。背側面で上方3分の1あたりで、肩甲棘(きょく)とよぶ細長い突起が外上方に伸びている。この肩甲棘によって背側面は上下に分けられる。上部は狭小で肩甲上窩(じょうか)、下部は広くて肩甲下窩(かか)とよぶ。肩甲棘の外側端の突出部は肩峰(けんぽう)とよび、ここにある関節面は鎖骨外側端との間で関節をつくっている。肩峰の外側縁から肩甲棘後縁に移る部分にできる突出部を肩甲角(かく)とよび、生体計測の標点となったり、肩関節脱臼(だっきゅう)の判定にもなっている。肩甲骨の周囲は3辺からなり、上縁が最短で、内側縁が最長である。内側縁と外側縁とが合する部分を外側角とよび、烏口突起(うこうとっき)と関節窩がある。関節窩は上腕骨骨頭との間で肩関節をつくっている。肩甲骨の皿状の骨体部分はきわめて薄いため、強く圧すれば骨折しやすいが、実際には厚い背筋で保護されており、骨折は比較的少ない。肩甲骨は俗に「かいがらぼね」というが、従来用いられていた肩胛骨(けんこうこつ)の「胛」に、この意味があったためである。ギリシア語でも鋤(すき)、盾、カメの甲、羽などいろいろの形に似ていることから、それぞれに関係した名称が与えられている。ラテン語の解剖学名はscapulaであるが、これは「シャベル」の意味で、古代人が土を掘るためにこの骨を使ったことからくるという。
[嶋井和世]
脊椎動物の肩帯(または前肢帯,上肢帯),つまり前肢を体幹につなぎとめる骨格の一部をなす骨。肩の背部にある。ヒトなど多くの哺乳類では,三角形の扁平な骨で,上外側角には関節窩(か)があり,上腕骨頭と肩関節を営む。後面の上部には肩甲棘という長い高い隆線が斜めに上外側に向かって走り,その末端は肩峰となって高くそびえている。関節窩の近くには,かぎ状の烏口突起が前外側に向かって突出している。肩甲骨は胸郭の背外側面に接しながら,筋の作用で前後上下に滑り動き,また回転運動を行って,上腕骨の可動性を著しく増している。たとえば肩甲骨の回転運動がなければ,上腕を上へ上げようとしても,水平にまでしか上がらないであろう。爬虫類や鳥類では,烏口突起は烏口骨という別の骨で肩甲骨とは独立している。鳥類の肩甲骨は細長い剣状の骨になっている。なお,古代中国では牛の肩甲骨が卜占に用いられた。
→骨格
執筆者:藤田 恒夫+田隅 本生
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…頭骨鎖骨clavicle胸の前面の上界をなす骨であり,一方は胸骨と関節を営み,他の一方は肩甲骨と関節でつながる。鎖骨肩甲骨shoulder blade肩の背部にある骨。鎖骨とともに上肢を体幹につなぎとめる。…
…肩甲骨と上腕骨との連結部,すなわち肩関節shoulder jointとその付近が解剖学で肩という部分であるが,俗には〈くび〉の横から肩関節のあたりまで,前方は鎖骨,後方は肩甲骨の上半あたりまで,広い範囲にわたって肩と考えることが多い。人体では,この部がほぼ直角に外方に向かって突き出しているが,肩関節そのものがまるいうえに,その表面を〈三角筋〉がおおっているから,ふくよかなまるみを帯びている。…
…またこの筋の付着につごうのよいように胸骨正中部に隆峰という突出部がある。肩帯に肩甲骨,鎖骨,烏口骨(烏喙(うかい)骨)の3骨,腰帯に腸骨,恥骨,坐(座)骨の3骨の見られる点は,爬虫類に等しい。しかし成鳥では仙椎とともにすべて融合して一体となる。…
※「肩甲骨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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