デジタル大辞泉
「肩」の意味・読み・例文・類語
かた【肩】
1 人の腕が胴体に接続する部分の上部、および、そこから首の付け根にかけての部分。「肩をもむ」「肩を組む」
2 動物の前肢や翼が胴体に接続する部分の上部。
3 衣服の、1に相当する部分。「肩にパッドを入れる」
4 物の上部のかどの部分。「肩書き」「各句の肩に番号を付ける」
5 地形・物の形などの、1に相当する部分。「道路の肩」「壺の肩」
6 山頂から少し下った所にある平らな所。「肩の小屋」
7 球などを投げる力。「肩が弱い」
8 物をかつぐ力。「足をくじいた友人に肩を貸す」
9 背負った責任。「乗客の安全は運転士の肩にかかっている」
10 新聞の一面左上端を占める記事。多くの場合、トップ記事に次いで重要とされる。→頭
11 《肩に倶生神が宿っていて、運命を支配するという俗信から》運。めぐりあわせ。
「此方等のやうな―の悪い夫婦なれば」〈鳩翁道話・一〉
[下接語]後肩・襟肩・五十肩・先肩・四十肩・半肩・一肩・路肩(がた)怒り肩・地肩・撫で肩
[類語]双肩・肩肘・肩身
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かた【肩】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 腕とからだとが続く関節の上部。
- [初出の実例]「天の香山の真男鹿の肩(かた)を内抜(うつぬ)きに抜きて」(出典:古事記(712)上)
- 「くらべこし振分髪もかたすぎぬ君ならずして誰かあぐべき」(出典:伊勢物語(10C前)二三)
- ② 獣の前脚、鳥の翼の、からだにつながっている、関節の上の部分。
- [初出の実例]「鷹〈略〉肩さきの程探り廻はりて」(出典:古事談(1212‐15頃)四)
- ③ 衣服の、肩に当たる部分。
- [初出の実例]「今年ゆく新島守が麻衣肩(かた)のまよひは誰かとり見む」(出典:万葉集(8C後)七・一二六五)
- 「おなじ色の狩衣のかたすこしおちたるに」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一)
- ④ 器物や山、道などで、人体の①に相当する部分。
- (イ) 山頂から少し下がった所で、①のように平らになった所。
- [初出の実例]「あ、あれが、N岳の肩だな」(出典:東京の三十年(1917)〈田山花袋〉KとT)
- (ロ) 鉱山で、鉱脈または鉱層の傾斜に従い、上部にある部分。
- (ハ) 魚網の部分の名称。浮標を付ける部分。
- (ニ) 律詩で、第三と第四の句。対句をなす。第五と第六の句を腰の対という。
- [初出の実例]「中間の四句に抑揚の機あり。肩の一対は、抑腰の一対は揚なり」(出典:三体詩素隠抄(1622)三)
- ⑤ 和船で、帆柱の立つ中央部(腰当船梁(こしあてふなばり)の位置)の横幅をいう。船体のほぼ最大幅にあたり、船体寸法の基準となる。また、中央部ばかりではなく各船梁位置の幅にいうこともある。〔和漢船用集(1766)〕
- ⑥ 物の上部の右側。
- [初出の実例]「但所属相定候上は自今教導筋に付差出候願伺届には必職名之肩へ神道第何部の字を記載可致事」(出典:教部省布達第一号‐明治九年(1876)一月一二日)
- ⑦ 物事のはじめ。最初。当初。→肩から。
- ⑧ 物をかつぐ力。また、物を投げる力。「肩を貸す」「肩がいい」
- ⑨ かついでいる荷物。また、その負担。責任。
- [初出の実例]「老て駕かくは其身の過去の肩(カタ)」(出典:雑俳・火燵びらき(1738))
- ⑩ 助力。ひいき。味方。→肩を持つ。
- [初出の実例]「武帝は賈皇后を廃せうとせられたれども、荀勗等がかたをして廃せられぬやうにしたぞ」(出典:寛永刊本蒙求抄(1529頃)八)
