日本の弦楽器。〈たいしょうきん〉とも。大正の初め,名古屋の月琴奏者川口音海(仁三郎)こと森田伍郎が創案。二弦琴にピアノの鍵盤装置を応用,タイプライターないしレジスターなどの押しボタンを取り付けて,これを左手で押すことによって,弦を上部に取り付けた譜板に押し付けさせ,半音間隔の音列を容易に出すことができるようにしたもの。開放弦を低いソとして,以下押しボタンに,#5,6,#6,……と数字譜を記し,高いソ(5)まで2オクターブにわたる。弦は,2本同律の金属弦で,左端を金属製のピンにとめ,そのピンをねじって調律する。全長44cm程度。右手の義甲で撥弦する。二弦琴に代わって,大正期に流行,芝居や寄席の下座にまで用いられた。東南アジア,インド,ハワイ,アフリカなどにまで輸出され,それらの地域では,日本のコトといえば,この大正琴を指す場合もある。インドではブルブルタラングbulbultaraṅgとかバンジョーbanjoなどとも呼ばれ,イスラム教の賛歌の伴奏にまで用いられたことがある。
執筆者:平野 健次
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日本の箱型撥弦(はつげん)楽器。「たいしょうきん」ともよばれる。大正初期、月琴(げっきん)奏者の森田俉(ごろう)が二絃琴(にげんきん)を改造したもので、全長約60センチメートル、幅約15センチメートルの胴に同音に調律した2本の弦を張り、その上にピアノの鍵盤(けんばん)を模した押しボタンが半音階で約二オクターブ分、配列される。のち3~9弦のものもつくられた。左手で押しボタンを操作し、右手の義甲で弦をはじき単旋律を奏する。ボタンに付された数字を頼りに容易に演奏でき、かつ安価であるため大正期には全国的に流行したが、しだいに下火となった。インドなどにも伝わり、イスラム教賛歌の伴奏に使われた。
[藤田隆則]
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大正初期,名古屋の月琴奏者の森田伍郎(芸名川口仁三郎)が創案した弦楽器。二弦琴にピアノの鍵盤装置を応用した構造。長さ約60cm,幅約12~15cm。タイプライター状のキーを左指でおさえ,右手にもった爪で撥弦する。のちに3~9弦のものも作られ,現在に広く普及するのは五弦。インドをはじめアジア各地に輸出された。
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…二弦琴に代わって,大正期に流行,芝居や寄席の下座にまで用いられた。東南アジア,インド,ハワイ,アフリカなどにまで輸出され,それらの地域では,日本のコトといえば,この大正琴を指す場合もある。インドではブルブルタラングbulbultaraṅgとかバンジョーbanjoなどとも呼ばれ,イスラム教の賛歌の伴奏にまで用いられたことがある。…
…ただし,2弦はすべて同律に調弦されるので,複弦の一弦琴とみなすこともできる。八雲琴(やくもごと),竹琴(ちつきん),東流(あずまりゆう)二弦琴があり,大正琴(たいしようごと)もそれらの改良楽器である。二弦琴に1弦を加えて3弦としたものに,大和琴(やまとごと)または初瀬琴と称するものや,田村竹琴創案の竹琴などがあったが,伝承は絶えている。…
※「大正琴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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