地震に関する調査や研究を行う政府の組織で、本部長は文部科学相。「地震本部」や「推本」と略される。1995年の阪神大震災を教訓に設置された。施策の立案や調整を担当する「政策委員会」と、将来起きる地震や津波の危険性などの情報を取りまとめる「地震調査委員会」が設置され、大学教授や有識者がメンバーを務める。2002年には、揺れの割に大きな津波を伴う「津波地震」が、太平洋側の東北沖で「30年以内に20%程度の確率で発生」との評価をまとめた。
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1995年(平成7)の阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)の後に成立した地震防災対策特別措置法に基づいて、同年7月に文部科学省に設置された特別の機関。文部科学大臣が本部長を務め、関係省庁の次官級の職員が本部員として参画し、本部会が開かれるときには、気象庁長官、国土地理院長が常時出席者として参加することになっている。本部は地震防災対策の強化、とくに地震による被害の軽減に役にたつ地震調査研究の推進を主たる任務としている。具体的には、(1)総合的かつ基本的な地震調査研究のための施策の立案、(2)関係行政機関の予算等の調整、(3)総合的な調査観測計画の策定、(4)関係行政機関、大学等の調査結果等の収集、整理、分析および総合的な評価、(5)上記の評価に基づく広報、の五つの役割を担っている。
本部には政策委員会と地震調査委員会が設けられ、(1)から(3)までを主として政策委員会が、(4)(5)を地震調査委員会がおもに分担している。地震調査委員会では日本列島の地震活動を検討評価する定例会議を毎月開催するほか、被害を伴う地震が発生した場合には、臨時の会議を開催し、検討を行っている。また調査委員会には、地震防災対策に役にたつ知見を集めるため、長期的な観点からの地震発生可能性を評価する長期評価部会、強震動予測手法の検討や強震動の評価を行うための強震動評価部会、津波の予測手法の検討を行う津波評価部会、その他のテーマごとに小委員会や分科会を設け、調査検討を行っている。それらの検討の成果として、特定の活断層による「震源断層を特定した地震動予測地図」、地震を特定せず一定の期間に震度6以上の揺れにみまわれる確率を示す「確率論的地震動予測地図」などが公表されるようになった。これらの予測は、未知の活断層によっておこされた2004年(平成16)の新潟県中越地震や2008年の岩手・宮城内陸地震、マグニチュード9の2011年東北地方太平洋沖地震のような超巨大海溝型地震の予測など個別の事例には役だっていないが、長期的な視点で地震防災対策を進めるうえでの指標としての役割が期待されている。
地震調査研究推進本部の前身は、1974年(昭和49)に設置された地震予知研究推進連絡会議と、それを引き継ぎ1976年に科学技術庁に設置された地震予知推進本部である。地震予知推進本部は、地震予知研究の推進を主たる任務としていたが、1995年の阪神・淡路大震災により、地震予知に関する調査研究の成果が地震防災に十分活用されていないことが明らかとなり、地震防災を中心とした調査研究に軸足を移した体制への変更が行われた。地震調査研究推進本部の発足により、それまで大学・機関別にばらばらに行われていた地震観測データの一元的な収集やデータの公開流通が促進され、多くの研究者が利用できるようになったことは、大きな前進である。
地震調査研究推進本部の地震調査委員会のような地震活動の検討・評価を行う組織として、ほかに国土地理院長の諮問機関である地震予知連絡会、東海地震予知のための地震防災対策強化地域判定会(気象庁が開催)がある。地震予知連絡会は、地震予知推進本部の時代には全国の地震活動の評価を行う役割を果たしてきたが、その役割は地震調査委員会に移行し、現在では地震予知に関する研究課題を個別集中的に検討・議論する学者や行政機関関係者の情報交換の場となっている。地震防災対策強化地域判定会の定例会では、東海地震の予知を目ざして観測データの分析を行っており、その分析結果は地震調査委員会に資料として提出されるなど、役割の分担と連携が図られている。
[浜田信生]
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