- ⑪ ( 倶生神(ぐしょうじん)が宿っていて運命を支配するという華厳経、十王経などの俗信による。この神には、男女二神があり、男神を「同名」といって、人の左肩にいて善業を記録し、女神を「同生」といって、人の右肩にいて悪業を記録するという。俗には閻魔(えんま)大王の側にいて罪人を訊問し、その罪状を記録する神とする ) 運。運命。→肩が良い①・肩が悪い①。
- ⑫ 囲碁で、一個の石に対する盤の中央寄りの斜めの位置。
- ⑬ 「かたみっか(肩三日)」の略。
- [初出の実例]「かたの客 大せつに思ふも三日福寿草」(出典:洒落本・外国通唱(1804))
- ⑭ 「かたぎぬ(肩衣)」の略。
- [初出の実例]「鹿島の事触れの形(なり)にて、白張の肩ばかり掛けて」(出典:歌舞伎・御摂勧進帳(1773)四立)
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙 駕籠などをかつぐ人数を数えるのに用いる。多く連濁で「がた」となる。
- [初出の実例]「ありし姿は忽に本大臣となって、畳よりすぐに三枚肩に乗うつれば」(出典:浮世草子・好色二代男(1684)二)
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普及版 字通
「肩」の読み・字形・画数・意味
肩
常用漢字 8画
(旧字)
8画
(異体字)
9画
[字音] ケン
[字訓] かた
[説文解字]
[字形] 象形
肩の形に象る。肩胛骨が腕に連なる骨臼部分の形と、(肉)とに従う。〔説文〕四下に「(はく)なり。に從ひ、象形」とし、(戸)に従う形を俗字とする。篆文の曰の形が骨臼。肩はよく負荷にたえるところであるから、肩任の意がある。
[訓義]
1. かた。
2. 肩におう、たえる。
3. まかせる。
4. と通じ、三歳の獣。
[古辞書の訓]
〔和名抄〕 加太(かた) 〔名義抄〕 カタ 〔字鏡集〕 ソムク・ハム・マトフ・ニナフ・カタ
[声系]
〔説文〕に声として部に(かん)、頁部に(かん)を収める。八下はまたに作り「很なり」、または頭鬢少髪、髟部のと同義。声と(間)(かん)声との間に、声義の関係があるようである。
[語系]
〔詩、斉風、還(せん)〕「竝び驅けて兩に從ふ」のkyanは。〔伝〕に「獸三なるをと曰ふ」とあり、字はまたに作り、に作る。khean、kyanも声義の近い字である。
[熟語]
肩荷▶・肩強▶・肩肩▶・肩尻▶・肩甲▶・肩胛▶・肩承▶・肩牆▶・肩随▶・肩息▶・肩帯▶・肩担▶・肩挑▶・肩任▶・肩排▶・肩背▶・肩迫▶・肩販▶・肩比▶・肩▶・肩摩▶・肩輿▶・肩▶・肩▶・肩輦▶
[下接語]
駕肩・強肩・随肩・双肩・袒肩・肩・比肩・並肩・肩・両肩・露肩
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肩 (かた)
shoulder
肩甲骨と上腕骨との連結部,すなわち肩関節shoulder jointとその付近が解剖学で肩という部分であるが,俗には〈くび〉の横から肩関節のあたりまで,前方は鎖骨,後方は肩甲骨の上半あたりまで,広い範囲にわたって肩と考えることが多い。人体では,この部がほぼ直角に外方に向かって突き出しているが,肩関節そのものがまるいうえに,その表面を〈三角筋〉がおおっているから,ふくよかなまるみを帯びている。肩関節は肩甲骨と上腕骨との間にある典型的な球関節である。その運動は多軸性で,人体で最も可動性の大きい関節である。関節窩(か)が浅いため,運動性は大きいが,よく脱臼する。肩関節の前上方には肩峰acromionという肩甲骨の突起があり,肩関節の上に触れたり見たりできる。人体計測の際に上肢長の基点とされる。この肩峰は,肩甲骨の背面を下内側から上外側へ伸びる著しい稜線〈肩甲棘(きよく)〉の上外側端にあたる。肩峰の内側面は鎖骨との関節になっている。
執筆者:藤田 恒夫
肩の文化史
