日本大百科全書(ニッポニカ) 「就業構造」の意味・わかりやすい解説
就業構造
しゅうぎょうこうぞう
structure of employment
就業者の存在形態をいう。人口から14歳以下人口を差し引いたものが生産年齢人口であり、それからさらに非労働力人口すなわち家事従事者や通学者などを除くと労働力人口となり、労働力人口は失業者と就業者に分かれる。就業者は経済活動人口economically active populationともよばれ、収入を目的とした仕事をしている人であるが、その内容は、さまざまな角度からの就業構造としてとらえられる。
たとえば、産業別就業構造(これも第一次・第二次・第三次産業別、農林・非農林別、産業中分類別など種類が多い)、従業上の地位別就業構造(自営業主・家族従業者・雇用者別)、職業分類別就業構造、年齢別就業構造、地域別就業構造、企業規模別就業構造、本業・副業別就業構造(専業農家・第1種兼業農家・第2種兼業農家別のごとき)、就業時間別就業構造などがあり、さらにまたこれらの分類を組み合わせたものも多い。
就業構造に関する統計調査の主要なものとして、日本においては、全数調査である国勢調査(初回1920年、5年ごと)、就業状態とその規制要因を追究する就業構造基本調査(初回1956年、5年ごと)、月々の変化をとらえる労働力調査(1950年以降)などがあり、そのほか事業所・企業統計調査、毎月勤労統計調査、労働異動調査その他の諸統計も利用される。就業構造の把握は、国の諸施策の重要な基本資料である。外国の就業構造については、各国資料のほか、国際労働機関(ILO)や経済協力開発機構(OECD)の資料が便利である。
わが国の産業別就業構造の推移とその国際比較をすると、就業人口の相対的比重が第一次産業から第二次産業へ、さらに第二次産業から第三次産業へ移動するというペティの法則の指摘する傾向が、わが国の場合でも明白である。1955年(昭和30)以降、農林水産業、商業などに多い「自営業主」と、自営業主の家族で家業に従事する者すなわち「家族従業者」の比重が急速に低下し、雇用されている者すなわち「雇用者」はその比重も絶対量も急増している。急速な経済成長に伴う就業構造の近代化である。雇用者の構成比82%(1997)はイタリアに類似し、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカはさらに高率である。
[佐藤豊三郎]