火田民(読み)カデンミン

デジタル大辞泉 「火田民」の意味・読み・例文・類語

かでん‐みん〔クワデン‐〕【火田民】

火田を耕作する農民

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精選版 日本国語大辞典 「火田民」の意味・読み・例文・類語

かでん‐みん クヮデン‥【火田民】

〘名〙 火田を耕作する原始的な農民。〔国民百科新語辞典(1934)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「火田民」の意味・わかりやすい解説

火田民 (かでんみん)

朝鮮の焼畑耕作を行う農民。山間の傾斜地の草木に火を放ちその跡にアワジャガイモ,大豆,ソバトウモロコシなどを栽培する。施肥をしないので3~5年で地力が消耗すると他に移り,10年前後放置したのち再び耕作する。火田の記録は新羅時代にさかのぼるとされるが,李朝時代に流亡民が役・税を免れて火田民となる傾向が強まった。李朝政府は何度も火田禁止,税の賦課を命じたが,火田民は減少しなかった。日本の植民地期に火田民はさらに増大したが,それは李朝時代の単なる延長ではなく,植民地支配の構造的矛盾所産だった。朝鮮土地調査事業朝鮮産米増殖計画などにより土地を失った農民は,工業の未発達のため職を得ることができず農村に滞留したが,北部朝鮮の農民は山林に入って火田耕作に生計の道を見いだすことになった。1926年に3万4000戸だった純火田民は33年には8万2000戸にもなり,普通の田畑をも耕作する兼火田民を含めると28年に24万戸,122万人にも達した。火田は北部朝鮮の平安南北道,咸鏡南道,江原道で盛んだった。総督府は森林令にもとづいて火田を禁止,制限し,火田民を放火犯として逮捕したり強制移住させたりした。29年に警察が火田民部落を焼き払った甲山火田民事件は,新幹会などによって取り上げられ大きな社会問題になった。解放後,朝鮮民主主義人民共和国では50年代初めに火田は消滅したとされる。江原道の韓国側山間部では70年代にも火田耕作が行われていたが,牧草地への転換などにより70年代末に消滅した。
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百科事典マイペディア 「火田民」の意味・わかりやすい解説

火田民【かでんみん】

朝鮮北部山岳地帯で焼畑耕作を営む農民。自給作物(アワ,ジャガイモ,ダイズ,ソバ,トウモロコシ等)を栽培し,3〜5年で地力が衰えると適地を求めて流浪する。山林の荒廃火災水害を招くため古来幾度も禁令が出たが,日本の朝鮮支配期には土地を失った農民が北部朝鮮では火田民となり逆に急増した。朝鮮民主主義人民共和国成立後,同地域に国営牧畜業を導入して火田民の解消を図り,1970年代末に消滅した。
→関連項目蓋馬高原

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