安野光雅(読み)アンノミツマサ

デジタル大辞泉 「安野光雅」の意味・読み・例文・類語

あんの‐みつまさ【安野光雅】

[1926~2020]画家・装丁家・絵本作家。島根の生まれ。淡い色彩と繊細なタッチで大人の読者を中心に人気を得る。科学文学への造詣ぞうけいも深く多彩な題材を誇り、エッセーなども手がける。代表作は「ふしぎなえ」「旅の絵本」「算私語録さんしごろく」など。平成24年(2012)文化功労者

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「安野光雅」の意味・わかりやすい解説

安野光雅
あんのみつまさ
(1926―2020)

画家・絵本作家。島根県津和野(つわの)町に生まれる。山口師範学校卒業。小学校教師を経て、1960年(昭和35)イラストレーターとなる。エッシャーの絵にひかれ、たくさんの小人を登場させた「だまし絵」手法の絵本『ふしぎなえ』(1968)で注目を集める。『ABCの本――へそまがりのアルファベット』(1974)で芸術選奨文部大臣新人賞を、『あいうえおの本』(1976)でチェコスロバキア(当時)のブラチスラバ国際絵本原画展(BIB)金のリンゴ賞を受賞する。また、『はじめてであうすうがくの本』(1972)、『美しい数学――集合』(1974)など数の世界にかかわるユニークな絵本を描く。『画集 野の花と小人たち』(1976。小学館絵画賞)、『歌の絵本』(1977)など繊細なタッチで描く抒情(じょじょう)性豊かな絵本も手がけ、その後も絵本にとどまらず風景画、装画、装丁、エッセイなど幅広い分野で活躍する。国際アンデルセン賞画家賞をはじめとしてブルックリン美術館賞、ボストングローブ・ホーンブック賞、ケイト・グリーナウェイ賞、ボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞などを受賞し、国際的にも高く評価されている。エッセイ集『空想工房』(1979)をはじめとして『安野光雅・文集』6冊(1995)、311編の珍問奇問集『散語拾語(さんごじゅうご)』(1996)、『故郷(ふるさと)へ帰る道』(2000)など多数の著書がある。故郷の津和野に「安野光雅美術館」が完成、2002年(平成14)3月に開館された。1988年紫綬褒章(しじゅほうしょう)受章。

西本鶏介

『『ふしぎなえ』(1968・福音館書店)』『安野光雅著『さかさま』(1969・福音館書店)』『『はじめてであうすうがくの本』第1~10(1972~1974・福音館書店)』『『ABCの本――へそまがりのアルファベット』(1974・福音館書店)』『『あいうえおの本』(1976・福音館書店)』『『画集 野の花と小人たち』(1976・岩崎書店)』『『安野光雅の画集――Anno 1968-1977』(1977・講談社)』『安野光雅著『旅の絵本』1~4(1977~1983・福音館書店)』『安野光雅著『天動説の絵本』(1979・福音館書店)』『『空想工房』(1979・平凡社)』『安野光雅著『津和野』(1980・岩崎書店)』『安野光雅著『空想画房』(1984・平凡社)』『安野光雅著『空想茶房 対談』(1986・平凡社)』『安野光雅著『空想書房』(1991・平凡社)』『『安野光雅・文集』全6冊(1995・筑摩書房)』『『散語拾語』(1996・朝日新聞社)』『『故郷へ帰る道』(2000・岩波書店)』『安野光雅著『歌の風景』(2001・講談社)』『安野光雅著『職人たちの春』(2002・講談社)』『安野光雅著『昔の子どもたち』(2002・日本放送出版協会)』『安野光雅著『村の広場』(2002・朝日新聞社)』『安野光雅著『繪本即興詩人』(2002・講談社)』『安野光雅著『エブリシング』(文春文庫)』『安野光雅著『黄金街道』(講談社文庫)』『ストーン・ブレーン著、安野光雅絵・文『美しい数学――集合』(1974・ダイヤモンド社)』『芥川也寸志編、安野光雅絵『歌の絵本――日本の唱歌より』(1977・講談社)』『井上ひさし・安野光雅・河合隼雄著、子安美知子編訳『三つの鏡――ミヒャエル・エンデとの対話』(1989・朝日新聞社)』『安野光雅・河合隼雄著『生きることはすごいこと』(1998・講談社)』『安野光雅・高橋源一郎・高山文彦著『サヨナラだけが人生だ』(2002・恒文社)』『佐藤忠良・安野光雅著『願いは「普通」』(2002・文化出版局)』『安野光雅・河合隼雄著『人が、ついとらわれる心の錯覚』(講談社+α文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「安野光雅」の意味・わかりやすい解説

