「駿河(するが)湾西部から浜名湖沖までの遠州灘(えんしゅうなだ)の東半分、浜名湖以東駿河湾までの静岡県の内陸部」を震源域として、近い将来発生すると考えられているマグニチュード(M)8級の巨大地震。この領域ではおよそ100~150年おきに巨大地震が繰り返しおこってきたが、安政東海地震(1854年、M8.4)以来150年間おこっていない。しかし、駿河湾沿いの地盤の沈降など、地殻変動は続いており、地震発生に向けて、ひずみの蓄積は進んでいるものと考えられている。この地震については、予想震源域の一部が内陸にかかり、観測する態勢を整えれば前兆現象をとらえることにより、技術的に地震発生の予知が可能だとされている。そのため1979年(昭和54)には、東海地震が発生した場合、大きな災害が予想され、早急に防災対策を強化しなければならない地域(地震防災対策強化地域、略称は強化地域)として、静岡県全県をはじめ神奈川、山梨、長野、岐阜、愛知の6県にわたる170市町村(当時)が、大規模地震対策特別措置法に基づいて指定された。この地域には、地震計、体積ひずみ計など各種の観測施設が集中的に整備され、気象庁により常時監視されている。観測データに異常が現れた場合、東海地震との関連について科学的な検討を行うため、気象庁長官の私的諮問機関である地震防災対策強化地域判定会が設置されており、検討の結果、東海地震発生のおそれがあると判断された場合には、大規模地震対策特別措置法に基づき、気象庁長官が内閣総理大臣に地震予知情報の報告を行い、内閣総理大臣は警戒宣言を発する体制が整えられている。
東海地震は、安政東海地震の震源域のうち、1944年(昭和19)の東南海地震では破壊されないで残った領域を震源域として発生するものと考えられ、当初は、駿河トラフ沿いの比較的狭い領域が震源域として想定されていた。その後、研究も進み新しい知見も得られるようになり、1944年東南海地震の震源域もより詳細に推定できるようになったことから、2001年(平成13)には中央防災会議に「東海地震に関する専門調査会」が設けられ、改めて想定東海地震の震源域等について検討が行われた。その結果、想定震源域が西の方に広げられ、2002年4月、新たに名古屋市、三重県伊勢(いせ)市、長野県諏訪(すわ)市、東京都三宅(みやけ)村など96市町村が強化地域に追加指定された。その後の市町村合併により市町村の数は減少しているが、指定範囲はそのままで、2012年4月時点で8都県157市町村が強化地域として指定されている。
なお、東海地震に関する監視体制が敷かれて30年以上が経過したことから、次の東海地震は単独で発生するのではなく、その西側の東南海地震や南海地震など南海トラフ沿いの他の地震と連動して発生するのではないかとの見方が、研究者の間では強くなりつつある。
[長宗留男・浜田信生]
『浅田敏著『関東・東海地震と予知』(1984・岩波書店)』▽『名古屋大学災害対策室編著『東海地震がわかる本』(2003・東京新聞出版局)』▽『『東海地震対策大綱』(2003・内閣府)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
(阿部勝征 東京大学教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…この観測網は密度および質において世界でも最も充実したものである。東海地震について前兆現象が観測できるかどうかについては,この地震の兄弟ともいうべき1944年の東南海地震の直前に著しい前兆的地殻変動が2~3日前から急速に増加したという例があるので有望である。このようにして,日本でも地震予知は実用化に向けて確実に一歩を踏み出した。…
※「東海地震」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新