脱穀(読み)ダッコク(英語表記)thresh

翻訳|thresh

デジタル大辞泉 「脱穀」の意味・読み・例文・類語

だっ‐こく【脱穀】

[名](スル)稲・麦などの穀粒を穂から取り離すこと。「庭先脱穀する」 秋》

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精選版 日本国語大辞典 「脱穀」の意味・読み・例文・類語

だっ‐こく【脱穀】

〘名〙 穀粒を穂からとり離すこと。また、穀粒からもみがらをとり去ること。もみすり。《季・秋》
※ものいわぬ農民(1958)〈大牟羅良〉行商四ヵ年「前の畑で草とりしていたり、稗の脱穀をしていたりしました」

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改訂新版 世界大百科事典 「脱穀」の意味・わかりやすい解説

脱穀 (だっこく)
thresh

収穫目的物である成熟した穀粒の種実を,茎などから分離する操作。稲扱(こ)き,麦扱きなどという。抜き取りあるいは刈り取った作物体を適度に乾燥させ,物に打ちつける,棒でたたく,人や家畜の足やローラーで踏むなどの方法が古くからとられており,現在でも少量の脱穀や発展途上国では,これらの方法が一般的である。日本では,古代の稲作では穂刈りが行われ,そのまま貯蔵して食べる前に臼と立杵を用いて脱穀ともみすり(もみがらを除去すること)を同時に行っていた。その後,根刈りとなり脱穀法も変わってきたが,その詳細は不明である。江戸時代には竹製の扱箸(こきはし),稲管が道具として用いられていた。扱箸は,30~45cmの2本の竹棒の一端を結び合わせて地面に立て,2本の間に穂首を挟んで引いて脱穀するもので,稲管は6cmくらいの細い竹管2本を同様に結び,手に持って穂を扱き落とすものである。元禄・享保期には千歯扱きが出現した。当初は竹製のちに鉄製の扁平な長い歯を並べ,この間に穂を通して引いて脱穀するもので,作業能率は飛躍的に高まり,明治・大正期まで使われた。大正年間には,回転する円筒の側面に針金の歯を植えた人力式回転脱穀機が生まれ,やがて動力式となるとともに選別機構,イネの自動送込機構をもつ自動脱穀機に改良されていった。昭和40年代には,バインダー(刈取結束機)の刈取部と自動脱穀機の脱穀機構を組み合わせた自脱コンバインが開発され,約10年間で全水田の半分以上で用いられるようになった。かつての収穫作業体系では,刈取りと脱穀の両作業の間に圃場(ほじよう)での乾燥が行われていたが,コンバインでは刈取りと同時に脱穀を行うため圃場乾燥ができないので,脱穀後の穀物乾燥機の使用が不可欠のものとなる。

 ヨーロッパでは,ローマ時代・中世には踏みつけや棒打ちで麦類の脱穀が行われた。脱穀機の開発は18世紀末に始まり,19世紀中ごろには走行型蒸気機関を動力源として広がった。アメリカではこのころ刈取り・脱穀を同時に行う畜力用コンバインの開発が始まった。回転脱穀機は日本型(自脱型)と欧米型(投込み型)とでは異なっている。欧米型は穀粒のついたわらを脱穀胴へ投げ入れて,瞬間的な衝撃で穀粒を落として排出するが,日本型はわらを押さえて穂先だけを比較的長時間たたかせて脱穀する。この違いは,日本のイネが成熟後ももみが脱落しにくい特性をもっていることによる。
執筆者:

