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仮名草子。2巻。作者未詳。刊記は延宝8年(1680)。初刊はこの5年前か。都西山の木阿弥というすりきり(無一物)が,困窮のあまり江戸に下って大名に近づいて出世しようと古紙子(かみこ)一枚で旅立ち,東海道を下って江戸に着く。金六町の知人に大金持と偽って寄宿。歌舞伎見物の帰途大金を拾い,太鼓持の案内で新吉原で遊興,高尾太夫と同衾(どうきん)するに至るが寝返りとともに夢がさめて,もとの西山の陋居。これが〈もとのもくあみ〉という語の始まりという。竹斎,楽阿弥などと同じような世間逸脱者の遍歴談で,〈邯鄲一炊(かんたんいつすい)の夢〉のパロディであるが,古歌もじりの狂歌や東海道道行文,歌舞伎役者揃え,遊里案内などを織りこんで好色本に近く,近世風俗とその気分が濃く漂う。なお,〈もとのもくあみ〉の成句の由来には諸説がある。
執筆者:浮橋 康彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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