実録本、講談、歌舞伎(かぶき)脚本などの登場人物。1728年(享保13)8代将軍吉宗(よしむね)の治世に、天一坊改行という山伏が吉宗の落胤(らくいん)と自称して浪人を集めていたが、捕らえられて獄門に処せられた事件を、大岡越前守(えちぜんのかみ)の名裁判を集めた『大岡政談』に結び付けたもの。江戸末期に初代神田伯山(かんだはくざん)の講談『大岡政談天一坊』で評判になった。歌舞伎にも取り入れられたが、とくに河竹黙阿弥(もくあみ)が1875年(明治8)1月の東京・新富(しんとみ)座に書き下ろし、5世尾上(おのえ)菊五郎の天一坊、5世坂東(ばんどう)彦三郎の大岡越前守、初世市川左団次の山内伊賀亮(やまのうちいがのすけ)らによって初演された『扇音々(おうぎびょうし)大岡政談』は、講談に則して脚色したもので好評を博し、今日でもときどき上演されている。
[松井俊諭]
『辻達也編『大岡政談Ⅰ』(平凡社・東洋文庫)』
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(橋本勝三郎)
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…河竹黙阿弥作。1875年(明治8)1月28日から東京新富座で,大岡越前守を5世坂東彦三郎,天一坊を5世尾上菊五郎,山内伊賀亮を初世市川左団次によって初演。享保年間(1716‐36),南品川の山伏常楽院方に寄寓する源氏坊天一という者が,時の将軍8代吉宗の落胤と名乗って,浪人を集め,人々から金を集めた。…
…伯竜三高弟の一人で,独特の読み口を研究し,名人とうたわれ,神田派を一大勢力とした。〈伯山は天一坊で蔵をたて〉といわれたほど,《大岡政談》の《天一坊》を得意にした。(2)2代(1843‐1921∥天保14‐大正10) 本名玉川金次郎。…
…河竹黙阿弥作。1875年(明治8)1月28日から東京新富座で,大岡越前守を5世坂東彦三郎,天一坊を5世尾上菊五郎,山内伊賀亮を初世市川左団次によって初演。享保年間(1716‐36),南品川の山伏常楽院方に寄寓する源氏坊天一という者が,時の将軍8代吉宗の落胤と名乗って,浪人を集め,人々から金を集めた。…
※「天一坊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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