唐箕(読み)とうみ

精選版 日本国語大辞典 「唐箕」の意味・読み・例文・類語

とう‐み タウ‥【唐箕】

〘名〙 穀物の実と、粃(しいな)・殻(から)・塵などを選別する農具。箱の内部装置してある風車様のもので風を起こし、上から落とす穀粒を粃・殻などと実とに吹き分けるもの。とうみの。〔和漢三才図会(1712)〕

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デジタル大辞泉 「唐箕」の意味・読み・例文・類語

とう‐み〔タウ‐〕【唐×箕】

穀粒を選別する装置。箱形の胴につけた羽根車で風を起こし、その力を利用してしいな籾殻もみがら・ごみなどを吹き飛ばして、穀粒を下に残す。

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改訂新版 世界大百科事典 「唐箕」の意味・わかりやすい解説

唐箕 (とうみ)

もみすりをしたあと,玄米といっしょになって混ざっているもみがらや,わらくずを選別するのに用いる農具。大きさは幅2m,高さ1mあまり,奥行き50cmくらいの,木の板でかこんだ四角の胴のなかに収められた手回しの送風機で風を起こし,胴の上部供給口から入れられた玄米に混ざっているもみがらやわらくずを風で吹き飛ばす。中国で発明され完成されたものが,江戸時代の中期に日本へ伝えられた。それまでは,箕に少量ずつとって,ほうり上げるように揺すりながら,自然風にあてて選別をしていた。自然風のないときは,別の1人がむしろを打ち合わせるようにして風を起こすというくふうも見られた。唐箕は一定の風速により,しかも半連続的な供給ができるので,選別精度・能率ともにそれまでの箕を用いる方法より数等まさる。穀粒は湿るのを嫌うため,鉱物のように水に浮かす選別法を用いることができないので,もっぱら風選が用いられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「唐箕」の意味・わかりやすい解説

唐箕
とうみ

各種の穀類風力を利用して選別する農機具で、元禄(げんろく)時代(1688~1704)に中国から伝わったといわれる。おもな作用部は、材料供給用の漏斗(ろうと)、羽根車(翼車(よくしゃ))を収めた起風胴および選別風胴からなっており、漏斗から選別風胴に落とされた材料は、羽根車(人力またはモーターで駆動する)からの横風を受けて、いちばん手前に精粒、遠方に夾雑物(きょうざつぶつ)、その中間にくず粒が落下する。従来は、米やムギ、豆類などの選別のために広く利用されていたが、穀粒を対象とする最近の農業機械(脱穀機コンバイン籾摺(もみす)り機など)は、唐箕を選別部に組み込んでいるため、単体としての唐箕の利用は少なくなった。

[入江道男]

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百科事典マイペディア 「唐箕」の意味・わかりやすい解説

唐箕【とうみ】

穀粒(こくりゅう)に混じっている異物を除去する農具。脱粒や脱穀をしたものに風を送り,比重の重い子実と,軽い不完全粒や夾雑(きょうざつ)物を分離する。おもに木製で,材料入れの脇下に起風胴,その先に三つの出口がある。材料入れの口を開くと比重の重いものから順に落ち選別される。
→関連項目脱穀農具もみすり(籾摺)機

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「唐箕」の意味・わかりやすい解説

唐箕
とうみ

稲,麦,豆類,菜種などの穀粒の選別に使う農機具で,中国から伝わったもの。主要部はじょうご,起風胴,選別風胴,選別口から成る。起風胴の中の4枚の翼の回転によって生じる風力で,じょうごから落下する穀粒を流動させ,重い粒 (籾,玄米など) から秕 (しいな) ,砕米,さらに軽いもの (殻,わら屑など) の順に,じょうごの直下 (第1口) ,前方 (第2口) ,吹出口 (第3口) の3口に分離する。現在では脱穀機,籾摺機の機体に組込まれているが,全自動籾摺機の場合は,第1唐箕 (籾,玄米と秕,籾殻を吹分ける) ,第2唐箕 (秕と籾殻を吹分ける) ,仕上げ唐箕 (玄米のなかから籾殻,砕米,屑米を吹分ける) に3分する。

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旺文社日本史事典 三訂版 「唐箕」の解説

唐箕
とうみ

穀物から籾殻 (もみがら) などを風力でえり分ける選別農具
江戸初期からみられ,中期に普及。鼓胴内部に取り付けた4枚の扇板でおこる風により,上部の漏斗形の受入器から落ちてくる穀粒と籾殻などをえり分けた。近代に入っても用いられた。

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世界大百科事典(旧版)内の唐箕の言及

【穀物選別機】より

…選別の方法によっていろいろな種類がある。穀物に付着したごみや土ぼこり,未熟粒,砕粒を風力で除くものは唐箕(とうみ)といい,落下する穀粒に横方向から風をあてると充実した粒は手前に,軽いわらやごみは遠方にとぶ。もみすり機から出る玄米ともみの混合物から玄米を得る選別機を万石といい,多重傾斜金網式や摩擦や比重差を利用する揺動選別機などが用いられる。…

※「唐箕」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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