維管束植物のうち散布体として種子をつくるものをいう。栄養器官の茎、葉、根はよく分化し、維管束もよく発達する。生殖器官は花として栄養器官に付属する。種子植物は被子植物と裸子植物に大別される。被子植物では限定成長を行う短枝上に雌蕊(しずい)(雌しべ)、雄蕊(雄しべ)が生じ、萼片(がくへん)、花弁などの花被(かひ)で保護され、他の栄養器官から独立して受粉に都合よくまとまっている。胚珠(はいしゅ)は子房に包まれ、中に胚嚢(はいのう)をつくる。受精後、胚珠は種子になり、子房は果実となる。種子植物の成熟した種子は種皮、胚乳、幼植物からなるが、この栄養源は珠柄(しゅへい)の維管束を通して親植物から摂取するか、または胚乳や珠心組織、珠皮の一部を破壊して吸収する。被子植物の成熟した種子は幼植物を中にもったまま一時休眠し、水分や温度など適した条件が与えられると発芽し、種子内の養分で成長する。裸子植物では種子は成熟しても胚はまだ分化していないため、休眠せずに発生を続ける。種子植物では、普通、発芽後最初に出る葉は子葉で、その数は種属によって一定であるし、形態も普通葉とは異なる。また、幼植物では茎の反対側から根が形成され、初生根となるが、これはすぐ枯死して不定根となるものが多い。種子植物は、成長した植物がよく側枝を分枝すること、二次肥大成長を行う潜在能力をもつこと、茎は、普通、真正中心柱であることなどから、本来は樹木であったと考えられる。
[杉山明子]
種子をつくる植物群の総称。裸子植物と被子植物を含み,かつては顕花植物といわれた。古くは植物界を花の有無により顕花植物と隠花植物に二大別した(アイヒラーA.W.Eichler,1883)が,ホフマイスターW.Hofmeisterの〈花は茎頂に胞子葉が密生したもの〉という定義(1851)に従えば,隠花植物に属するシダ植物の中でも,ヒカゲノカズラやトクサは一種の花(胞子囊穂)をもつことになり,隠花植物と顕花植物との境界がはっきりしなくなる。そこで,種子を標徴として分類し,かつての顕花植物を種子植物と呼び換えることにした(本田正次,1930)。しかし花の有無といい,種子の有無といい,いずれも進化のレベルを示す形質にすぎず,種子植物という分類群も必ずしも系統的な自然群とはいえない。
→維管束植物
執筆者:西田 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…比較器官学の立場から花は〈茎頂に胞子葉が密生したもの〉と定義づけられるので,隠花植物に属するシダ植物の中にも一種の花を咲かせるものがあることになる(例,ヒカゲノカズラ,トクサ)。このため顕花植物と隠花植物の区別が厳密には不可能であると考える立場から,種子の有無により種子植物と胞子植物に分類する法が提唱された。現生植物に関する限り,種子植物は裸子・被子植物のみを含み,明確に定義づけられる。…
…この定義によれば隠花植物に属するシダ植物中のトクサ類,ヒカゲノカズラ類の胞子囊穂(いわゆる穂)も一種の花とみなすことができ,そうなるとシダ植物の中にも花をもつものがあることになり,顕花・隠花植物の区別が厳密には不可能になる。このため顕花植物に代わり,種子をもつものということで,現在では種子植物の語が用いられるようになった。隠花植物【西田 誠】。…
…無種子維管束植物というまとまりで認識されたもので,系統的な単位ではない。 以下の5門がいわゆる種子植物である。配偶体が極端に退化して胞子体の胚珠の組織に寄生する。…
※「種子植物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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