押え(読み)オサエ

デジタル大辞泉 「押え」の意味・読み・例文・類語

おさえ〔おさへ〕【押(さ)え/抑え】

物が動かないように押さえること。また、押さえるもの。「石で―をする」「飛ばされないように紙に―を置く」
勢いを防ぎ止めること。「感情の―がつかない」
敵の攻撃・侵入を防ぎ味方を支えること。防備。また、その役目。「東方の―は万全だ」「―のピッチャー
配下にかってな行動をとらせないこと。「関八州の―としての北条氏」
軍隊または行列の最後にあってその散乱を整えること。また、その人。しんがり。
弁慶は―の役」〈浄・冷泉節〉
念を押すこと。だめ押し。
「義朝の―のことば」〈浄・鎌田兵衛〉
酒を差されたとき、その杯を押し返して重ねて飲ませること。
「―の杯」〈浄・女腹切
押さえ物」の略。
「―の島台」〈浄・国性爺後日〉
囲碁で、相手の石に近接して打ち、その進出を阻止すること。
10 和船を櫓で漕ぐとき、船首を右にむけること。⇔ひかえ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「押え」の意味・読み・例文・類語

おさえおさへ【押・抑】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「おさえる(押)」の連用形の名詞化 )
  2. 物が動かないようにささえたり、力を加えたりするもの。おもしや脇息(きょうそく)などをいうこともある。
    1. [初出の実例]「コレきた八、そこにある石臼をおいらが両はうの肩の所へ、おさへにおいてもらひてへ」(出典:滑稽本・続膝栗毛(1810‐22)一一)
  3. 敵が侵入するのを防ぐために、国境などを守ること。また、その軍勢
    1. [初出の実例]「しらぬひ 筑紫の国は 仇(あた)まもる 於佐倍(オサヘ)の城(き)そと」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三三一)
  4. 隊や行列のうしろにいて、備えや列の乱れを防ぎ整えるもの。しんがり。あとおさえ。おさえ番。特に、江戸時代では、中間(ちゅうげん)、小者などを支配して行列を整える役目の足軽をいう。
    1. [初出の実例]「流石多勢にて打通候間、可出様も無之候間、押をも不置打通候」(出典:伊達日記(1600頃か)上)
  5. 土地などを実力で差押えること。
    1. [初出の実例]「御押之奉書可遣之次第、或喧嘩闘諍、或刈取立毛、壊取屋内、持取雑物類、火急之子細、急度被日限、御押可之」(出典:六角氏式目(1567)二六条)
  6. 念を押すこと。
    1. [初出の実例]「さすがの清盛、悪源太のいかりを含む面魂、義朝のをさへの詞、後日いかがと思ひてや返す詞はなかりけり」(出典:浄瑠璃・鎌田兵衛名所盃(1711頃)上)
  7. おさえもの(押物)」の略。
    1. [初出の実例]「爰(ここ)に納る三三九度、おさへの島台・大さかづき、それより乱酒・うたひ物」(出典:浄瑠璃・国性爺後日合戦(1717)嫁入式三献)
  8. 要求、不平などを制して自分の思い通りに人を支配すること。全体を統率すること。また、その力。→おさえがきく
    1. [初出の実例]「自分の亭主の妾狂ひや、芸妓買の押へさへ出来ないんですものネ」(出典:良人の自白(1904‐06)〈木下尚江〉前)
  9. 感情が表に現われようとするのを抑制すること。
  10. 相手のさそうとする杯を押し返してもう一度飲ませること。また、その杯の酒。
    1. [初出の実例]「酒宴の間(ま)をも合せつつ、あひのおさへの又あひも、つぎめかはりにさはりなく」(出典:浄瑠璃・傾城八花形(1703)好色八徳)
  11. 和船を櫓(ろ)で漕ぐとき、櫓を手で前におしだす動作。また、その状態。強くすると舟は右に方向がかわる。⇔ひかえ
  12. 囲碁で、相手がハネ、またはノビを打った時、それ以上の進出を阻止するため、その石の隣の地点に打つこと。

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