半音階的音階ともいう。古代ギリシア語の〈彩色されたchrōmatikos〉を語源とし,全音階ないし全音階的音階diatonic scaleと対をなす。12の半音程から成るオクターブ音階で表されるが,これは相互に等価な半音の連鎖ではなく,全音階を半音で充塡したものと解釈される。したがって各音は全音階に準じて主音,属音,下属音などの種々の機能をもつ。半音階的音程という場合,これは本来は全音階にない音程,すなわち半音階的半音(ハ-嬰ハなど),各種の増減音程を指す。これらを通して遠隔調への転調は容易となる。半音階の歴史は古く,すでに古代ギリシアでは3種のテトラコルドの一つとして存在した。中世のヘクサコルドの体系では,臨時記号の前身ともいうべきムジカ・フィクタによってその用法が徐々に拡大され,ルネサンス,バロックでは歌詞内容の大胆な表出と結びついて,いわゆる半音階主義chromaticismを生み出した。とくに極端な例は,ルネサンス後期16世紀後半のイタリアのマドリガーレ(マドリガル)にみられる。バロックでは,情緒論(アフェクテンレーレ)や音楽の修辞学的解釈(フィグーレンレーレ)を背景として,音画(おんが)的あるいは象徴的な手法として用いられた。18世紀には,平均律理論の成立に伴って,理論的にはあらゆる調への転調が考えられるようになるに及んで,和声進行の可能性が飛躍的に増大した。半音階主義は19世紀に入ってリストやワーグナーにおいて頂点に達する。ことにワーグナーの,解決されないまま次々と転調していく〈トリスタン和声〉は有名である。しかし,極端な半音階主義は調性組織に基づく機能和声の危機を招来し,20世紀初頭の無調音楽へと行き着いた。そこに新しい秩序を生み出すべく考案された十二音技法では,オクターブ内のすべての12音に等価の意義が与えられたが,ここにいたって,全音階と半音階の区別そのものが意味を失うことになった。
→音階
執筆者:土田 英三郎
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… これらの主として全音からなる長と短の7音音階は全音階と呼ばれるが,18~19世紀以後の音楽にはこの全音階の色づけとして半音が多く用いられるようになった。そして1オクターブを12の半音に分けた音階も考えられるようになり,これを半音階(図5)と呼ぶのである。全音階を基礎としてこれに本来音階外のものであった半音が付け加えられて成立したと考えられる半音階は,やはり1個の主音をもち,調性に関係づけられる。…
※「半音階」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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