模式標本(読み)モシキヒョウホン(その他表記)type

翻訳|type

日本大百科全書(ニッポニカ) 「模式標本」の意味・わかりやすい解説

模式標本
もしきひょうほん
type
type-specimen

生物の種、亜種、型などに学名を与えたときに、その基礎になった標本をいう。新たに種などに命名し記載(記述)する際には、通常複数の模式標本を指定するが、そのなかでもっとも基準となる一標本を完模式標本holotypeほか副模式標本paratypeとし、それらを区別しないときにはおのおのを総模式標本syntypeとよぶ。また、完模式標本と性を異にする一標本を別模式標本allotypeとして指定することもあるが、雌雄色彩形態などを異にするときには有効であろう。完模式標本が指定されなかった場合に、総模式標本のなかからのちに一標本を選んで基準とすることがあるが、これは後模式標本lectotypeで、ほかのものは後副模式標本paralectotypeとなる。また、命名されたときに指定された模式標本が種々の事情ですべて失われたと認められた場合には、形態や産地など諸条件を考慮して適当な標本を新模式標本neotypeに選ぶことができる。なお、新しい動物命名規約では、命名に際して基になった全標本を模式標本群type series、基準となる完模式、後模式、新模式および総模式の各標本を冠名模式標本name-bearing typeとよんでいる。ほかに完模式標本と同産地の副模式標本を同地副模式標本paratopotypeとよぶことがあり、以前は総模式標本と同じ意味でcotypeが使われていた。植物の場合は模式標本に別の訳語があてられている。

[中根猛彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「模式標本」の意味・わかりやすい解説

模式標本
もしきひょうほん
type specimen

基準標本ともいう。分類学上,種や亜種の学名を命名する際にタイプと決められた標本のことで,個体分類を行ううえで最も重要な標本であり,他の標本を正確に同定する際にも不可欠のものである。次のようなものがある。 (1) ホロタイプ holotype 真の基準になる標本で,命名者がそれに基づいて命名,記載した唯一のもの。 (2) パラタイプ paratype ホロタイプと一緒に用いて命名,記載した標本で,ホロタイプに含まれる重複標本ではない。 (3) シンタイプ syntype 発表者が何個もの標本を用いて記載した場合,それらの標本全体をさす。 (4) ネオタイプ neotype 最初に命名,記載したときに用いた標本が失われて,研究者が適正標本を補充した場合をさす。 (5) アイソタイプ isotype ホロタイプの重複標本。 (6) レクトタイプ lecttype シンタイプから,のちの研究者が1つを特に選んだ場合であり,ホロタイプと同様にみなされる。 (7) トポタイプ topotype ホロタイプと同一産地からあとになって採集した標本。 (8) クラストタイプ clastotype ホロタイプの一部を分けたもの。 (9) メロタイプ merotype ある個体から一部を取ってホロタイプを作成したとき,残りの部分を栄養増殖させて得た標本。 (10) コタイプ cotype 命名,記載をするにあたって用いた多くの標本のうち,ホロタイプとしたもの以外のすべてをこのようにいう。

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最新 地学事典 「模式標本」の解説

もしきひょうほん
模式標本

type specimen

種グループにおけるタクソンの模式である標本。次の種類がある。(A)模式系列の模式,1.完模式(holotype:原模式とも,条73a, b),2.総模式(術語にはsyntypeを用い,cotypeは用いない:完模式をもたないその模式系列のすべての標本,条73c),3.副模式(paratype:完模式を除いた模式系列の他の標本,勧告73D),4.後模式(lectotype:後の著者が総模式のなかから指定した1個の標本,条74),(B)模式系列外の模式,5.新模式(neotype:完模式・後模式・総模式が紛失または破壊によって失われたとき,条75a-dによる限定と条件のもとで指定された他の標本)。その他,国際動物命名規約には採用されていないが,原地模式(topotype:模式産地から採集された完模式・後模式・総模式以外のすべての標本)がある。これらの模式標本は安全に保管するよう要求される。

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