自動脱穀機は,扱き胴を主要部とする脱穀部,唐箕(とうみ)と吸引ファンよりなる選別部およびスクリューコンベヤによって穀粒を送る穀粒搬送部よりなっている。刈取り後,天日乾燥した穀稈束(こくかんそく)は扱き胴軸と平行して動くフィードチェーンに挟まれたまま扱ぎ室を通る。その間に,穀稈の穂部は扱ぎ室内の扱き胴と受網との間に送り込まれ,回転する扱き胴の周面に配列された硬鋼線材のV字状扱ぎ歯によって,穀粒が打ち落とされたり扱き落とされたりして脱穀が進む。扱き胴の直径は40cmくらいで回転数は毎分500回転である。扱ぎ歯先端の周速は秒速約15mである。脱穀された穀粒は,線径2mmの鋼線を10mmくらいのピッチで編んだクリンプ網を使った受網の網目から選別室に落下する。受網から穀粒とともに漏下したわらくずなどは唐箕の風力により分離され,一番口には穀粒のみが集められる。扱ぎ室から排出されるわらくずなどは吸引風選され,わらくず中に残った穂切粒は二番口へ分離され,わらくずは機外へ吹き出される。一番口に選別された精粒はスクリューコンベヤなどの穀粒搬送装置で機外へ送り出されるが,二番口に回収された穂切粒は二番口還元スロワー(羽根車)ではね上げられ,再び扱ぎ室に送り返され再処理される。
執筆者:


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「脱穀」の意味・わかりやすい解説

脱穀
だっこく

刈り取ったり抜き取ったりした茎、枝、穂から穀物の子実をとること。一般に穀物や豆類は子実が完熟すると鎌(かま)などで刈り取り、これを乾燥させてから脱穀する方法が昔から行われてきた。原始的な方法は足で踏んだり棒でたたいたりしたが、やがて家畜に踏ませたり脱穀のための道具を使うようになった。

 イネについてみると、日本で稲作が始まった弥生(やよい)時代からしばらくの間は穂だけを刈り取って貯蔵しておき、食べるときに臼(うす)と杵(きね)で搗(つ)いて脱穀し、同時にもみ殻も除き精白まで行った。この方法はいまでも東南アジアではみることができる。日本では平安時代から、株元から刈り取って乾かし、それから脱穀して貯蔵する方法にかわった。用具としては扱箸(こきはし)が用いられた。江戸時代になると千歯扱(せんばこき)が使われるようになった。明治時代に入って足踏み式回転脱穀機が発明された。大正時代末期には石油発動機を用いて動力回転脱穀機へと進歩し、これは扱き胴の下に唐箕(とうみ)もついて、脱穀されたもみは続いて風選され、調製まで行われた。現在ではさらに自動送込み式回転脱穀機となり、毎時1トン前後の脱穀ができるようになった。またコンバインによる収穫も増えてきたが、これは刈り取りと同時に回転脱穀機で脱穀するもので、従来の方式よりさらに能率が高い。

 ムギ類の脱穀もイネと似た歴史をたどって発達し、現在ではコンバインが主体である。トウモロコシ用のコンバインは穂の収穫機と脱粒機を兼備したもので、立毛状態の茎から穂を取り外し、苞(ほう)を剥(は)いで、粒を穂の芯(しん)から外す特殊な装置がくふうされている。豆類、ナタネなども旧式な方法では木槌(きづち)や連枷(れんが)や扱き台などが用いられたが、いまは回転脱穀機や専用のコンバインが用いられるようになった。

[星川清親]


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百科事典マイペディア 「脱穀」の意味・わかりやすい解説

脱穀【だっこく】

穀物を収穫したのち種実を脱粒すること。古くは穀打台に打ちつけて脱粒していたが,その後千歯扱(せんばこ)きとなり,さらに足踏脱穀機を経て動力脱穀機が一般化した。現在ではコンバインが普及している。穀打台,千歯扱き,足踏脱穀機は脱粒するだけであるため,ふるい(篩)や唐箕(とうみ)を用いて選別する必要があった。→脱穀機

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世界大百科事典(旧版)内の脱穀の言及

【農具】より

…播種(はしゆ)はくわでつくった条溝(すじみぞ)に手で条(すじ)まきする方法で行われ,特別な用具は存在しない。刈取りの農具は半月鎌で,脱穀から粒食の場合には精白,また粉食の場合は製粉までも木製の長い竪杵とくびれ臼を用いて一挙に行う場合が多い。また製粉には円棒状の上石を鞍(くら)状の下石にすりつけて粉にするサドル・カーンsaddle quernも広く用いられている。…

※「脱穀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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