解剖学的には腕の付け根が肩であるが,日常言う肩はより広い。〈肩が凝る〉〈肩をたたく〉〈肩に担ぐ〉などの肩は頸(くび)の一部である後頸部にあたるが,〈肩〉という漢字は肩甲骨を含む〈かた〉の象形〈戸〉に〈月(にくづき)〉を加えたものだから,字形からは項(うなじ)より腕の付け根までを肩とするほうが自然である。shoulder(英語),Schulter(ドイツ語),épaule(フランス語)なども同様で,いずれも原義は平たんな部分,つまり肩甲骨を指し,次いで肩を言う語となった。その肩甲骨の上部につく筋肉が肩の線をつくっているから,shoulder,Schulter,épauleなどは日常語の肩とほぼ一致している。
大プリニウスは頸がなくて左右の肩に眼がある部族のことを報告しているが(《博物誌》7巻),もちろん誤りである。ゲルマン神話中のオーディンの肩にはフギン(思考)とムニン(記憶)という2羽のカラスがとまっていて,見聞きしたすべてのことを彼の耳にささやいていた。ギリシア神話では神々の寵児タンタロスが増長の末,神々を試そうとして息子ペロプスPelopsを殺して肉料理をつくり,神々にささげた。悟った神々はだれも食べなかったが,娘の行方を捜す女神ケレスだけは他に気をとられていたためペロプスの左肩の部分を食べてしまった。後に神々が肉片を集めてつなぎ生命を吹きこんだとき,左肩の部分が不足したため,代りに象牙をはめこんだ。姉ニオベが思い上がりのゆえに女神レトの怒りに触れて夫と子たちを失って自らも石に化した話を聞いたとき,人々はニオベを怒ったがペロプスだけはニオベのために泣いて上衣を脱ぎ,左肩の象牙をあらわにはだけた。ここで左肩をはだけるのは悲しみの姿態である。一方,中国では左肩を脱ぐことを袒(たん)または左袒といい,吉事にも凶事にも行ったが,前漢の将軍周勃が呂氏一族の乱を鎮めようとしたとき,軍中に令して呂氏のためにする者は右袒し,劉氏のためにする者は左袒せよと言ったところ,全軍皆左袒した(《十八史略》)ことから,それは味方することを意味するようになった。また,謝罪のため右肩をあらわにすることを肉袒という。
古代エジプトの王(ファラオ)が昇天するときはラーとオシリスの2神の肩の上に乗ると考えられていた(ペピ1世および2世の〈ピラミッド・テキスト〉)。バッジE.A.W.Budgeはアフリカでは族長とその妻たちが従者の肩に乗って旅するのを常とすることを考えれば,ラーやオシリスの肩に乗ることも不思議ではないと言う(《オシリス》2巻)。12世紀の聖職者シャルトルのベルナールは,自分たちは小人だが巨人(すなわち古代の文化的遺産)の肩に乗っているために巨人よりも遠くまで見通せると語り,時代を経てニュートンも同じことを述べた。
アイブル・アイベスフェルトI.Eibl-Eibesfeldtは,深い毛で覆われていた人類の祖先は,毛流の方向の結果,肩の毛が逆立っており,肩幅を広く見せていたと言う(《比較行動学》)。現在も体毛の濃い人には肩に毛の束があるし,体毛が無くなった後も,男性は肩を誇張しようと服装に気を配る。ワイカ・インディアンの肩飾,日本の武士の裃(かみしも),軍人の肩章などその例であるが,肩幅の広いのが男性的だとする考えがその基礎にある(同上書)。
執筆者:池澤 康郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
肩
かた
一般的に腕(上肢)と胴(躯幹(くかん))を結合している部分の上面を、漠然と「かた」というが、解剖学的には肩峰部(肩関節の周辺部)を中心として、三角筋部、肩甲上部、肩甲間部などを含めた範囲をいい、内部には肩関節、およびこれを包んでいる肩の筋や靭帯(じんたい)などがある。肩関節は外側に突出した肩甲骨の浅い関節窩(か)と上腕骨頭との間に成立し、典型的な球関節に属する。肩関節は全身の関節のなかでもっとも可動範囲が広いため、脱臼(だっきゅう)しやすく、全身の関節の脱臼の半分は肩関節である。