安野光雅
あんのみつまさ

[生]1926.3.20. 島根,津和野
[没]2020.12.24. 東京
画家,装丁家,絵本作家。独創的なコンセプトと淡い色彩,繊細な筆づかいの絵本で,児童文学のノーベル賞ともいわれる国際アンデルセン賞を受賞するなど,海外でも高い評価を受けた。島根県津和野町の旅館を営む家に生まれる。1940年山口県立宇部工業学校に入学。1945年,応召で香川県に移り,復員後,山口県徳山市で小学校の代用教員を務める。1949年に上京し,約 10年間小学校教諭を務めながら本の装丁やイラストの仕事を手がけた。35歳で装丁家,絵本作家として自立し,1968年に M.C.エッシャーの視覚的なだまし絵の影響を強く受けた最初の絵本『ふしぎなえ』を発表。1977年『あいうえおの本』(1976)でチェコスロバキアのブラチスラバ国際絵本原画展 BIB「金のりんご」賞,翌 1978年『安野光雅の画集』(1977)でイタリアのボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞を受賞,1984年には全業績に対して国際児童図書評議会から国際アンデルセン賞画家賞が授与された。代表作としてだまし絵風の『ABCの本』(1974),『さかさま』(1981),あたたかみのある風景画が描かれた「旅の絵本」シリーズがあるほか,『天動説の絵本』(1979),『はじめてであう すうがくのえほん』(1982。全3巻),『繪本 平家物語』(1996),『繪本 三國志』(2008)では科学や数学,古典文学への造詣の深さを示した。エッセーも数多く執筆し,2010年には森鴎外による文語翻訳文を口語に訳した『口語訳 即興詩人』(原作ハンス・クリスチャン・アンデルセン)を著した。1988年紫綬褒章,1997年勲四等旭日小綬章受章。2008年菊池寛賞受賞。2012年文化功労者選定。2001年に故郷の津和野町に安野光雅美術館が開館。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「安野光雅」の解説

安野光雅 あんの-みつまさ

1926- 昭和後期-平成時代の絵本作家。
大正15年3月20日生まれ。エッシャーの絵の影響をうけた昭和43年の絵本「ふしぎなえ」で注目される。50年「ABCの本」で芸術選奨新人賞,ケイト-グリーナウェー賞特別賞,52年「あいうえおの本」でブラチスラバ世界絵本原画展金のリンゴ賞,59年国際アンデルセン賞画家賞。エッセイ,装丁の分野でも活躍。平成20年菊池寛賞。24年文化功労者。島根県出身。山口師範卒。著作に「旅の絵本」「算私語録」など。

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367日誕生日大事典 「安野光雅」の解説

安野 光雅 (あんの みつまさ)

生年月日:1926年3月20日
昭和時代;平成時代の洋画家;絵本作家

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世界大百科事典(旧版)内の安野光雅の言及

【絵本】より

…これによる底辺からの絵本に対する意識の掘起しは,のちの絵本ブームの基盤をなすものといえよう。そのなかで福音館書店の月刊物語絵本《こどものとも》は,日本の創作絵本の発展に大きな役割を果たし,それを舞台に赤羽末吉,瀬川康男,梶山俊夫,田島征三,中谷千代子,長新太,加古里子,安野光雅たちが登場した。赤羽は1980年に日本人として初めて,続いて84年に安野が国際アンデルセン賞画家賞を受賞,世界的に日本の絵本の評価を決定することになる。…

※「安野光雅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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