貧困率(読み)ヒンコンリツ(その他表記)poverty rate

デジタル大辞泉 「貧困率」の意味・読み・例文・類語

ひんこん‐りつ【貧困率】

所得が低く経済的に貧しい状態にある人が全人口に占める割合絶対的貧困率相対的貧困率がある。絶対的貧困率は、十分な所得がないため最低限生活必需品を購入できない人の割合。世界銀行では、1日の所得が1.90米ドル相当額(貧困ライン未満で生活する人を絶対的貧困層と定義している。相対的貧困率は、国民所得分布中央値半分に満たない世帯の割合。先進国では、絶対的貧困状態ではなくても相対的貧困層となる場合がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「貧困率」の意味・わかりやすい解説

貧困率
ひんこんりつ
poverty rate

国民全体のうち、所得が低く経済的に貧しい状態にある人の割合を示す指標。貧困率には、国民ひとりひとりの所得を試算し、全国民を所得が高い順番に並べたとき、真ん中の人の所得の半分(貧困ライン)に満たない人の割合を示す相対的貧困率relative poverty rateと、生存に必要な最低限の収入を得られない人の割合を示す絶対的貧困率absolute poverty rateの2種類がある。このほか相対的貧困に該当する世帯の18歳未満の子どもの数を、子ども全体の数で割った「子どもの相対的貧困率」という指標もある。一般に貧困率は景気動向に左右されやすく、子どもの貧困率は、年金生活者を含む国民全体の貧困率より景気の影響を受けやすいとされる。日本で貧困率、子どもの貧困率という場合、相対的貧困率をさすことが多い。

 経済協力開発機構(OECD)は相対的貧困率について「等価可処分所得(世帯全体の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した数値)の中央値の半分(貧困ライン)に達しない世帯員の割合」と定義し、この計算式に従って相対的貧困率が国際比較されることが多い。日本では2009年(平成21)に、厚生労働省が2006年時点の相対的貧困率を15.7%と初めて公表し、以後3年ごとに発表している。2018年時点で、日本の相対的貧困率は15.7%と、OECD加盟国の平均値(11.7%)を上回る。子どもの相対的貧困率は14.0%と、ほぼ7人に1人が貧困状態にあることを示しており、とくに母子家庭など「子どもがいる現役世帯のうち大人が1人」の場合の相対的貧困率は48.3%と高い。低所得家庭に育った子どもが満足な教育を受けられずに貧困に陥る「親から子への貧困の連鎖」が起きているとも分析されている。ただし、相対的貧困率はあくまで国民の所得の格差を示す指標であり、OECDの計算式の可処分所得には資産が含まれておらず、日本の経済実態を反映していないとの批判がある。

 絶対的貧困率は、世界銀行が1970年代に提唱した概念で、生きていくうえで最低限必要な衣服費、食費、住居費、医療費、光熱費などをまかなえない人の割合を意味する。ただし、世界銀行が「1人1日1.9ドル未満で生活」と定義しているほか、40歳未満死亡率や成人非識字率を組み合わせた数値による定義などもあり、国・地域や国際機関によって基準がまちまちで、国際比較はむずかしい。

[編集部 2023年9月20日]

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知恵蔵 「貧困率」の解説

貧困率

所得が国民の「平均値」の半分に満たない人の割合。一般には、経済協力開発機構(OECD)の指標に基づく「相対的貧困率」を言う。ここでの「平均値」とは、世帯の可処分所得を世帯人員数の平方根で割って調整した所得(等価可処分所得)の中央値。この50%に達しない世帯員の割合が「相対的貧困率」である。
2010年10月、民主党の長妻昭厚生労働大臣が、政府として初めて貧困率を発表し、にわかに注目を浴びることとなった。07年の国民生活基礎調査(対象年は06年)を元に、OECDの計算式で算出した数値で、日本の相対的貧困率は15.7%、子ども(18歳未満)の相対的貧困率は14.2%。OECD加盟30か国の平均値10.2%を大きく上回る結果となった。また、2000年代半ばでも、OECDが発表している日本の相対的貧困率は14.9%(04年調査)で、メキシコ、トルコ、米国に次いで4番目の高い数字である。
厚生労働大臣の発表によって、この時点からさらに日本の貧困が進んでいることが浮き彫りになった。およそ日本国民の7人に1人が「貧困状態」に置かれていることになり、政府の発表は、貧困問題に積極的に取り組む決意とも解釈されるだろう。相対的貧困率15.7%に含まれる国民の中には、生存に必要な最低限の収入も得られない「絶対的貧困」者が増えている、という指摘もある。
ただし、相対的貧困率は貧窮の度合いを示すものではなく、国民の収入の格差を示す指標と見るのが妥当。格差拡大の背景には、ワーキングプアや非正規労働者の増加、長引く不況による失業者の増加があるが、高齢化の進行で単身の年金生活者が増えたという社会構造の変化も挙げられる。また、計算式の可処分所得に資産は含まれておらず、相対的貧困率が国民生活の実態をそのまま反映しているかどうかについては、疑問の声も多い。

(大迫秀樹  フリー編集者 / 2009年)

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百科事典マイペディア 「貧困率」の意味・わかりやすい解説

貧困率【ひんこんりつ】

国内における所得格差を示す指標で,しばしば国家間の貧困度合いの比較にも用いられる。絶対的な貧困度を指す概念ではなく,相対的貧困度を示している。OECDは,相対的貧困率を,世帯の等価可処分所得が,全国民の等価可処分所得の中央値に満たない国民の割合,と定義している。スウェーデン,デンマークなどの北欧をはじめ西欧諸国の多くが10%を下回り,メキシコ,トルコ,米国は17%〜18%ときわめて高い。日本は2006年現在,15.7%で,先進国では米国と並んで,貧困率の高い格差社会となっている。

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