外見上の肩の形をつくるのは、肩関節周囲を包む多数の筋と靭帯である。筋には、肩の丸みをつくる強大な三角筋と、肩甲骨の背面に付着している棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋、あるいは小円筋、大円筋があり、これらの筋の協力によって上腕の挙上、外側回旋、あるいは後方へ引くといった運動が可能となる。また、肩の運動は、肩関節のほかに肩鎖関節、胸鎖関節、胸壁上を動く肩甲骨の運動の協同作用によってもたらされる。
肩関節は、ほとんどあらゆる方向に運動できるが、これは肩関節が浅い球関節構造であるということのほかに、この部位の関節包(関節を包む膜)がまばらで緩く、関節間隙(かんげき)に余裕があることにもよる。たとえば肩甲骨と上腕骨とは2.5センチメートルも離れることができる。四十肩とか五十肩といって40歳代、50歳代に肩の痛みと運動障害を訴えるのは、多くの場合、肩関節周囲の靭帯や筋の炎症によっている。
[嶋井和世]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
肩【かた】
首の下から上腕に続く部分。肩関節とこれをおおう三角筋が主体となる丸いふくらみであるが,広くその付近を呼び,首の付け根まで含むこともある。三角筋の丸みの上に触れる骨の突起は肩峰と呼ぶ。肩関節は肩甲骨の外側角にある関節窩(か)と上腕骨頭との間の関節で,関節包の外側は多数の靭帯(じんたい)や腱(けん)で包まれる。球関節で,人体の中で最も広い範囲の運動が可能な関節。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
肩
ウシの半丸枝肉を胸椎部分で切断したものの頭の側の部分.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の肩の言及
【登山】より
… オーバーハングoverhang岩がひさしのように張り出した部分。 肩ヨッホJoch(ドイツ語)ともいう。山の頂上近くで肩のようにやや平らになっている稜線部をいう。…
【腕】より
… 腕の範囲のあいまいさは西欧語にもある。arm(英語),Arm(ドイツ語)は腕だが,shoulder(英語),Schulter(ドイツ語)も動物の前肢を表すことがある。チェコ語ramenoは腕と肩の両意がある。…
【皮∥革】より
…ハイドは大動物(ウシ,ウマなど)の皮で,アメリカ,カナダ規格では皮重量25ポンド(約11kg)以上のもの,スキンはそれ以下のもので,幼動物または小動物(子ウシ,ヒツジ,ブタなど)の皮をさす。ハイドはその使用目的によって原料皮,または革になったとき,サイドside(背線での半裁),ショルダーshoulder(肩部),バットbutt(背部),ベリーbelly(腹部)などに裁断されることがある(図)。 動物からはいだままの生皮は腐敗しやすいので,ただちに乾燥(乾皮),塩づけ(塩蔵皮),塩づけののち乾燥(塩乾皮),防腐剤で処理後,乾燥(薬乾皮)などの方法で保存される(仕立て,キュアリング)。…
【関節】より
…もっともヒトでは,このような滑膜性関節もある種の病変によって全体が骨化して一体となり,可動性をまったく失うことがある。なお,化石で知られるところによると,古生代の原始魚類であった板皮(ばんぴ)類のなかには,カニの脚のように関節でつながる胸びれをもつ種類(胴甲類)やコメツキムシのように頭部と肩部の骨格がちょうつがい状の関節で連結する種類(節頸類)があったが,それらの関節の構造や機能は十分明らかになっていない。【田隅 本生】
【ヒトの関節】
[関節の基本構造]
ヒトの全身には多くの関節があり,個々の関節にはそれぞれの動きに応じて形態の相違がみられるが,しかしすべての関節に共通した基本的構造がある。…
※「肩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」