1965年(昭和40)~1967年の松代(まつしろ)群発地震や1968年の十勝沖(とかちおき)地震を契機として、翌1969年4月、地震予知の実用化を求める社会の要請にこたえるため設置された連絡機関。地震予知に関する最新情報の交換、各種観測資料の能率的な解析、地震の前兆的変化の有無について総合的判断を行うため、年4回、大学をはじめとする各省庁諸機関の観測データが集められ検討される。また、必要に応じて地域ごとの部会も開催される。討議の内容は連絡会後の記者説明会を通して一般に公表される。連絡会は会長を含む委員30名で構成され、事務局は国土交通省国土地理院に置かれている。
1978年に(1)過去に大地震があって最近おきていない地域、(2)活構造地域、(3)地殻活動が活発な地域、(4)東京など社会的に重要な地域、などの選定基準に基づき、観測強化地域(南関東と東海地域)と全国8か所の特定観測地域(北海道東部、秋田県西部・山形県西北部、宮城県東部・福島県東部、新潟県南西部・長野県北部、長野県西部・岐阜県東部、名古屋・京都・大阪・神戸地区、島根県東部、伊予灘(いよなだ)および日向灘(ひゅうがなだ)周辺)が指定された。しかし、1995年(平成7)の阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)を契機に高密度な観測態勢が全国的に整備されてきたこと、被害地震はこれらの地域に限定できないことなどから、「特定観測地域」と「観測強化地域」を重点観測する意義は少なく、2008年(平成20)に廃止された。東海地震に関しては「大規模地震対策特別措置法」のもとに、気象庁長官の諮問機関として「地震防災対策強化地域判定会(略称、判定会)」が設置されている。
地震予知連絡会とは別に、阪神・淡路大震災を契機として、地震調査研究推進本部が当時の総理府に設置された。これはその後2001年の省庁再編に際して文部科学省に移され、文部科学大臣が本部長となった。地震調査研究推進本部は基本的な施策の推進、関係行政機関の予算などの調整、調査観測計画の策定、関係行政機関、大学などの調査結果の収集、整理、分析、評価などをおもな任務とし、日本政府としての公式の地震情報の公表を行うことになった。これにより、地震予知連絡会は本来の設立趣旨である地震予知の実用化を推進するという目的に重心を移し、地震による災害の軽減に寄与するため、日本全国の地震活動、地殻活動などについて情報交換を行い検討する本会議と、必要に応じて個別的あるいは緊急的テーマについて検討する部会によって活動している。そのなかで、短期的・長期的スロースリップ、広域的な地震活動の静穏期・活動期の存在など、地震予知研究にとって興味深い現象や問題などを「重点検討課題」として選定し、検討が行われている。それらの内容は会報やホームページを通して公表されている。火山噴火に関しては「火山噴火予知連絡会」(事務局国土交通省)が設けられている。
[脇田 宏]
地震予知に必要な観測を分担する各機関が資料を持ちよって検討する委員会。日本の地震予知計画は1965年度に発足し,国の予算措置がとられるようになったが,1968年十勝沖地震を契機として,予知の実用化への道を早く開くために,この連絡会が建設省国土地理院に設けられた。連絡会は別な省庁に属する諸機関の協力により成り立っていて,データの収集や分析に関し大きな成果をあげ,この会が発行する会報はデータの宝庫として内外の研究者に珍重されている。公式には国土地理院長の私的諮問機関にすぎないが,連絡会開催後の記者会見などを通して国民と深いつながりを持つようになった。連絡会が行った判断の行政面への反映は科学技術庁に設けられた地震予知推進本部(部長は科学技術庁長官,部員は関係各省庁の事務次官)が行う。
執筆者:萩原 尊礼
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(阿部勝征 東京大学教授 / 2007年)
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