日本大百科全書(ニッポニカ) 「Q熱」の意味・わかりやすい解説
Q熱
きゅーねつ
リケッチアの一種Coxiella burnetiiによっておこる人獣共通の熱性感染症で、1937年オーストラリアのクイーンズランドで発生した際に初めて報告されたので、地名の頭文字をとってQ熱と名づけられた。患者からは感染せず、ウシ、ヒツジ、ヤギなどの家畜からダニ類の媒介によって感染する。しかし、罹患(りかん)しているウシやヤギの乳から感染することもある。したがって、家畜に接する職業の人に多くみられる。
潜伏期は約2週間で、突然発熱し、激しい頭痛や不快感を伴い、肺炎をはじめ、肝炎、心嚢(しんのう)炎、髄膜炎などを併発することもある。クロラムフェニコールやテトラサイクリン系の抗生物質が有効である。ほとんど全世界に広がっており、日本では輸入家畜の検疫に重点を置いて予防している。汚染常在国ではダニの駆除をはじめ、感染の機会の多い畜産関係の職業の人やウシに対して不活化ワクチンによる予防が行われている。
[柳下徳雄]