改訂新版 世界大百科事典 「兵役法」の意味・わかりやすい解説
兵役法 (へいえきほう)
昭和期の兵役義務について定めた法律。徴兵令の全面改正の形式で制定され,1927年4月に公布された。徴兵令との形式上の相違は,従来の徴兵令・陸軍召集条例・海軍召集条例を統合した法律とし,兵役義務に関する総合的な単一法としたこと,青年訓練・学校教練など義務教育にも兵役義務にも属さない軍事教育の成績が兵役上の特典というかたちで兵役法にとりこまれて軍事教育の準義務化がはかられたこと,兵役関係の戸籍記入によって国家総動員との連係が企図されたことである。
兵役法は帝国憲法の臣民義務としての兵役義務を戸籍法の適用を受ける(したがって皇族,朝鮮人,台湾の旧中国人と原住民を除外)男子に限定し(このため第52議会で兵役法違憲の質問が行われた),徴兵忌避の罰則を大幅に強化した。徴兵令との内容上の相違点は,現役4年(海軍3年),予備役5年4ヵ月(海軍4年),青年訓練所の課程を修了した歩兵は現役在営を6ヵ月短縮,第1補充兵役の教育召集期間を120日以内に延長したこと,外国在住者に在住期間中の徴集延期を認め開拓移民の奨励としたこと,1年志願兵を幹部候補生と改称し,資格者を学校教練の修了者に限り,1933年に在営中の経費自弁制を廃して予備役初級士官・下士官の大量養成制度としたこと,師範学校卒業生の1年現役兵制を5~7ヵ月の短期現役兵制に改めたことなどである。日中戦争開始以後,38年春に歩兵2年在営制復活,幹部候補生の2年現役制,朝鮮人の特別志願兵制が定められ,秋には現役の無期限延長が行われた。39年の改正で補充兵役の5年延長,抽選方式廃止,短期現役制廃止,41年の改正で後備役を廃して予備役にくりこみ,43年春には朝鮮人に,秋には台湾(実施は1945年)に徴兵制を適用し,学生への徴集延期制が特例を除いて廃止され,兵役上限年齢を満45歳に引き上げ,年末には徴兵適齢を満19歳に引き下げた。
執筆者:大江 志乃夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報