大正琴(読み)タイショウゴト

デジタル大辞泉 「大正琴」の意味・読み・例文・類語

たいしょう‐ごと〔タイシヤウ‐〕【大正琴】

大正初期、名古屋森田伍郎が考案した弦楽器。長さ約60センチ、幅約15センチの木製の胴に金属弦2本を張り、音階を表示した丸いけんをつけたもの。左指で鍵を押さえ、右手の義甲で弾く。その後、3~9弦のものが作られ、現在は5弦が多用されている。

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精選版 日本国語大辞典 「大正琴」の意味・読み・例文・類語

たいしょう‐ごとタイシャウ‥【大正琴】

  1. 〘 名詞 〙 大正初期、名古屋の月琴奏者森田伍郎が創案製作した簡易な和楽器。長さ約六〇センチメートル、幅約一二センチメートルの木製中空の胴に二本の金属弦を張り、音階を数字で表記した簡単な鍵盤を左指で押え、右手に持った小さな義甲(ピック)で二弦を同時に弾く。
    1. [初出の実例]「私達が『大正琴(タイシャウゴト)』といふ名で覚えてゐる楽器も」(出典浅草紅団(1929‐30)〈川端康成〉一)

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改訂新版 世界大百科事典 「大正琴」の意味・わかりやすい解説

大正琴 (たいしょうごと)

日本の弦楽器。〈たいしょうきん〉とも。大正の初め,名古屋の月琴奏者川口音海(仁三郎)こと森田伍郎が創案。二弦琴ピアノの鍵盤装置を応用,タイプライターないしレジスターなどの押しボタンを取り付けて,これを左手で押すことによって,弦を上部に取り付けた譜板に押し付けさせ,半音間隔の音列を容易に出すことができるようにしたもの。開放弦を低いソとして,以下押しボタンに,#56,#6,……と数字譜を記し,高いソ(5)まで2オクターブにわたる。弦は,2本同律の金属弦で,左端を金属製のピンにとめ,そのピンをねじって調律する。全長44cm程度。右手の義甲で撥弦する。二弦琴に代わって,大正期に流行,芝居や寄席の下座にまで用いられた。東南アジア,インド,ハワイ,アフリカなどにまで輸出され,それらの地域では,日本のコトといえば,この大正琴を指す場合もある。インドではブルブルタラングbulbultaraṅgとかバンジョーbanjoなどとも呼ばれ,イスラム教の賛歌の伴奏にまで用いられたことがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大正琴」の意味・わかりやすい解説

大正琴
たいしょうごと

日本の箱型撥弦(はつげん)楽器。「たいしょうきん」ともよばれる。大正初期、月琴(げっきん)奏者の森田俉(ごろう)が二絃琴(にげんきん)を改造したもので、全長約60センチメートル、幅約15センチメートルの胴に同音に調律した2本の弦を張り、その上にピアノの鍵盤(けんばん)を模した押しボタンが半音階で約二オクターブ分、配列される。のち3~9弦のものもつくられた。左手で押しボタンを操作し、右手の義甲で弦をはじき単旋律を奏する。ボタンに付された数字を頼りに容易に演奏でき、かつ安価であるため大正期には全国的に流行したが、しだいに下火となった。インドなどにも伝わり、イスラム教賛歌の伴奏に使われた。

[藤田隆則]

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百科事典マイペディア 「大正琴」の意味・わかりやすい解説

大正琴【たいしょうごと】

日本の楽器。大正初年に名古屋の森田伍郎が考案。金属弦の二弦琴に半音間隔でタイプライター式の丸いキーをつけたもの。左手でキーを押し,右手のピックで弾奏する。安価で,演奏も容易なので一時普及したが,近年,生涯教育の観点からその効用が見直され,とくに中高年層のあいだで再流行のきざしがある。インドなどにも伝わり,ブルブルタラング,バンジョーなどと呼ばれている。
→関連項目カッワーリーターラブ

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音楽用語ダス 「大正琴」の解説

大正琴

琴というよりはスチール・ギターに近い。1912年(大正元年)、名古屋の発明家・音楽家の森田吾郎が制作。長さ約60cm、幅12~15cmの胴に2本の金属弦が張られ、タイプライターに似たキーが装着されている。左手でキーを押し、右手に持ったピックで弦をはじいて演奏する。奏法の容易さ、値段の安さ、また店頭でのデモンストレーション演奏や即席のレッスンなど積極的な宣伝活動、さらに楽器を持つことが豊かさのシンボルになった当時の風潮もあって爆発的に流行した。昭和10年代以降一時低迷したが、古賀政男のいわゆる古賀メロディーとともに再び人気が出た。独奏のほかにソプラノ、アルトなど音域の違う楽器による合奏も盛ん。哀調を帯びた音色で、流行歌や民謡のほか、西洋音楽も演奏される。現在では電子大正琴も製造されている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大正琴」の意味・わかりやすい解説

大正琴
たいしょうごと

日本の楽器。大正初期,名古屋の森田伍郎が発明した弦楽器。東流二弦琴 (あずまりゅうにげんきん) にタイプライタのキーに似た鍵をつけたもの。長さ約 60cm,幅約 12cmの漆塗り木製の胴に2本の金属弦 (同音に調律) を張り,半音の間隔で鍵を取付ける。左手でこの鍵を押え,右手に持った義甲 (ピック) で弦を弾奏する。音域は約3オクターブ。奏法が容易なために一時全国的に流行した。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「大正琴」の解説

大正琴
たいしょうごと

大正初期,名古屋の月琴奏者の森田伍郎(芸名川口仁三郎)が創案した弦楽器。二弦琴にピアノの鍵盤装置を応用した構造。長さ約60cm,幅約12~15cm。タイプライター状のキーを左指でおさえ,右手にもった爪で撥弦する。のちに3~9弦のものも作られ,現在に広く普及するのは五弦。インドをはじめアジア各地に輸出された。

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日本文化いろは事典 「大正琴」の解説

大正琴

大正時代に名古屋で生まれた楽器で演歌の演奏などに使用されます。数字で表された音階ボタンを押すだけで弾く事ができるので、誰でも容易に楽しめる楽器として広く普及しました。

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世界大百科事典(旧版)内の大正琴の言及

【大正琴】より

…二弦琴に代わって,大正期に流行,芝居や寄席の下座にまで用いられた。東南アジア,インド,ハワイ,アフリカなどにまで輸出され,それらの地域では,日本のコトといえば,この大正琴を指す場合もある。インドではブルブルタラングbulbultaraṅgとかバンジョーbanjoなどとも呼ばれ,イスラム教の賛歌の伴奏にまで用いられたことがある。…

【二弦琴】より

…ただし,2弦はすべて同律に調弦されるので,複弦の一弦琴とみなすこともできる。八雲琴(やくもごと),竹琴(ちつきん),東流(あずまりゆう)二弦琴があり,大正琴(たいしようごと)もそれらの改良楽器である。二弦琴に1弦を加えて3弦としたものに,大和琴(やまとごと)または初瀬琴と称するものや,田村竹琴創案の竹琴などがあったが,伝承は絶えている。…

※「大正琴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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