厚生労働省が賃金や労働時間、雇用動向の変化を把握するため、毎月公表している調査。都道府県を通じて、1人当たりの基本給や残業代、出勤日数、労働時間を調べる。物価変動の影響を考慮した実質賃金も算出する。国の重要な「基幹統計」の一つで、調査結果は景気動向の指標などに幅広く活用されている。
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民間や官公営事業所の賃金、労働時間、雇用状況の変化を把握する目的で政府が実施する調査。統計法に基づき、国の重要な統計調査である基幹統計として、厚生労働省が実施・公表している。略して「毎勤(まいきん)」とよばれることもある。1923年(大正12)に始まった職工賃銀毎月調査・鉱夫賃銀毎月調査を前身とし、1944年(昭和19)に現在の名称となった。常時5人以上の労働者を雇用している約190万の事業所のなかから、無作為に約3万3000事業所を抽出して実施。常時労働者5人以上の事業所を対象に毎月実施する「全国調査」や都道府県別の「地方調査」のほか、常用労働者1~4人の事業所を対象に年1回(毎年7月分)実施する「特別調査」がある。業種別の労働者数、現金給与額(基本給、残業代、賞与、通勤手当など)、労働時間数(所定内、所定外)のほか、各月の賃金指数を各月の消費者物価指数で割った実質賃金指数などを公表している。長く正規雇用者を調査対象としてきたが、バブル経済崩壊後の非正規雇用の拡大に応じて、1993年(平成5)からはパートタイム労働者の調査項目を設けた。
政府の「月例経済報告」での景気判断や地方自治体の政策決定の際の指針となるほか、国民所得や都道府県民所得の算定、日本の労働事業の海外への紹介などに使われる。また雇用保険や労災保険の給付額の改定、公共料金の改定、人事院勧告、民間企業の給与改定、幅広い業種の人件費の算定、交通事故の補償額算出などをする際の資料としても活用されている。なお統計法に基づいて、調査の報告を拒み、または虚偽の報告をした者には50万円以下の罰金が科される場合がある。
[矢野 武 2016年5月19日]
(2019-1-17)
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…雇用水準の変化を示す数量指数(数量の変動を示す指数)で,基準時における雇用者数に対する比較時の雇用者数の比率を指数化したもの。日本で現在公表されている雇用指数は,労働省が毎月勤労統計調査による毎月末の常用雇用労働者数を基礎として算定しているものである。産業別指数およびその合計,業種別の指数が1952年以降,月別に公表されている。…
…しかし,労働者構成によほどの変化がないかぎり,通常の平均賃金の比較と労働者構成を固定した平均賃金の比較との間に大きな差は生じないので,一般的には通常の平均賃金をもって賃金水準の指標とみている。 日本では労働省による〈毎月勤労統計調査〉が代表的な賃金統計である。この全国調査は甲調査(常用労働者30人以上を使用する事業所を調査対象とする)と乙調査(同5~29人を使用する事業所を調査対象とする)とに分かれるが,甲と乙を合わせて1982年12月時点の調査で3094万の常用労働者をカバーしており,これは全常用労働者の83%に当たる。…
…経済統計の一種で,労働者の平均賃金の月々の動きを示す賃金水準統計(毎月勤労統計調査),個々の労働者について性,学歴,年齢,勤続年数などの属性別賃金の水準を産業,企業規模,地域別に示した賃金構造統計(賃金構造基本統計調査など),企業の賃金体系や諸手当の採用状況,賃金構成などを明らかにした賃金制度統計(賃金労働時間制度総合調査など),ベースアップ,賞与,退職金の支給実態などを明らかにした特殊賃金統計からなり,主として労働省が調査を実施している。 毎月勤労統計調査は職工賃金毎月調査(1923年7月,内務省社会局)に始まり,その後数度の名称変更と実施機関の変更があった後,1951年4月から労働省が現行名で実施するようになった。…
…そのなかには労働争議などの労使関係の統計のほか,その企業または事業所に働く労働者の全部または一部の労働者を対象とした統計,すなわち,常用労働者数,賃金,入・離職状況,雇用保険,労働災害などの統計が含まれる。 現在日本で作成されている労働統計のうち,総務庁で実施しているものとしては労働力調査,就業構造基本調査,国勢調査,家計調査,労働力調査特別調査などがあり,労働省で実施しているものとしては毎月勤労統計調査,賃金構造基本統計調査,雇用動向調査,職業安定業務統計,雇用保険業務統計,労働争議統計調査,労働災害動向調査,労使関係総合調査,産業労働事情調査などがある。そのうちの代表的なものについて解説すると次のとおりである。…
※「毎月勤労統計調査」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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