日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
地震防災対策強化地域判定会
じしんぼうさいたいさくきょうかちいきはんていかい
1978年(昭和53)に成立施行された大規模地震対策特別措置法に基づき、地震防災対策強化地域として指定された東海地方を中心とする地域に、大規模な地震の発生のおそれがあるかどうかを判定するために設けられた、学識経験者で構成される気象庁長官の私的諮問機関。略称、判定会。判定会の任務は、地震関係の各種観測データを検討し、地震防災対策強化地域に大規模な地震の発生のおそれがあるかどうかを事前に判定(予知)することにある。判定会が大規模な地震の発生のおそれがあると判断した場合は、気象庁長官はその結果を内閣総理大臣に地震予知情報として報告し、内閣総理大臣は防災措置を目的とした警戒宣言を発令する仕組みになっている。
判定会の招集は、気象庁が観測データに異常を認めたときに行われることになっているが、2017年(平成29)5月現在まで招集の基準に達する異常が観測されたことはない。判定のためには日頃から観測データの状況を分析把握する必要があるため、委員に加え、各種観測データを所管する気象庁、国土地理院、防災科学技術研究所、産業技術総合研究所の関係職員が参加する定例の勉強会、判定委員打合せ会が毎月開催されている。従来は判定会と判定委員打合せ会を区別していたが、2011年からは両者を区別せず判定会と呼称するようになった。
判定会発足当初は、地震予知情報に関する判断のみが判定会の任務であったが、その後の検討、変遷を経て、現在では、観測される異常現象の程度に応じて、「東海地震に関連する調査情報」「東海地震注意情報の発表を判断する任務」も付け加えられた。判定会委員には、東京大学地震研究所教授を中心とした地震学者が委嘱されており、約6名の専門家で構成される。
判定会発足後の地震学研究の進展の状況をかんがみると、実際に東海地震を事前に予知することには技術的にみて困難という認識が地震学者の間では大勢となっているが、観測データを解析、分析する努力の積み重ねの必要性は変わらないことから、判定会のような機能と役割を果たす仕組みは今後も維持されると考えられる。
[浜田信生 2017年6月20日]