日本大百科全書(ニッポニカ) 「VAN」の意味・わかりやすい解説
VAN
ばん
Value Added Networkの略。付加価値通信網ともいう。東日本電信電話(NTT東日本)、西日本電信電話(NTT西日本)などの電気通信事業者から回線を借り、高度な通信処理機能など付加価値をつけて第三者に再販売するネットワーク。もともとは異機種を含む多種多様なコンピュータを効率よく接続するという考えから生まれたネットワーク概念である。付加価値ということばが使われているが、基本となるのは通信処理と回線の効率化である。通信処理はプロトコル(通信手順)変換、コード(データを表す記号)変換、フォーマット(データの並び順)変換、速度(データの流れの速さ)変換、メディア(文字・画面など)変換である。効率化は、回線を多重化したり、データを小分けして伝送するパケット交換によったりして回線の使用効率を高め、通信コストを下げるという機能である。そのほか、最近は情報処理、情報提供などを行うシステムなども登場し、VANの概念が非常に広くなってきている。
VANの発祥地は1970年代初めのアメリカである。アメリカでは通信と情報処理を分けるという政策があって、通信事業者であるATT社がこのようなサービスを提供できなかったという背景もあってVANが生まれた。世界的に発展し始めたのは1980年代に入ってからで、日本でも1980年代にVAN構築の機運が高まり、1982年(昭和57)にまず中小企業向けVANが認可された。さらに1985年に通信の自由化が行われ、回線の再販売も自由になった。これ以降、VANは急速な勢いで伸びた。1987年には日米間の国際VANが自由化された。VAN事業は、回線を自ら保有している第1種電気通信事業者から回線を借りる第2種電気通信事業と位置づけられた。
[速水澄男]
2004年(平成16)の電気通信事業法改正により、第1種、第2種の区別がなくなったこと、またインターネットが主流になったことなどから、現在ではVANはあまり使われていない。
[編集部]